第六話 半霊娘との再戦
永遠亭へ入り、中を進む。やはり、入る前に感じ取った妖しい魔力のせいなのだろうか。俺の見知っている内装はどこへやら。巨大迷路とでも言うべき回廊へと変化していた。
雪「こういう迷路は苦手なんだがな」
紅魔館しかり、どうやら俺は景色の変わらない長い廊下というものには滅法弱いらしい。こう、同じ所をグルグルと回っている感覚がして苦手なんだ。
雪「⋯⋯む?」
暫く歩いていると、廊下の奥から何か騒ぎ声が聞こえてくる。どうやら既に永遠亭に入っている者がいた様だな。
バレない様に音を殺して先の様子を窺うと、少し開けた部屋で見知った顔の三人が暴れていた。
妖夢「はぁああああ!!」
てゐ「うわっ! ちょっ、お、落ち着きなさいな半霊! からかったのは悪かったって!」
幽々子「フフッ♪ 妖夢、今夜は兎鍋ね」
てゐ「ひぇええええ!」
⋯⋯何なんだ、この状況は。どうやらてゐが先に手を出した結果らしいから放っといても良いんだが、あの先に妖しい魔力を強く発する襖が見える。どの道、巻き込まれる必要はあるみたいだな。
妖夢「取った!」
てゐ「うわっ─────」
妖夢の刀がてゐへと迫り、てゐが斬られそうになった瞬間、氷塊を飛ばして刀を弾いた。
妖夢「っ!?」
雪「それは少々やり過ぎじゃないか、妖夢?」
幽々子「あらあら」
妖夢「貴方は⋯⋯雪さん!?」
てゐ「えっ!?」
妖夢が驚いている隙を突いて、てゐは俺を壁にして隠れる。
てゐ「た、助かったよ雪⋯⋯」
雪「何をしてるんだお前は」
妖夢「雪さん、その兎を私に渡してください。叩っ切って兎鍋に調理しなければならないので」
妖夢は暗い笑みを貼り付け、凄まじい威圧感を発しながらてゐへと刀を向ける。一体何をしたと言うんだこの兎は⋯⋯。
雪「そうしたいのは山々なんだが⋯⋯」
てゐ「えっ」
雪「悪いが、こんなのでも一回世話になってな。すまないがここは見逃してくれないか?」
妖夢「お断りします! 渡してくれないのなら、無理矢理にでも奪うまで!」
雪「おいおい⋯⋯」
チラと幽々子へと視線を送るが、面白そうに笑ってるだけだ。相変わらずマイペースだな⋯⋯従者の暴走くらい止めてもらいたいものなんだが。
雪「てゐ、離れて⋯⋯」
てゐ「それじゃ、ここは任せた!」
雪「おい」
てゐはこれ幸いと襖の奥へと消えていく。全くアイツは⋯⋯妖夢もやる気になってしまった様だし、これでは俺が損するだけなんだが⋯⋯。
妖夢「妖怪が鍛えたこの楼観剣に、斬れぬものなどあんまり無い! 以前は負けましたが、今回は負けません!」
雪「はぁ⋯⋯しょうが無い。来い妖夢、稽古をつけてやる」
妖夢は刀を構え、接近してくると素早く刀を振るう。ふむ、以前よりは早いか。だがまだまだだな。
妖夢「はぁああああ!!」
雪「踏み込みが足りない。相変わらず正直な攻撃だな、フェイントを入れたらどうだ? む、そこを攻撃するのはいただけないな。隙が出来るぞ」
妖夢へとアドバイスをしながら、攻撃を防ぎ、避け、受け流す。だが二刀流で繰り出す連撃にはやはり目を見張るものがある。
妖夢「はぁっ!」
雪「おっと」
妖夢「人鬼『未来永劫斬』!」
妖夢の放った突きを後ろに飛んで避けると、彼女はスペルカードを発動した。以前使っていた人符『現世剣』と似た様なスペルカードだが、それよりも素早い突進で一気に接近すると無数の斬撃を放ってきた。
雪「っ!」
予想してなかった動きに回避が遅れる。咄嗟に籠手で弾いて大きくは当たらなかったものの、羽織が斬られてしまった。
妖夢「これでも当たらないなんて⋯⋯!」
雪「やるな妖夢。まさかこんな動きで来るとは思わなかった」
妖夢「今のを褒められても、あまり嬉しくはありません、ね!」
雪「まあそう言うな」
実際、妖夢の今の機転には驚いている。あの時から随分と成長しているみたいだな。それをしみじみと感じながら妖夢の放った斬撃を弾く。
雪「だが妖夢、剣術ばかりで弾幕を使わないみたいだが⋯⋯」
妖夢「うっ⋯⋯」
⋯⋯弾幕勝負は苦手らしいな。だが皆が皆接近戦だけで戦ってくれる訳ではない。今は時間が無いから無理だが、今度弾幕勝負の手解きでもしてやるか。
雪「だがまあ、今はこれを終わらせるとするか」
妖夢「っ! させません!」
懐からスペルカードを取り出すと、それを見た妖夢は妨害しようと接近してくる。だが反応が遅いな。
雪「妖狐『狐ノ嫁入リ』」
スペルカードを発動すると数個の狐火弾が現れ、それは徐々に小さくなっていく。妖夢はそれを見て警戒したのか、立ち止まった。
妖夢「⋯⋯?」
雪「良いのか、立ち止まって? ああ、だが今はその場から動かずに守りに徹した方が良いかもしれないな」
妖夢「っ! 舐めないでください!」
妖夢は狐火弾が浮かぶ中へと突っ込み俺へと刀を振るう。
雪「残念だが、少し遅かったみたいだな」
妖夢「なっ─────」
次の瞬間縮小していた狐火弾が弾け飛び、辺りに大量の弾幕を撒き散らす。その弾幕は妖夢へと迫り、防御が間に合わなかった彼女へと容赦なく直撃した。
妖夢「きゅ~⋯⋯」
雪「⋯⋯やり過ぎたか」
幽々子「あら~、やっぱりやられちゃったわね」
弾幕が晴れると、気絶したのか妖夢が倒れていた。最初から傍観していた幽々子は妖夢へと近付き、優しく抱えた。
雪「これからどうするんだ?」
幽々子「妖夢の手当てをしに一度帰るわ。折角異変の首謀者の一歩手前まで着てたのに、雪に邪魔されちゃったから」
雪「⋯⋯今度、あの兎と詫びに行く」
てゐのあの性格では正直に謝るとは思えないが⋯⋯。
幽々子「フフッ♪ 冗談よ。そうそう、気付いてると思うけど多分首謀者はこの襖の先にいるわ。気を付けてね」
雪「ああ」
そうして幽々子は妖夢を抱き抱えてここを去って行く。彼女たちを見送った俺は、襖へと目を向ける。
雪「あの先にアイツらがいる、と言ったが⋯⋯正直に向かわせてもらえるだろうか⋯⋯」
そう呟くと、俺は襖へと手を掛けた。
はいどーも、星のカービィのキャラ、グーイがダークマター族であることを最近知った作者の蛸夜鬼です。
話が変わって書いてて思ったんですが、何か私の作品の妖夢って不憫じゃないですかね。決して妖夢嫌いな訳じゃないんですが⋯⋯。
さ、さて次回ですが。ようやく(?)あのキャラの登場となります。また戦闘シーンか、疲れるなぁ⋯⋯。
それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!