第三話 妖怪の山、再び
天魔「まさか、またお前と出会うとはな」
雪「ああ。恥ずかしながら道に迷ってしまってな。ウロウロ歩いていたらここに辿り着いた」
俺は今、神子の時に世話になった天魔の家に上がらせてもらっている。数十分前に妖怪の山に紛れ込んだのだが、哨戒の白狼天狗に見つかり、いつも通り面倒事に⋯⋯と、思っていたんだが天魔が来て客人としてもてなしてくれた。
相手の本心としては、また部下に怪我をされては堪らないのだろう。そう推測していると天魔はお茶を持ってきて椅子に座る。
天魔「どうだ、最近は」
雪「まあ、ぼちぼちだな。妖怪の山に着いたということはこの国を一周したんだろう。だから異国にでも出ようと思ってる」
そう言うと天魔から出されたお茶を飲む。ん、美味い。どこの茶葉を使ってるんだろうか。
雪「それで、お前の方は?」
天魔「⋯⋯いつもと変わらんよ」
俺の問いに、天魔は顔を暗くして答える。
様子がおかしいな⋯⋯そういえば動きもどこかぎこちない。よく見ると腕を庇っている様だ。
俺は立ち上がると天魔の手を掴んで袖を捲る。天魔の腕には痛々しい痣が出来ていた。
天魔「な、何をする!」
雪「お前の様子がおかしかったからな。で、これはなんだ」
天魔「⋯⋯」
天魔は袖を戻すとポツリポツリと話し始める。
簡単に纏めると、数日前に“鬼”という妖怪がこの山に攻めてきた。妖術の類は使わなかったものの、その圧倒的な身体能力で天狗達を蹴散らしたという。天魔も応戦したがあえなく敗北。この痣はその時に付いたもので、これでもまだ癒えてきてるらしい。
天魔「今ではこの山は鬼の領域だ。我々天狗や河童は鬼の配下になり、言うことを聞くしかない状況に陥っている」
雪「ほう⋯⋯」
鬼⋯⋯そういえば出会った事は無かったな。精々餓鬼や天邪鬼の様な低級の妖怪を村で見つけた程度だ。本物の鬼とはどんなものなんだろうか。
天魔の話を聞き終わると、その場から去ろうと部屋のドアに手を掛ける。
天魔「待て、どこへ行く」
雪「この山の頂上へ」
天魔「なっ! 待てっ、正気か!?」
雪「ああ。見てくるついでに鬼を倒してくる」
一応身体の状態は万全だし、まあ大丈夫だろう。鬼がどの程度の力なのか分からんが⋯⋯人妖大戦の大群に比べたら余裕だな。
天魔「か、簡単に言うな! お前は鬼の強さを知らないからそう言えるんだ! どれだけ恐ろしいか⋯⋯」
雪「大丈夫だ」
そう言うと、天魔は俺が折れないと分かって諦めたのかため息を吐く。
天魔「⋯⋯分かった、好きにしろ」
雪「ああ。そうする」
俺は鬼の元へ向かう為、部屋を出る。その時⋯⋯
天魔「⋯⋯死ぬなよ、雪」
天魔がそう呟いたのを、確かに聞いていた。
はいどーも、作者の蛸夜鬼です! 今回、テスト間近なので短めになりました。申し訳ないです。
ところで、最近になってテストを行う学校は多いと思いますが皆さんはどうでしょうか? 因みに僕はテストが近くなってから勉強を始めるタイプです。
テストで点を取れないと後々辛いので、面倒ですがしっかりやりましょう。非常に面倒ですが。
それでは今回はこの辺で。ではまた今度、お会いしましょう!