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東方 白狐伝  作者: 蛸夜鬼
弐章 諏訪大戦の巻
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第七話 大戦の終結

 あの男神との戦いから戻ってくると、大地はひっくり返り、竜巻が発生したかの様に土が抉られ、更には刃物で斬られた様な大きな溝、更には御柱が刺さっていた。


 そしてその中心には傷だらけになった諏訪子と神奈子、二人の姿があった。


雪「良かった、まだ決着は着いてないみたいだな」


兵士「戻りましたか。長かったですね?」


雪「少し野暮用でな」


 兵士とそんな会話をしていると二人は神力を放出する。


諏訪子「これで終わらせるよ、神奈子!」


神奈子「これはこっちの台詞だ! 行くぞ諏訪子!」


 まず仕掛けたのは諏訪子。神奈子の目の前に土の壁を発生させて目眩ましをすると巨大な大岩を創り出して投げ飛ばす。


神奈子「なっ! ぐぅっ!」


 大岩を投げ飛ばしたと同時に土の壁を崩し、神奈子の虚を突くことに成功した。神奈子は目の前に現れた大岩に驚いたが御柱でなんとか防ぐ事に成功する。


諏訪子「貰った!」


 しかし諏訪子はそれすらも囮として扱い、大岩に気を取られている神奈子の背後に回ると鉄の輪で斬り掛かった。


雪「やったか!」


 これには俺も驚き、諏訪子の勝ちだと思い込んだ。しかし⋯⋯


神奈子「⋯⋯掛かったな!」


諏訪子「っ!? て、鉄の輪が⋯⋯!」


 諏訪子の鉄の輪が、突然として錆びて朽ち果てた。鉄の輪を良く見ると、何か植物の蔓が巻き付いている。


雪「⋯⋯あの蔓は?」


兵士「藤の蔓です。鉄を錆びさせる力を持っています」


雪「⋯⋯そんな物を持っていたのか」


 今思えば当たり前か。相手は数々の国を相手にしてきた大国。鉄の武器に対する道具を持っていたとしても不思議ではない⋯⋯。


 その後の戦いは一方的なものだった。諏訪子は武器を失い、能力と俺が教えた付け焼き刃の体術で応戦したが、唯一のアドバンテージであった鉄の輪を失った諏訪子に勝ち目は無かった⋯⋯そして


諏訪子「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」


神奈子「⋯⋯私の、勝ちだ、諏訪子」


兵士「勝者、建見名方様!」


 勝者は、神奈子に決まってしまった。俺はすぐに諏訪子に駆け寄って身体を起こす。


雪「大丈夫か?」


諏訪子「ねえ、雪。私、負けちゃったんだよね⋯⋯」


雪「⋯⋯そうだな」


諏訪子「そっか⋯⋯」


 俺の言葉を聞いた諏訪子は弱々しく笑う。すると次の瞬間


諏訪子「うっ、うぅ⋯⋯うわぁああああ!」


 大声で泣き出してしまう。俺はそんな諏訪子の頭を、そっと撫でてやる。


雪「大丈夫、大丈夫だ諏訪子⋯⋯」


諏訪子「ふぐっ、うぅ⋯⋯」


 俺は諏訪子の頭を撫でる手は止めずに顔だけを神奈子達に向ける。


雪「素晴らしい戦いだったぞ、神奈子」


神奈子「⋯⋯そうか」


 そして神奈子が信仰の件について口を開こうとした時、俺はそれを止める。ここで切り札を使う時が来たようだ。


雪「⋯⋯だが、諏訪の国の信仰は渡せないな」


神奈子「なっ!? 約束が違うぞ!」


諏訪子「ゆ、雪?」


 神奈子は俺の言葉に怒り、諏訪子は困惑そうな表情を浮かべる。


雪「まあ待て、ちゃんとした理由がある。信仰を渡さないんじゃない、渡せないんだ」


神奈子「どちらも同じだろう!」


雪「いいや、違うぞ。俺は諏訪の民にとある質問をした。それは『諏訪子以外の神を信仰するか』というものだ」


諏訪子「えっ? いつそんな事⋯⋯」


雪「最初に大和の国に向かう数時間前だな」


諏訪子「あ、あの時『野暮用がある』って言って外に出たのって⋯⋯」


雪「まあそんな事はどうでも良い。話を戻すが、その質問に対しての民の答えは全て『自分たちを気にかけてくれる諏訪子様を裏切るつもりはない。だから別の神を信仰するつもりはない』だった」


諏訪子「み、みんな⋯⋯」


 諏訪子は民に感動したのか、顔を抑えた。


神奈子「っ~! ではこの戦いは無駄骨じゃないか! ふざけるな!」


 まあ、勿論納得しないよな。だが俺の切り札はこれだけじゃない。


雪「そこで俺の考えた方法、そうだな⋯⋯『二神統治制』とでも名付けようか」


二人「「二神統治制?」」


雪「ああ。さて神奈子、お前達大和は沢山の神がいるよな? どうして全員に信仰が入ると思う?」


神奈子「それは、一人一人が国を統治する立場だからであって⋯⋯あっ」


雪「そういうことだ」


 大雑把に説明すると、二人で国を取り仕切れば両者に信仰が入る、という訳だ。大和の国を真似したものだな。まあ、そんな簡単に行くわけないから今後も調整が必要だが。


雪「この方法を取れば二人は信仰を得る事ができる」


神奈子「な、成る程⋯⋯よし、お前の提案を受け入れよう」


雪「感謝する」


諏訪子「えっと⋯⋯雪、私って⋯⋯」


雪「ああ、存在を維持できるな」


 ポカンとした表情で聞いてくる諏訪子に微笑んで答えると、諏訪子は大粒の涙を流して抱きついてきた。


諏訪子「良かった、良かったよぉ⋯⋯」


 俺はポンポンと背中を優しく叩くと、諏訪子を抱き上げた。


雪「それでは神奈子、俺達は帰るぞ」


神奈子「ああ、それではな」


 俺は諏訪子に「いい加減泣き止め」と言って洩矢神社へと戻っていった。


神奈子「⋯⋯全く、奴にはいつも驚かされるな。お前達、私達も帰るぞ。天照様に報告だ」


兵士達「「ハッ!」」

 次回、弐章の最終話になります。お楽しみに!

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