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東方 白狐伝  作者: 蛸夜鬼
伍章 西行妖桜の巻
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第六話 宴会

勇儀「さあ! 私達に挑んで勝利した雪に!」


萃香「そして今日の新たな出会いに!」


雪以外「「「カンパーイ!」」」


雪「⋯⋯乾杯」


 勇儀と萃香の音頭と共に宴会が始まる。参加者は俺、鬼、そして天狗や河童等の妖怪達だ。


雪「⋯⋯ほう」


 美味い。結構な辛口だが香り高く、すっきりとした飲み口で好みの酒だ。しかしアルコール度数はどの程度なのだろうか。鬼の上物の酒だ。かなり高そうだが⋯⋯。


勇儀「やあ雪! 主役なのにチビチビやってるじゃないか!」


 暫くの間宴会の様子を眺めながら飲んでいると勇儀が近付いてくる。


雪「豪快に飲むというのは苦手でな。こうやって少しずつ、酒の味を楽しみながら飲むに限る」


勇儀「ふーん⋯⋯まあ、飲み方は自由だけどね。で、どうだい? 私達の宴会は」


雪「⋯⋯ああ、悪くない」


 この様に他人と飲むのは久し振りで、こんな大人数で賑やかなのは初めてだ。どちらかというと静かな方が好きだが、こういうのも悪くないな。


萃香「おっ、こんな所に居たんだね」


 すると今度は萃香がやってくる。かなり酔ってるのか、顔は赤く染まっている。


萃香「おー? 主役なのにチビチビやってるね、雪」


雪「勇儀と同じ事を言うな」


 勇儀と萃香を交えて三人で酒を飲む。途中で鬼達が喧嘩したり、天魔が無理矢理飲まされて昏倒していたが二人はそれを肴にしていた。神経が太いにも程があるだろ。


 暫くして、宴会に参加した多くの者が眠りにつくか酔い潰れ、起きているのは俺と勇儀のみになった。


雪「⋯⋯なあ、勇儀」


勇儀「なんだい?」


雪「四天王、と言うのだから後二人いるんだろ? ソイツらはどうしたんだ?」


 俺はふと、一つ気になった事を聞いてみた。すると勇儀は少し寂しそうな表情をして満月を眺める。


勇儀「一人は⋯⋯『茨木(いばらき) 華扇(かせん)』と言うんだけどねえ。アイツ、『仙人になる』と言って出ていっちまったんだよ」


雪「仙人にか? 珍しい⋯⋯」


 ⋯⋯仙人といえば、神子達は今どうなっているのだろう。恐らく青娥が定期的に様子を見てるだろうが⋯⋯こっちまで戻ってきたんだ。一度、会いにいくのも悪くないかもしれない。


勇儀「あともう一人は⋯⋯死んだよ」


雪「っ⋯⋯!?」


 勇儀の言葉を聞いて、手に持っていた猪口を落としかける。


 死んだ、だと? 一体どうして⋯⋯。


勇儀「ここに来る少し前に、人間が宴会を持ち掛けてきたんだ。私達は勿論、喜んで参加したよ。でも、それは罠だったんだ」


雪「何があった?」


勇儀「毒が盛られてたのさ。鬼が簡単に死ぬくらいの猛毒をね。あれは宴会と称しての暗殺だったんだよ」


雪「⋯⋯」


勇儀「⋯⋯何かしみったれた空気になっちまったね。さて、私も休むかな」


 そう言って勇儀は立ち上がり、この場を去ろうとする。


雪「勇儀、すまなかった。辛いことを⋯⋯」


 俺はそう言ったが、勇儀は気にするなと言いたいのか手を振ってそのまま去っていった。


雪「⋯⋯友人の死、か」


 俺は酒に映る月を見ながらそう呟いた。


 友人を目の前で失った勇儀達は何を思ったのだろう。そして、それを奪った人間達に何を思ったのだろうか⋯⋯もし、俺がその状況を目の当たりにしたら⋯⋯。


雪「⋯⋯やめよう」


 俺は酒を飲み干すと木にもたれ掛かり、目を閉じる。酒で火照った筈の身体が、何故か異様に寒く感じた。

 はいどーも、作者の蛸夜鬼です。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。


 今回は勇儀達との宴会でした。最後、ちょっと暗い感じになったのはご愛嬌です。


 さて次回は、遂に西行寺家の方へ移行します。西行寺家編ではちょっとした新キャラが登場します。次回ではありませんが。


 それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!

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