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東方 白狐伝  作者: 蛸夜鬼
拾壱章 大結界異変の巻+一編
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第四話 月旅行へ

 あの時の⋯⋯四季異変と呼ばれるから既に一数ヶ月が経過しようとしていた。異変の騒動も既に収まり、変わりない日常を過ごしていた所、レミリアから何やら夜に紅魔館へ来てほしいという言伝を受け取った。


 特に断る理由も無かった俺は指定された日の夜に紅魔館へと向かったのだが⋯⋯。


雪「⋯⋯何だこれは」


 紅魔館の大図書館内に、一つの異物が鎮座していた。


 木造の円柱状の何かが二段、天辺には三角錐の何かが“ズレて”重ねられており、それぞれ“普通の”ドアや観音開きする窓、更には煙突が飛び出ている。


 三角錐には神社に使われる千社札や注連縄が巻かれ、それぞれの底面には何かを噴出する様な円形の構造が設置されている。


 極めつけには異物の下に赤い絨毯が敷かれ、錠のついた鎖が巻かれている。何故だろうか、禁忌とされる黒魔術を行う儀式にしか見えない。


レミリア「あら雪、来てくれたのね」


雪「⋯⋯レミリア、これは何だ」


レミリア「フフッ、良くぞ聞いてくれたわ! 聞いて驚くなかれ、このロケットで月へ行くのよ!」


 ロケット。機体内に貯えた燃料を激しく燃焼させて多量のガスを噴出し、その反動で進むようにした装置。または、金属性の小さな容器に写真を入れて、細い鎖で胸に吊す、装身具。


 この目の前の異物は明らかに前者だろう。だが俺の知るロケットとは造形がかなりかけ離れている。「これが宇宙に飛べるか」と十人に問えば、全員「無理だ」と答えるだろう。


雪「⋯⋯レミリア、良い医者を紹介しよう。風邪などの病だけではなく精神病も治療出来る奴だ」


レミリア「別に気が狂ってる訳じゃないわよ! ちゃんと説明するから聞きなさい」


 そう言ってレミリアが説明を始める。説明の最中、パチュリーと三人の妖精メイドがロケットに二礼二拍手した後「アーメン」と言っていたり窓に向かって金を投げていたりと、それが気になって話半分にしか聞けなかったが聞いた限りで要約するとこんな感じだ。


 何でも永夜異変が終わった頃、藍から「かつて紫様が失敗した月への戦争に手を貸してほしい」と言われたそうだ。その際に色々と聞かされたらしいが、レミリアはそれを一蹴。だが月に都があることを知り、紫よりも先に月へ向かい、驚かす目的でロケットを作ろうと思い立つ(結局月に行くのなら紫の思惑通りではないか?)。


 そう思ってパチュリーに相談したが、不可能ではないし構造も考えるがが資材が足りないと言われた。ならば集めさせようと咲夜に命を出し、多量の資材を集める事に成功する。パチュリーも、資料集めの最中に分かった“推進力についての問題”も、可能性の高いものを見つけてロケットの完成を急いだそうだ。


雪「⋯⋯話は分かった。取り敢えず聞きたいのは、その推進力とは何だ?」


レミリア「あそこで霊夢が儀式みたいのやってるでしょう? パチュリーが言うには、霊夢に神降ろしをやってもらって、住吉さん? とかいう神の力を借りるらしいわよ」


 レミリアが指差した先を見ると、神降ろしをしている霊夢に加えて、それを眺めている魔理沙や咲夜、美鈴にフランまでもいる。


 それにしても住吉さんか⋯⋯何の神かは一瞬分からなかったが、恐らく上筒男神(うわつつのおのみこと)中筒男神(なかつつのおのみこと)底筒男神(そこつつのおのみこと)の航海の神である三神の事だろう。成る程。天辺の注連縄などは、あのロケットを神の宿る器⋯⋯言ってしまえば“空飛ぶ神社”としているのだろう。


 そこにパチュリーの魔法の力を加え、一応は飛ぶのだろう。だが一つ言わせてほしい⋯⋯これで本当に月に向かうのか?


