第七話 幻想郷へご招待
紫「到着よ」
紫と共にスキマを抜け、着いた場所は竹林から遠く離れた人気のない平地。
スキマを抜けた所から少し離れた場所に、二人はいた。
俺は彼女たちへと近付いていく。暫くして永琳も俺を見つけたのか、こちらへと走ってくる。
永琳「雪っ!」
雪「永琳⋯⋯」
永琳は少し涙目になりながら俺の前に立つと⋯⋯
永琳「この⋯⋯馬鹿っ!」
雪「ブッ!?」
パァンッ! と辺りに響く音を鳴らしながら俺の頬に平手打ちをかました。
雪「え、永琳?」
永琳「貴方ねぇ、私達がどれだけ心配したと思ってるの!? 貴方の部下だったあの三人なんか何日も自分の事を責めてたのよ!?」
雪「うっ⋯⋯」
そうか、アイツらは月に行ったから俺が生きてる事を知らないんだ。これは盲点だった⋯⋯。永琳にも、かなりの負担を掛けたんだろう。
雪「⋯⋯永琳、すまなかった」
永琳「すまなかった!? すまなかったで解決する問題じゃないでしょう!? 貴方はいつもそう。自分の事は二の次で、他の人の心配なんて気にもしないで⋯⋯」
永琳の声が段々と小さくなり、嗚咽が聞こえる。恐らく泣いているのだろう。
雪「すまなかった⋯⋯だから、泣き止んでくれ」
永琳「な、泣いてなんかいないわよ!」
永琳はそっぽを向くがどう見ても涙が流れた跡がある。予想以上に心配を掛けたいたんだな⋯⋯。
雪「すまなかった⋯⋯」
永琳「⋯⋯フフッ。貴方、すまなかったしか言えないの?」
すると永琳は笑い出してそんな事を言う。
永琳「しょうがないわね、私は許してあげるわ」
雪「あ、ああ⋯⋯」
⋯⋯私は、という事はアイツらが許すかどうかは知らないという訳だな。まさかアイツらに頭を下げる事になるかもしれないとは、思ってもいなかった。
すると今まで蚊帳の外だった輝夜が話し掛けてくる。
輝夜「で、私達は今後どうすればいいの?」
雪「ああ、それは考えてある。それより永琳、お前地上にやって来たが穢れの事はどうするんだ?」
永琳「あら、私が考えてなかったとでも? もしもの時の為に月から薬を拝借してきたわ」
永琳は悪戯な笑みを浮かべながら小さな瓶に入った、少し白く濁った液体を見せる。強かだな⋯⋯。
永琳「まあこれは後で飲むとして⋯⋯雪の考えって?」
雪「それは⋯⋯」
紫「私が教えるわ。月の追っ手が来ることがなく、更に退屈させない場所⋯⋯幻想郷に二人を招待するわ」
幻想郷⋯⋯まさか本当に実現するとは思ってもいなかった。
~数年前~
雪「人間と妖怪⋯⋯様々な種族の共存か」
紫「ええ。とても素敵な夢だと思わない?」
数年前のとある日。その時は紫と旅をしていて、スキマで泊まらせてもらった時にそんな事を聞いてきた。
人間と人外の共存、か⋯⋯。
雪「⋯⋯難しいだろうな。人間は妖怪を恐れ、妖怪は人間を襲う。この関係を元から断たないと実現するのは難しいだろう」
紫「⋯⋯」
紫はその返答を予想していたのか、特に何も言わず扇で口元を隠した。しかし、その顔に僅かな落胆の表情が浮かんだ。
雪「だが、楽しそうだな」
紫「えっ?」
雪「人間も妖怪も意思を持っている。考えは違うだろうが意思疎通が出来るなら分かり合う事だって出来る。努力次第で何とかなると思うぞ」
紫「そっか⋯⋯そうよね! 私、頑張ってみるわ!」
雪「ああ。俺も出来る範囲で手伝う」
その日から紫は度々幻想郷の相談を持ち掛けてきた。その数年後に一通り完成したと聞いた時には驚いた事を覚えている。
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雪「⋯⋯という訳だ」
二人に幻想郷の事を話すと永琳は感心した様に、輝夜は驚いた表情で紫を見た。
永琳「貴女凄いわね。たった数年でそんなものを創るなんて⋯⋯」
紫「当然じゃない。私なんですもの!」
永琳の言葉に紫は胸を張る。
雪「向こうに適当な家を用意してある。幻想郷なら追っ手も来ないだろうから好きに過ごしてくれ」
仕組みはよく分からないが、幻想郷には巨大な結界があって、それによって外からは決して入る事が出来ないらしい。紫は結界や札等の陰陽道に詳しい様だな。今度教えてもらおうか。
雪「家具や日用品は一通り揃えてあるが、必要な物があれば紫に伝えてくれ」
永琳「ええ。ありがとう二人とも」
輝夜「本当、英雄様とその友達はとんでもないわね⋯⋯」
二人は紫に連れられて幻想郷へと向かう。俺は旅を続けると告げ、二人とは別れた。
雪「さて、宇宙船を破壊しておくか」
はいどーも、作者の蛸夜鬼です。投稿が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
実は私の高校の文化祭が土日にありまして、それで疲れてしまって投稿出来ませんでした。
まあ、文化祭で投稿出来なかったという言い訳で皆様にご迷惑掛けてしまうのは自分的にもよくないので、明日にもう一話、投稿したいと思います。
それでは今回はこの辺で。それでは次回、またお会いしましょう。