第六話 異形との戦い
今回少し短めです。それではどうぞ。
異形「キュルルルルル!」
雪「おっと」
異形は蟷螂の様な巨大な鎌を振り回す。リーチは長いが攻撃は単調なので簡単に避けられるな。
雪「そらっ!」
小手調べで氷塊を何個か飛ばす。異形には当たったが特に効いてないのか普通に攻撃してきた。
雪「効いてないのか。単純に甲殻が硬いのか痛覚が無いのか⋯⋯」
しかし⋯⋯あれだけの大きさだし、もしも外骨格なら自重で潰れそうな気がするけどな。外骨格に見せかけた内骨格か?
異形「キュルル、キュルルルルル!」
雪「ったく、面倒だな」
俺は氷を飛ばして異形の脚を固定する。
とある本で読んだのだが、虫の思考は簡単に言ってONとOFFしかないらしい。一度その思考を始めるとOFFにするまで切り替える事はない⋯⋯つまり、今は俺を攻撃するという思考なので氷が壊される心配はないという事だ。
雪「さて、攻撃する箇所はどうするか」
取り敢えず異形の攻撃方法は鎌しかないようだし、範囲外に出ておけば当たる心配はない。というか見た目がエグいだけで拍子抜けだな。
⋯⋯実を言うと、俺は筋力自体あまりない。人間離れはしているがパワー型の妖怪に比べたら数段劣る。つまり物理攻撃は通らないと考えた方が良いだろう。
氷も、単純に飛ばしただけでは通らない。巨大な氷で潰しても良いが創るのに時間が掛かる。う~ん、どうするか。
雪「⋯⋯そうだ」
俺は一本の大きな氷柱を創り出す。それを研磨⋯⋯というとおかしいかもしれないが、氷柱の先をとにかく鋭くする。そして形をライフル弾の様に整え、高速で回転させる。
狙うのは頭。落ち着いて一撃必殺を狙う。つまりヘッドショットを狙おうという訳だ。
雪「⋯⋯発射」
風を貫く音が鳴る。俺の創った氷柱は高速で回転しながら異形の頭に吸い込まれる様に放たれ⋯⋯。
パァッン!
という音を立てて異形の頭を吹き飛ばした。異形は後ろに倒れてバァンッ! と爆発。邪気を辺りに撒き散らした。
雪「ゲホッ、ゲホッ!」
クソッ、撒き散らすなんて効いてないぞ。結構吸ってしまった⋯⋯。
暫くして邪気が晴れる。すると異形が倒れた場所には男神が胸に風穴を空けて倒れていた⋯⋯何で頭を飛ばしたのに胸に穴が空いているんだ?
男神「ぐ⋯⋯」
雪「さて、これで俺の勝ちな訳だが⋯⋯最後に何か言い残す事はあるか?」
男神「く、ククク⋯⋯貴様の勝ちだと? 勘違いするな⋯⋯まだ俺には別の手段があるのだよ⋯⋯」
雪「別の手段?」
男神はニヤリと笑って俺の背後を指差す。
男神「あの先には、俺が集めた妖怪共がいる。あの女共じゃ話にならん程の大量の妖怪でな⋯⋯俺はただの時間稼ぎだよ⋯⋯」
自らを時間稼ぎに使ってまで復讐に走るのか。その情熱を別の事に使えば良かったものを⋯⋯しかし、諏訪子達では歯が立たない大量の妖怪か。
男神「ククク⋯⋯行かなくて良いのか? まあ、既に遅いかもしれないが⋯⋯」
雪「⋯⋯悪いが、その妖怪共なら既に駆除させてもらった」
男神「⋯⋯は?」
俺の言葉に男神はポカンとする。
実はここに来る前、妖怪が異様に集まっている場所を見つけていたんだ。諏訪子達の邪魔になってはいけないと思って駆除しておいたんだが、まさか男神の刺客だとはな。
雪「しかし、あの数で諏訪子達では歯が立たない? 幾らなんでも過小評価し過ぎじゃないか?」
大量と言っても精々五百程度。あの人妖大戦の妖怪共と比べてずっと少ない。それに一匹一匹も弱かったからな。恐らく諏訪子達でも簡単に勝てただろう。
男神「ば、馬鹿な⋯⋯」
雪「稚拙な作戦だったな」
男神「ぐ、くそ⋯⋯ガフッ⋯⋯」
そして男神は息を引き取り、その姿は光の粒子となって消えていった。
⋯⋯『ガフッ』て言って死ぬとか、まるで漫画みたいな奴だったな。
雪「おっと、こんな事してる暇じゃない。早く戻らないとな」
俺は浮遊すると、全速力で諏訪子達の戦いへと戻っていった。