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東方 白狐伝  作者: 蛸夜鬼
肆章 竹取物語の巻
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第二話 六つ目の難題

貴族「ほう、お主は大陸から来た術士とな?」


雪「ああ。修行と文献の為にこの国へ渡ってきた」


 俺は今、御輿に乗った貴族(らしき男)と竹林を歩いている。どうしてこんな事になっているかと言うと⋯⋯数時間前に遡る。


~数時間前~


雪「かぐや姫?」


紫「そう。何でも光る竹から生まれた絶世の美女なんですって。人間で言う(みかど)もかぐや姫に夢中らしいわよ」


 紫と出会ってから数年が経った頃、彼女から興味がそそられる話を聞いた。


雪「どうしてそんな話を?」


紫「あら、貴方が興味あると思って言ったのよ?」


雪「まあ気にはなるが⋯⋯」


 かぐや姫⋯⋯確か原作は竹取物語だったか? 竹から生まれた少女が急速に成長して世間が認める美女となる。その後、彼女に惚れた貴族が様々な難題を出され、それを解こうとするが皆失敗する。


 そして満月の夜の前にかぐや姫は月の民だと竹取の翁に告白し、帝は彼女を帰らせまいと兵士を送るが月からの迎えの者達に呆気なく敗北。かぐや姫は月へと帰ってしまう。


 その際にかぐや姫は蓬莱の薬と呼ばれる不老不死の薬を帝に授けるが、帝は富士山でそれを燃やす⋯⋯大まかにはこんな感じか。


 ⋯⋯ちょっと待て。かぐや姫は月の民、だったよな。もしも紫の話が本当なら⋯⋯かぐや姫は永琳達の事を知ってるんじゃないか?


雪「紫、そのかぐや姫が住んでる場所はどこだ?」


紫「えっ? ど、どうしたのよ」


雪「いいから」


紫「分かったわよ⋯⋯そこまで送ってあげるわ。はい、ご開帳」


 紫は俺の態度に困惑しながらスキマを開く。俺は礼を言うとスキマを通る。


雪「っと。ここは⋯⋯竹林か」


 この竹林にかぐや姫が⋯⋯そう思って人間の姿に変化してから先に進もうとすると後ろから人間の悲鳴と妖怪の雄叫びが聞こえてくる。どうやら襲われている様だ。


雪「⋯⋯放っておく訳にもいかないか」


 悲鳴が聞こえた方に走ると貴族風の男とその護衛らしき人間。数匹の妖怪が争っている。


 奇襲でも受けたんだろう。護衛の動きがぎこちない。何人かは既に怪我をしている。


妖怪「ギィイイイ!」


貴族「ひ、ヒィイイイイ!」


雪「はぁっ!」


 一匹の妖怪が護衛の間をすり抜けて貴族に襲い掛かろうとした所に氷塊を投げつける。


 突然の事に貴族達はポカンとしているが、妖怪共は邪魔された事に怒ってギャーギャーと騒ぐ。


雪「⋯⋯喧しい」


妖怪「ギッ⋯⋯!」


 威圧すると妖怪共は顔を恐怖に染め、逃げ去っていく。戦うのも面倒だったからな。あの程度の雑魚なら威圧すれば逃げるから楽だ。


雪「大丈夫か?」


 そう言って貴族達に近付くと護衛が槍を向けてくる。これは警戒してるな。そりゃあ突然現れて妖怪共を撃退すればそうなるか。


 すると貴族が護衛を下げ、俺の前に出てくる。


貴族「先程は助かった。お主は誰かな?」


雪「ここらを旅してる者だ」


貴族「ほう。しかしこの辺りは竹林しか無いぞ? どうしてこんな場所に?」


雪「この先にいるかぐや姫に会いにきた」


 そう答えると貴族は笑い始める。何なんだ一体⋯⋯。


貴族「奇遇だな、私もかぐや姫に会いに来たのだ。どうだ、共に行かぬか?」


雪「良いのか?」


貴族「うむ。折角だ、姫の元に着くまで旅の話を聞かせてくれぬか」


雪「良いだろう。では、共に行かせてもらう」


──────


 と、いった感じで現在に戻る。氷塊を飛ばした所を見られた⋯⋯というか見せてしまったので大陸の術士と答えてある。


 暫くして歩いていると鬱蒼とした竹林の中に建てられた屋敷が見える。ここにかぐや姫が⋯⋯。


貴族「うむ、着いたな。さあ待っておれかぐや姫よ! 今行くぞ!」


 貴族はさっさと御輿を降りると早足で屋敷に入っていく。さて、俺も行くか。


~白狐移動中~


 屋敷に入ると、先程の貴族を含めた五人の男と優しげな雰囲気の老人がいた。恐らくこの老人が竹取の翁だろう。


翁「あの、貴方は?」


貴族「私の連れだ。この者も姫に会いたいらしい」


翁「はあ⋯⋯構いませんが」


 翁は俺を一瞥するが、すぐに視線を外すと俺達を姫の部屋に案内した。


翁「では、ごゆるりと⋯⋯」


 通された部屋には俺と五人の貴族。そして(すだれ)で姿を隠しているが、姫が座っている。


 そして翁が部屋から出て行った瞬間、貴族達はマシンガンの様に話を始めた。俺はというと、貴族達から少し離れた場所で壁にもたれ掛かりながら黙っている。


 暫くして貴族達の話が終わると、姫が口を開いた。


姫「⋯⋯皆さん、とても楽しいお話をありがとうございます」


 絶対聞いてなかっただろうな。多分何度も同じ事があったんだろう。


姫「もう少しお話を聞いていたいのですが、何分時間が掛かります。なので皆様に一人一つ、問題をお出ししましょう。それを達成出来た方と結婚を致します」


 貴族達はその話を聞くと歓声を上げる。五月蝿いな⋯⋯ここは他人の家だぞ。恥じらいというのを持ったらどうだ。


姫「ところで⋯⋯そこのお方」 


 貴族達の様子に呆れていると、突然として姫に話し掛けられた。


雪「何だ」


姫「貴方は私に話をする訳でも、結婚を願う訳でもなく様子を見ているだけ⋯⋯どうしてですか?」


 おっと、何も喋ってないから目を付けられたか。さてどう答えるか⋯⋯そうだな。


雪「なあ姫、あと数日もすれば綺麗な満月が浮かびそうだとは思わないか?」


姫「⋯⋯は?」


雪「姫は月に何か思い出は無いか? 俺は⋯⋯永琳、という女性との思い出があるんだが」


姫「っ⋯⋯!」


 幕によってあまり分からなかったが、姫は今確実に動揺した。貴族達は「何を言ってんだコイツ」という表情をしてるが気にしない。


姫「⋯⋯成る程。貴方の言いたい事は分かりました。ですが確証が欲しいところです。貴方にも問題をお出ししましょう」


雪「良いだろう」


 ビンゴだ。これでかぐや姫は月の民というのが確実になった。後は問題を解けばオーケーだな。


 そして姫は俺達にそれぞれ問題を出していく。話通り難題ばかりだ。そして俺は⋯⋯


『花を愛する妖怪』が育てる花を一本取ってくる⋯⋯という難題を出された。

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