「それ」(???視点)
その男は魂の奥底にとてつもない能力、いや、化け物を秘めていた。
「それ」には自我があった、その男と混ざり合ってはいるのだが。
「それ」はいつも夢を見ているようだった。
しかし「それ」は寝ているにもかかわらず、「それ」の持つ曖昧な思考ですらその男には多大なる影響を与えていた。
その男はこの世界の全てが無意味に感じるようになった。
その男はこの世界を不自然なまでに客観視するようになった。
その男は自分の現在に、そして未来に期待をしなくなった。
その男は努力する事を忘れていった。
「それ」が目覚めたのは、些細な出来事が原因だった。
男が自殺をしたのだ。
なぜ「それ」が些細な出来事だと考えたのか、と不思議に思うだろう。
だが、「それ」にとっては無価値な世界の中に存在する無価値な2つの存在が消えたと言うだけのことだった。
しかしその直後「それ」にとって、価値たりうる出来事が起きたのだった。
「それ」は極めて合理的な思考しかしてこなかった為(ほとんど夢の中だったのだが)、神や異世界など無価値な世界に価値を持たせたいが故に、無価値な人類が勝手に創作したものだと考えていた。
それ故に「それ」はひどく神に、そして異世界に興味を持った。
そもそも「それ」は男の一部であるので、異世界や神に興味を持つのは必然だったのだろう。
そこで「それ」は自分が表に出て異世界を知ろうとした。
そして「それ」は言った。
「自分を..........制する力を下さい。」
男が「それ」をうまく制御出来るのならば、男は異常な力で男の望みを叶えるだろう。
男が「それ」にうまく制御されるのならば、男は異常な力を持て余すことだろう。
それにしても面白い。
流石私の選んだ転生者だ。
「存分に私を楽しませてもらおう
......である。」