第七話 妖しき桜
雪「着いたか」
長い階段の上、白玉楼。その屋敷の中庭にやって来た俺の目の前では霊夢達と、懐かしい友人⋯⋯西行寺 幽々子が弾幕ごっこで戦っていた。
雪「⋯⋯妖夢?」
妖夢「う~⋯⋯」
⋯⋯速く飛びすぎたな。俺が急ぎすぎたせいで気絶してしまった様だ。俺は縁側に妖夢を寝かせると西行妖へと目を向ける。
中庭の中央にはあの西行妖があり、その上空に地上こら集められた春度が大量に集まっている。そして西行妖から⋯⋯ほんの僅かだが、妖気が流れ出ているのを感じ取った。
幽々子「あらあら、頑張るじゃない貴女達。これも避けられるのかしら?」
霊夢「くっ! 何よこんな弾幕の量は!」
魔理沙「うわっ! あっぶね!」
咲夜「強いわね。」
西行妖の現状を見て少し焦りを感じていると、幽々子が大量の弾幕を放つ。
雪「そこまでだ」
だが俺が作り出した氷柱によって、幽々子の弾幕は全て撃ち落とされた。突然の乱入者に彼女らは驚き、俺に目を向けた。
雪「久しいな、幽々子」
幽々子「あらあら~、もしかして雪かしら? 数百年ぶりね~」
幽々子に声を掛けると、彼女は以前と変わらずほんわかとした雰囲気で返事をしてくる。
魔理沙「おい雪、コイツと知り合いなのか?」
雪「ああ。昔の友人だ。それにしても幽々子、幻想郷に随分な事をしてくれたじゃないか。この桜がどんな代物なのか分かっているのか?」
俺の言葉に、幽々子は頭上に『?』を浮かべる。何も分かっていない様だな。妖忌は何も伝えなかったのか?
雪「⋯⋯妖忌から何も聞いてないのか?」
幽々子「恐ろしい妖怪桜、でしょう? でもそんなに危険な桜なの?」
⋯⋯どうやら、幽々子が楽観視している様だな。確かに見た目はただの巨大桜だ。封印されているせいで妖気も感じ取れないから分からないか。
だが、幽々子を殺したのは間違いなく西行妖。そして封印が解けてしまったら、幻想郷に甚大な被害が出るのは火を見るより明らかだ。
雪「⋯⋯幽々子。あの桜は昔─────」
それを止めるために幽々子に西行妖の恐ろしさを話そうとした瞬間、背筋が凍り付く程の妖気を感じ取る。その瞬間俺は分厚い氷壁を作り出した。
それと同時に巨大な枝が俺の頭部へと向かって伸び、氷の壁によって阻まれた。だが枝先は壁を貫通し、俺の眼前へと迫っていた。
雪「⋯⋯ハァッ⋯⋯ハァッ」
ドッと、冷や汗が流れる。もしも壁が間に合わなかったら⋯⋯俺は死んでいただろう。
幽々達は突然の事に呆然としており、何が起こったのか分かっていない様だ。
雪「霊夢ッ!」
霊夢「な、なにっ!?」
雪「あの桜に刻まれている封印の修復を行えっ! 今すぐにっ!」
霊夢「わ、分かった!」
霊夢は俺の怒鳴り声に驚き、だがすぐに封印の修復を行おうとする。だが霊夢では相手の攻撃を捌きながら修復は出来ないだろう。
雪「魔理沙、咲夜っ! 霊夢を援護しろっ! あの桜から伸びる枝を撃ち落とせ!」
咲夜「分かりました!」
魔理沙「な、何だってんだよ一体!」
雪「⋯⋯あれは昔俺と紫、そしてもう一人の友人が苦戦しながら封印した⋯⋯『生者を死に誘い、生命力を奪う』力を持つ妖怪桜だ」
全員「「「「っ!?」」」」
俺の話を聞いた全員は、信じられないといった顔で西行妖へと目を向けた。後から聞いた話だが、俺と紫が苦戦したというのが信じられなかったらしい。
幽々子「そんな⋯⋯私は、なんてことを⋯⋯」
雪「幽々子、悔やむなら後にしろ。今はこの西行妖を止めるために力を貸してくれ」
幽々子「⋯⋯雪。私は何をすれば良いの?」
幽々子は最初、自分のしでかした事にショックを受けていたがすぐに切り替え西行妖を止めるために行動わ始める。
雪「霊夢達の援護を頼む。まだアイツらも未熟だ。もし危険な目に遭いそうだったら助けてやってくれ」
幽々子「分かったわ。雪は?」
俺は何も言わず目の前の“奴”に視線を向ける。そこには西行妖の妖力と、恐らく昔吸い取った“俺の生命力”で創り出した俺の影が立っていた。
幽々子「成る程ね⋯⋯ここは任せたわ、雪」
雪「ああ。任された」
幽々子はフワリと浮くと霊夢達の方へと向かう。俺は氷の篭手と氷柱を創り出し、奴も妖力の靄で篭手と槍を創り出した。
雪「⋯⋯猿真似で俺を倒せると思うな、西行妖。植物は植物らしく光合成でもしてるんだな」
そう言うと言葉を理解したのか、はたまたただの本能なのか、影は俺へと殴り掛かってきた。
はいどーも、作者の蛸夜鬼です。今回のお話は如何でしたでしょうか?
次回は遂に西行妖との戦い! 雪目線と、第三者視点での霊夢達の戦いを書いていきたいと思います!
それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!




