第四話 その月光はとても妖しく
慧音「くぅ~⋯⋯酒が美味い⋯⋯!」
雪「それは良かった。折角だ、今日は俺が奢ろう。女将、俺にも酒と焼き八目鰻を頼む」
女将「はいは~い。ちょっと待っててね」
萃香が起こした異変から暫く。満月が輝く夜に俺は、慧音と共にとある屋台へと酒を飲みに来ていた。
というのも、満月の夜になると慧音は白沢の獣人に変身し、『歴史を創る程度の能力』を使用して一ヶ月間に溜まった仕事を一度に行う。その為にかなりのストレスが溜まるのだそうだ。
そんな折、この屋台へ寄ろうとしていた俺と出会ってこうして酒を飲み交わしてるという訳だ。
ちなみにこの屋台は鳥の妖怪、夜雀の『ミスティア・ローレライ』が経営している、焼き鳥屋ならぬ焼き八目鰻屋だ。初めて寄った時は少し抵抗感があったが、食ってみると結構イケるものだ。酒にも合う。
慧音「───で、その男が私の体を舐め回す様に見てくる訳だ。幾ら私でも限界というものがある! 私じゃなければ引っ叩いてるところなんだぞ!?」
雪「それは大変だな。慧音も良く我慢している」
ミスティア「はい、お酒と焼き八目鰻! たんと食べてね!」
雪「ありがとうな女将。ほら慧音、これでも食べたらどうだ。結構酒に合うぞ」
酒が入って饒舌になっているのだろうか。俺の前だと心掛けてるらしい敬語を崩している慧音の愚痴を聞き流しながら、彼女の前に焼き八目鰻を出す。
慧音「ん、ああ⋯⋯おお、美味いな。良い腕じゃないかミスティア」
ミスティア「そりゃあ、伊達に女将やってないからね。でも先生にもそう言ってもらえると嬉しいな!」
そういえば、ミスティアは慧音の寺子屋の生徒だそうだ。朝昼は寺子屋で勉強し、夜は屋台の女将として働いているとは、子供とは思えない程しっかりしているな。あまり成績は良くないらしいが。
慧音「⋯⋯国語の成績もこれくらい私を喜ばしてくれれば良いんだがな」
ミスティア「うっ⋯⋯頑張ります⋯⋯」
そんな事を話しながら、慧音の愚痴を聞き酒を飲み、八目鰻を食べる。そして腹も膨れてきた頃だろうか。
ゾワリッ⋯⋯。
三人「「「ッ!?」」」
突然として、背筋に違和感が走る。咄嗟に周囲を見渡したが、特にこれといって変化が無い。だが二人も何かを感じ取った様だし、気のせいという訳ではないだろうが⋯⋯。
ミスティア「な、何この感じ⋯⋯何か、気分悪い⋯⋯」
慧音「⋯⋯うっ、ぐぅ⋯⋯?」
雪「どうした慧音?」
すると、今度は慧音が気分を悪くしたのか胸を抑える。すると白沢の獣人姿だったのが、みるみるうちに人間の姿へと変わっていく。
慧音「これは⋯⋯人間に戻った?」
それを見た俺は空を見上げる。そこには今までと同じ輝く満月が⋯⋯。
雪「⋯⋯いや」
あれは『満月だが満月ではない』な。何やら月光に混じって妖しい魔力を感じ取れる。考えられるのは⋯⋯本物の満月が、この偽物の満月とすり替えられたのだろう。
通常、人ならざる者は月光に強く影響される。慧音が人間に戻ったり、ミスティアの気分が悪くなったのも偽物の月光に影響されたからだろう。
雪「慧音、これは異変だ、今すぐ人里に戻れ! ミスティアも今日は店を閉まって、月光から隠れろ!」
ミスティア「わ、分かった!」
慧音「雪は!?」
雪「異変の解決に向かう!」
レミリアの解決させられる異変とも違う⋯⋯幽々子の異変と同じ、解決させるつもりのない意志を感じる。恐らく、首謀者が何かの目的でこんな事をしているのだろうが⋯⋯この幻想郷だ。常識に捕らわれてはいけない。最悪、夜が終わらない可能性もある。
慧音「心当たりはあるのか?」
雪「⋯⋯一つ、な」
満月の夜の異変⋯⋯まるで『あの日の再来』じゃないか。否が応でも思い出す。何より、今までの経験があの場所だと告げている。
慧音「そうか⋯⋯気を付けるんだぞ、雪」
雪「ああ」
慧音の言葉に頷くと、俺は恐らく異変の首謀者がいる⋯⋯迷いの竹林へと向かった。
はいどーも、絶賛テスト期間中の蛸夜鬼です。遂に永夜抄編入りました!
それと、テスト期間とは言え三週間ほど空けてしまい申し訳ありません。Twitterでも告知した通り、今週は二話投稿します。
次のお話は明日、投稿させて頂きます。どうぞ楽しみにしていてください。
それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!




