やばい神に目をつけられた。(勘違い?)
1話は重めである。
気にしてはいけないのである。
また、ここ面白くない、ここ間違ってるというのは私のガラスのハートを砕かない程度に指摘して欲しいです。
また、である口調はキャラづくりです。
ピアノを弾ける人って凄いと思う。
自分とは違う世界にいるような「凄さ」だ。
自分は何一つ努力をしてこなかった、と言えば嘘になるかもしれないが人より努力をしてこなかったのは確実である。
前にピアノを習いたいと思って始めてみたものの、面倒臭くてすぐやめたことがあった。
コツコツやることは自分には向いてないと思ったからだ。
典型的な三日坊主の例だ。
しかし自分の場合、それは度を越していた。
中学生の頃は自分は賢いと思っていたし、周りからもそう認識されていた。
勉強なんて最低限の提出物くらいしかしていないのにテストでは上位に位置していた。
受験の時期にも勉強量は増える事なく、周りに抜かされるのを、他人事のように見ていた。
自分だって勉強すれば周りに勝てるんだと。
一つ下げた志望校にはギリギリだったが合格できた。
だが問題はその後だった。
今まで最低限の提出物を出していた事すら自分にとっては奇跡のような事であると気付いた。
周りからの期待の視点が痛かったからしていただけだったと。
周りが自分と同じくらいの学校にいるという事は、周りが自分より下の成績であると安心するという事だ。
高校生になって提出物を出さなくなってからの周りからの視線は失望ではなく軽蔑だった。
自分に期待をする人がいなくなったこの時、自分の努力する能力は消え失せた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ある雨の日、先生にこのままでは進級が厳しいから勉強しろと言われた日の帰り道、僕は決めた。
死のう!
努力するくらいなら死んだほうがマシだって僕は気づいてしまったんだ!
だってこれからの苦労は、絶対楽しいことより多いよね!?
この世に心残りはない!!
今読んでる小説の続きくらいしか......
そんな事を考えているうちに気付いたらもうホームの端まで来ていた。
どこかからピアノの音が聞こえてくる。
ピアノを習っていた頃、毎週の上達が嬉しくて夢中になった事を思い出した。
綺麗な音、
感動する歌詞、
心に響く声、
結局、自分自身で何か大きな事をしてみたかっただけだったんだ。
それもいつの間にか面倒臭くなって、
過ごすというより、面倒ごとを避ける日々。
自分だってこんな事ができるんだ。
こんな事を頑張ってるんだ。
自分も......価値があるんだって信じたかった.....
あぁ、生まれ変わったら今世よりまともになれるかな.....
鳴り響く電車のブレーキ音と、知らぬ間に流れていた涙がこの世界での最後の思い出となった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気付くと変な所にいた。
目の前には目だけ笑っていない少年がいる。
ここが天国.....じゃなくてあの世か。
自分が天国に行く事はないだろう。
「へぇ〜。何不自由ない家庭に、何不自由ない才能を持っているのに自殺かぁ〜。これは地獄案件ですねぇ〜。」
地獄か。
ご飯を食べるのが面倒臭くて酷い飢餓感に襲われて耐えた事があるくらい飢餓には強いが、痛いのと疲れるのは嫌である。
「どうにかならないんですか?誰だか知らないけど。」
知っている。
神様だ。
テンプレである。
いや、閻魔大王って線もあるぞ。
「聞こえてるよ....」
はい来たテンプレ!!
心を読む神、たじろぐ自分。
「いや、君全然たじろいで無いよね....ってそんな事より君に良い提案があるんだ。」
「まっ、まさか!?」
「そう、異世界転生してもらう。
君が魔王を倒して世界を救えば地獄行きは見逃してあげよう。」
いや待てよ.....
この流れでの異世界転生は良くないことが起きるパターンに酷似している。状況を整理しよう。
1.僕は自殺した。
2.怪しい少年に脅された。
3.異世界転生と言う抜け道を提案された。
これは怪しい。次に来ると思われるのは、
(4)魔王強すぎて死んでしまった。
(4)怪しい国王に操られて死んでしまった。
(4)神様がラスボスと言う展開が来て、今それを予想してしまったことでここで殺されてしまった。
(4)魔王を倒した後、寿命で死んでしまった。
いずれにせよ、地獄と同等かそれ以上の苦しみを味わう事は間違いない。
生き返ると言う事はもう一度死ぬと言う事だ。
「おい君、喧嘩売ってるよね?」
「いえいえ、転生に決めました。
チートは貰えるんですよね?」
そう、その後どうなるかなど関係などない。
自分の細胞全てが自分に異世界へ行けと言っている!!
「.......流石に常識を外れた力は与えられない。
住民を蔑ろにするつもりは無いからね。
せいぜいあらゆる事が他の人と比べて少し才能があるってくらいかな。
後一つくらいは何か聞いてあげるけど?」
その答えはもう決まっていた。
自分に無かった力
欲しかった力
でもなんてことない力
他の誰もが持っている力
だけど何かをするのに1番必要な力
決してチート能力じゃないけれど、自分には他のどの能力より魅力的だった力を!
「自分を.........制する力を下さい。」
.......言えなかった。
神様は言えなかったことを分かっているのだろうが自分が努力すると言う事が全く思い浮かばなかったのだ。
自分の性格を変えると自分が自分で無くなる気がした。
「ふふっ、そうか、良いよ。
君に自制力スキルを与えておくよ。
せいぜい努力の辛さを知って来るが良い!!」
あっ、これ神が悪だったパターンだ。
そう思って自分の意識は再び沈んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「行ったか。」
何もない神域にただ1人、いや1柱の神が残されていた。
「会話というのを楽しいと感じるあたり自分も人間に近く創られているようだ。
創造神様も人間が栄えることを予見しておられたということか。
それよりあの男、努力する事の達成感とか困難に立ち向かう事の大切さを学んでくれれば良いのだが。
そして、強くなった暁には........
魔王を殺せるかな?」
神が魔王って言うのは、あと公開でもよかったけどまぁ良いよね.......っである。
次回も読んでくれると嬉しいです。