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東方 白狐伝  作者: 蛸夜鬼
肆章 竹取物語の巻
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第四話 答え合わせ

雪「う⋯⋯」


幽香「あら、起きたのね」


 花々の甘い香りで目が覚める。首を動かして辺りを見渡すと、どうやらベッドに寝かされているらしい。隣では幽香が椅子に座っていた。


 ⋯⋯確か俺は幽香の光線を防いで気絶したんだったか。というとここは幽香の家か?


 起き上がろうとすると身体に痛みが走る。見ると身体には包帯が巻かれていた。幽香が巻いてくれたのだろうか。


幽香「貴方、よく私のマスタースパークを正面から止めようなんて思ったわね。まあ、そのお陰で向日葵は助かったんだけど」


雪「お前が向日葵に気を回していれば受け止めなかったさ」


幽香「⋯⋯はい、これ」


 すると幽香は一輪の向日葵を差し出してくる。


雪「これは?」


幽香「向日葵を守ってくれたお礼⋯⋯といった所かしら。貴方が花を大切にするって分かったから譲っても良いと思ったのよ。それに、この子も貴方の力になりたいと言ってるから」


雪「まるで花と話せるかの様な言い方だな」


幽香「話せるわよ。『花を操る程度の能力』だもの」


 その後、幽香とは他愛もない話をしてから別れた。幽香はいつでも歓迎すると言っていたが⋯⋯彼女には悪いが暫く勘弁だな。


~数日後~


 姫の難題の答え合わせの日。屋敷に足を運ぶと既に三人程の貴族が集まっていた。残り二人は⋯⋯確か龍の首の五色の珠、あと燕の子安貝を難題として出された者だったか。竹取物語では二人とも大怪我で戻ってこれなかったのだったな。


姫「皆様、お集まり頂きありがとうございます。では早速、答え合わせといきましょう」


 そして、姫の答え合わせが始まった。一人目は仏の御石の鉢を渡す。確かこれは鉢のどこかに光があるという代物だな。


姫「⋯⋯光ってませんね。偽物です」


貴族「なっ⋯⋯!」


 姫はそれを偽物だとアッサリと見抜き、一人目の貴族を帰らせる。恐らく先程の貴族は偽物でも騙せると高をくくっていたんだろう。


姫「では、次の方」


 二人目は火鼠(かそ)の皮衣を持ってきた。確か火鼠という妖怪の皮で作られた衣でどんな炎にも決して燃えない、という物だったな。


 それを受け取った姫はすぐさま近くにあった火鉢に放り込む。その衣は火鉢に入った瞬間、燃えない所か普通よりも早く燃え尽きた。


姫「なんとも簡単に燃えましたね。偽物です」


貴族「く、くそぉ!」


姫「それでは⋯⋯次は貴方ですね」


 最後の貴族は蓬莱の珠の枝を持ってきた。これは七色の美しい実を付ける枝だな。


姫「これは⋯⋯」


 姫は渡されたそれを見ると、最初は澄ました表情をしていたが段々と驚いた様な表情に変わっていく。


姫「まさか⋯⋯本物?」


 ⋯⋯竹取物語では藤原不比等(ふびな)という貴族が珠の枝を取りに行ったと思わせ、数人の職人と共に贋作を作り出すのだったな。で、最初は姫を騙せていたが⋯⋯


 そこまで思い出していた時、廊下からドタドタと足音が聞こえる。すると襖が開いて数人の男達が慌ただしく部屋に入ってきた。


男「不比等様! いつになったら報酬を頂けるのですか!」


 そうだ。確か姫を騙せていたが、その後入ってきた職人達によって失敗に終わるんだったか。


不比等「き、貴様ら! 何故ここに!?」


姫「皆様は?」


男「私達はこの御方に依頼され、蓬莱の珠の枝を作った者です。完成した暁にはすぐに報酬を払うと言われて数日間殆ど眠らず完成させたのに、この方は未だ報酬を払わずのらりくらりと⋯⋯」


姫「⋯⋯どういう事でしょうか?」


不比等「こ、これは⋯⋯その⋯⋯」


 姫の威圧感のある言葉に狼狽えた不比等は、弁解は不可能だと思ったのか逃げる様に部屋を去っていった。職人達も不比等を追って消えていく。


姫「さて、最後は貴方ですね」


雪「そうだな」


 部屋に残った俺は姫に向日葵を渡す。しかし姫はそれを一瞥するだけで


姫「本物ですね」


 そう告げた。


雪「何故しっかりと見もしないで本物だと分かる?」


姫「この辺りに向日葵はあの妖怪の場所しか生えていませんから。遠出すれば他の場所にも生えていますが、それを数日で取りに行くのは不可能です」


雪「⋯⋯成る程な」


 そう呟いたと同時に、姫は簾を退けて姿を見せる。


姫「⋯⋯では、貴方の願いを叶えましょう。月の英雄」


 ⋯⋯濡れた様な長い黒髪に整った顔立ち。成る程、貴族達が夢中になるのも無理はない。俺には関係ないが。


雪「なんだ、俺は月の英雄などと大層な名で呼ばれているんだな」


姫「はい。たった一人で無数の妖怪を止め、私達を守って亡くなった⋯⋯そう思われてますよ」


雪「そうか⋯⋯というか、普通に喋ったらどうだ?」


姫「あら、気付いてたのね」


 姫は凛とした雰囲気を壊し、見た目相応の柔らかな雰囲気を纏う。そして可笑しそうにクスクスと笑った。


雪「どこか無理してそうな雰囲気をしていたからな。名を聞いておこう。俺は⋯⋯」


姫「狐塚 雪でしょ? 月の民なら知らない人はいないわよ。私は『蓬莱山(ほうらいざん) 輝夜(かぐや)』。お爺様やお婆様からはかぐや姫と呼ばれているわ」


雪「そうか⋯⋯なあ、輝夜」


輝夜「ん?」


雪「⋯⋯永琳は、元気か?」

 はいどーも、作者の蛸夜鬼です。この間書かれた感想で褒められて少し浮かれてます。書いて下さった方、本当にありがとうございます!


 さて、今回は輝夜が出てきましたね。そして雪は何とも小っ恥ずかしい名前で呼ばれているという⋯⋯。


 次回は雪の友人との再開です。ここまで来たら誰かは分かると思いますがね。まあ、楽しみにしててください。


 それでは今回はこの辺で。また今度お会いしましょう!

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