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東方 白狐伝  作者: 蛸夜鬼
拾壱章 大結界異変の巻+一編
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第五話 もう一人の綿月姫

 幻想郷を飛び立ち暫く。青く丸い地球を飛び出し、無数の星が瞬く宇宙の中を、月へと向かってこのロケットは飛んでいる。


 どうやらこのロケットは切り離し式のものだったようで少し前に下段、中段を切り離し、現在は上段に全員で搭乗している。だがやはり下の段とは違い、ここは随分と狭く感じるな。


雪「⋯⋯はぁ」


魔理沙「なあ雪。いい加減コレ外してくれないか? もう滅多な事はしないからさ」


 魔理沙の言葉を無視して窓の外をチラと覗くと美しい宇宙空間が広がっているが、感動している程余裕を持っていない。何せこんなロケットで無事辿り着けるか不安な上、先ほど魔理沙が何を思ったのか窓を開けようとしたのだ。急いで時を凍らせて窓から離した後、今は氷の枷を作って拘束している。まったく、気を緩める暇もないな。ストレスで胃が痛くなってきたぞ⋯⋯。


咲夜「雪さん、紅茶をどうぞ」


雪「ん、ああ⋯⋯これは?」


 咲夜から紅茶を受け取ると、カップを乗せた皿に薬が二錠、乗せられていた。


咲夜「竹林の医者から渡された胃薬です。雪さんは胃を痛めるだろうから渡してくれと」


雪「そうか。すまないな⋯⋯」


 咲夜に礼を言うと薬を紅茶で流し込む。というか、こんな物を用意しておくとは永琳は俺がロケットに乗ることを予想していたのか? 随分勘が良いな⋯⋯。


 即効性のある薬のお陰か、胃の痛みが和らいでいく。やはり永琳の薬はよく効くな。無事帰れたら真っ先に礼を言いに行くとしよう。


霊夢「そろそろ着くわよ」


レミリア「やっとなのね。長い旅だったわ」


 暫くして伝えられた霊夢の言葉を聞いてもう一度窓を覗くと、美しい青色の海が⋯⋯。


雪「何故月に海があるんだ⋯⋯」


 いや、月の大きなクレーターだかに海の名が付けられているのは知っている。だが本当の海があるとは誰一人として思わないだろう。


雪「ん? そういえばこのロケットはどうやって着陸するんだ?」


 こういう切り離し式のロケットがどういう着陸をするのか知らないんだが⋯⋯そう思って振り返ると、みんなは各々掴める場所に掴まっている。ああ、成る程⋯⋯道理でパチュリーが来ない筈だ。


雪「最近、何だか運が悪い気がするな」


 感情の薄い声でそう呟くとロケットは向きを変えず、頭から海へと突っ込んでいった。



~白狐達着陸中~



雪「酷い目に遭った⋯⋯」


 死ななかったのが奇跡だ。何とかロケットから抜け出した俺達は、近くの陸に上がると各々服を搾る。しかし何で着陸の事を考えてないんだ。それくらい常識的に考えておくだろう⋯⋯というか、帰りは一体どうするつもりなんだ。


レミ&妖精「「「「うーみーだー!」」」」


咲夜「お嬢様、もう少しで髪を拭き終わりますので動かないようにお願いします」


霊夢「ちょっとこの水塩っ辛いんだけど。海ってこんなものなの?」


魔理沙「なあなあ。海って事は川魚とは別の魚がいるのか?」


 七人は随分と呑気だな。しかし月に空気があるとは。ここは月の都の近くなのか? なら少し歩けば都があるかもな。まあ、その前に話しておかなければならない人物がいるんだが。


雪「ほら、遊ぶなら向こうで遊んでこい。俺はロケットの残骸を探してくる。何かしらあるかもしれないからな」


 そう言って俺はみんなを遠くにやると、その場に座り込む。色々あって疲れたな。いや、本当に⋯⋯それにまだ面倒ごとがあるとは、億劫になりそうだ。


 少しの間海を眺め、大きくため息を吐くと砂を払って立ち上がり後ろの木陰へと目を向ける。


雪「隠れてないで出てきたらどうだ⋯⋯豊姫(・ ・)


?「あらあら、やっぱりバレてたのね」


 おっとりとした口調で木陰から出てきたのは、亜麻色の髪を持つ⋯⋯綿月(わたつきの) 依姫(よりひめ)という名の少女だった。手には桃が一杯に入った籠と、何か不思議な扇子を持っている。


豊姫「家の庭で採れた桃、いかが?」


雪「戴こう」


 一つ桃を受け取ると、それを能力で出した水で洗ってから氷のナイフで皮を剥き齧り付くと、柔らかい果肉から大量の果汁が溢れ出した。ああ、甘さが胃に優しいな⋯⋯。


豊姫「久し振りね、雪さん。まだ地球に住んでた頃以来かしら」


雪「そうだな。あれからどうだった」


豊姫「う~ん、まあ変わりは無かったわね~。いつも通り自由奔放と過ごしてたわ」


雪「そうか」


 彼女は、苗字から分かるが依姫の姉だ。どうやら今は軍に所属している依姫とは違い、何かしらの方法で月の都に紛れ込んだ生物を地球へと帰したり、月に蔓延る穢れを感知する役目を担っているらしい。古代都市で出会った頃は家の庭で桃ばかり食っていた娘が、随分立派になったものだ。


豊姫「雪さんはどうして月に?」


雪「ああ、さっきの奴らの保護者兼護衛役としてな。お前の事だ。多分向こうには依姫を向かわせただろう?」


豊姫「あら、バレてた?」


雪「狐の聴覚を馬鹿にするなよ。それで悪いが、出来れば手荒な真似はしないでくれ。あれでも友人なんでな」


豊姫「ええ、分かった。少し待っててね」


 そう言った豊姫はいつの間にか持っていた通信機でどこかに通信する。恐らく依姫にこの事を話しているんだろう。耳を澄ませると、通信機から依姫の慌てた声が聞こえてくる。


豊姫「雪さん、折角だし家に寄っていかないかしら? 依姫も会いたいと言っていたし」


雪「是非、寄らせてもらおう」


 暫くして通信を切った豊姫はそう言って家に誘ってくる。勿論断る理由も無い俺は二つ返事で答えた。


 豊姫は俺の言葉にニッコリと笑うと、俺の手を引いて彼女の家へと向かった。

 どーも、作者の蛸夜鬼です。昨日は投稿出来ずに大っ変申し訳ありません! 今回ばかりは自分の怠慢ですので弁解はいたしません。本当に申し訳ありませんでした!


 さて、皆様今回は如何だったでしょうか。当初は豊姫は初対面でいくつもりだったのですが、依姫の姉なのに知り合ってないのはおかしいなと思ったので友人、という関係でいくことにしました。


 次回は月のメンバーを出そうと思います。今回の儚月抄も短めになりそうですね。


 それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!

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