プロローグ ~転生~
?「っ⋯⋯う⋯⋯?」
気付くと、俺は見たこともない森の中で倒れていた。何でこんな場所に倒れているんだ?
辺りを見渡すが、木、木、木⋯⋯微かに木が揺れる音が妙に心を苛立たせた。
⋯⋯さて、状況を整理しよう。そう思った俺は深呼吸をして心を落ち着かせる。
まずは自分の服装だ。白い和服に水色の羽織。灰色の袴に足袋と草履という、現代では変な目で見られそうな服を着ている⋯⋯そんな事を考えながら確認していた所で問題が生じた。
?「⋯⋯尻尾?」
俺の腰⋯⋯尾骨辺りから白い毛皮を持つ、狐の尻尾が生えていた。嫌な予感がして恐る恐る頭を触ると狐の耳の様なものまで生えている。
確認の結果⋯⋯俺は人間をやめた様だ。
⋯⋯色々とツッコみたいが、次に身体の感覚だ。
?「あー、あー。アメンボ赤いなあいうえお」
声、少し低い気がするが問題なく発声出来る。触覚、全く持って問題なし。痛覚⋯⋯頬を思いっ切り引っ張る⋯⋯痛い、問題なし。嗅覚⋯⋯確認のしようがない。まあ、大丈夫だろう。
そして次に記憶の異常⋯⋯を、確認したところで再び問題が生じる。
?「俺の名前って⋯⋯何だったか?」
俺の名前を思い出す事が出来ないのだ。それだけじゃない。家族、友人、そしてあらゆる思い出⋯⋯何も分からなくなっていた。
?「どうしてだ、どうしてなんだ?!」
俺は頭をガリガリと掻きながら何とか思い出そうと記憶を探る。しかし、その記憶が最初から無かったかの様に何も思い出せない。それでも思い出そうとしていると、懐から何かがパサリと落ちた。
それは─────手紙。
俺は手紙を拾い、書かれている内容を確認する。それはこんな内容だった。
『初めましてだな、転生者よ。我は貴様の世界の神だ。さて、先程の言葉通り貴様は転生した。実は此方のミスで命の灯火⋯⋯所謂寿命を消した。死の宣告をしてしまったのだ。
その詫びとして貴様を転生させた。但し、思い出の記憶が残っていると不都合があるので消させてもらったのを許して頂きたい。
貴様が転生した世界は“東方project”と呼ばれている。妖怪や神が存在する世界の遙か古代だ。そして貴様の種族は“白狐”。伏見稲荷大社の倉稲魂命の使いとして有名だろう。我の独断で少し存在を弄らしてもらい、人間以上に強く寿命は無限大にさせてもらった。但し寿命で死なないだけで命に関わる怪我では命を落とすので忘れぬように。
更にその世界には“能力”という力がある。貴様には『氷を司る程度の能力』を授けた。
水、氷、冷気、凍結。氷に関するもの全てを操り、この世のありとあらゆるものを凍らせる事が可能だ。それと能力とは別で幻術、変化、狐火が使えるぞ。
さて、長くなってしまったな。それでは第二の人生⋯⋯いや、狐生か。存分に楽しむと良い。
P.S 世界征服等と馬鹿な事をしたら存在を消滅させるからな』
⋯⋯転生? 俺が、この神とやらの勝手で? 納得がいかない、いかないが⋯⋯俺にはどうする事も出来ないか⋯⋯。
?「さて、これからどうするか」
こうして俺は、白狐として不安しかない狐生を歩む事になった。さてさて、どんな事が起きるやら⋯⋯。
初めましての方は初めまして。それ以外の方はどーも、作者の蛸夜鬼です。
初めて投稿させて頂いたプロローグ。いかがだったでしょうか? もし面白いと感じてくれたならとっても励みになります!
さて、この『東方 白狐伝』は1週間に一度のペースで投稿させて頂きます。私は学生なのでテスト期間中は難しい場合もありますが、基本的にこのペースを守っていこうかと。
え~⋯⋯はい! 取り敢えずご報告はこれで終わりです。それでは次回を楽しみに待ってて下さい! それでは!