レミリア「言っておくけど、竹林の医者にも「ほぼ完璧」っていうお墨付きも戴いてるわよ。隣にいた小生意気な兎娘は笑ってたけどね」


雪「永琳が、完璧だと言ったのか⋯⋯?」


 嘘だろう永琳。あの古代都市を発展させた叡智はどこに置いてきた? 俺が間違っているのか?


パチュリー「常人なら困惑するでしょうけど、ちゃんと飛ぶ様に緻密な設計をしてるのよ? 形だって三神の力が発揮出来る様にああいう風に作ってるんだから」


 するとロケットに参拝していたパチュリーが声を掛けてくる。パチュリーの話を聞いても、やはり通常のロケットを知っている俺にとっては違和感しかないな。


雪「それで、俺を呼んだ理由は何だ? 発射の瞬間でも見届けてれば良いのか?」


レミリア「違うわ。月の戦争の話を持ち掛けてきたあの狐が話してたのだけど雪、貴方⋯⋯月に行ったことがあるらし「帰らせてもらう!」ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!」


雪「断る! 俺は嫌だぞこんな異物に乗るのは! 命の危機を感じる!」


レミリア「そんな感情的になるほど嫌なの!?」


雪「当たり前だ!」


 何でまともに飛びそうにもない異物に好きで乗らなければならないんだ! 絶対空中分解を起こすぞ! せめて専門家の太鼓判を貰ってこい! 絶対に貰えるとは思えんがな!


パチュリー「⋯⋯雪が来てくれないと、月で大変な事になっちゃうかもしれないわね」


雪「⋯⋯何が言いたい」


パチュリー「雪が来てくれればもし見つかっても話が出来るけど、来てくれないなら見つかったときに捕まっちゃうかもしれないわ。そのまま研究材料にされて⋯⋯死んじゃうかも」


 つまりは護衛役やってくれという事じゃないか。しかも月の連中ならやりかねない事を⋯⋯っていうかレミリア、こんな話を信じるな。何で涙目になっているんだ。


レミリア「そ、そうよ。私達死んじゃうかもしれないのに雪は見捨てるというの?」


雪「涙声で言っても説得力が無いぞレミリア⋯⋯はぁ、本当に飛べるんだろうな」


パチュリー「それは保証するわ」


雪「はぁ⋯⋯一つ貸しだぞ」


 結局、俺は断り切れずにこの異物に乗り込む事となった。乗務員は紅魔館関係者のレミリア、咲夜、妖精メイド三人。動力担当として霊夢と、いつの間にかいた魔理沙。そして護衛役の俺だ。パチュリーは外部ナビゲーターで地上に残るらしい。おい、体良く地上に残っただけじゃないか?


 中に入ると咲夜の能力で空間を弄っているのか外観よりもずっと広かった。冷暖房や水道に加え、リビング風の部屋に寝室、キッチンまで完備されている。外に持ってけば家として機能しそうだな。ちなみに当たり前だが宇宙服なんてものは見つからなかった。


 暫く中で待っているとガタガタと機体が揺れ始める。窓から外を覗くと、妖精メイド達が綱を引っ張って天井を開いているらしかった。ロケット発射用に図書館を改造したのだろうか。


 というかレミリア。お前の被っている防災頭巾の様なそれは何だ。失敗してもそれで防げる訳がないし、何よりこの中で一番頑丈なのはお前だろう。


 そして遂に、ロケットは紅魔館の屋根を抜け空に浮かぶ月を目指して飛び始めた。暫く警戒してたが、どうやら空中分解なんて漫画みたいな事はおきなかったみたいだ。


「⋯⋯無事発射したか」


 はあ、全く⋯⋯何でこんな疲れなければいかないんだ⋯⋯。


「だがまあ⋯⋯アイツらと会えるならまだ良いのか⋯⋯?」


 俺はそんな事を呟きながら、徐々に遠くなっていく地上を窓から眺めていた。

 はいどーも、作者の蛸夜鬼です。GWに入りましたね。皆様はどう過ごすおつもりでしょうか? 私は家でダラダラとするつもりですね。


 はい、ということで儚月抄編始まりました。やっとですよやっと。今回のお話書いてから数週間経ってますからね。ようやく投稿出来ました。


 次回は月に到着してからのお話になりますね。今の今まで出てこなかった月の住人の一人を出そうと思ってます。


 それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!

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