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デッド・オア・キス  作者: 夕凪渚
2章 メリエース大陸〜第2のマギアビースト〜
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8話 『女性との出会い』

 翌日の朝。エーベルトとフュールはしばらくメリエース大陸へと滞在するため、リュックを背に背負って外に出ていた。リュックの中身は食料や飲料などさまざまなものが入っている。

  なかなか重いリュックをフュールは背負っているというのにびくともしていない。

――これがマギアビーストの力か――と思うエーベルトであった。


「2人とも、準備できたか?」


  そんなことを考えていたとき、後ろからヴェローザの声が聞こえてきた。相変わらずタバコを吸っている。


「はい、できました。兄貴は?」


「やつならメリエース大陸の地図を見てしてどこに飛ばすか確認している。まぁ大丈夫だろう」


  そう言ってタバコをふかす。

  エーベルトはメリエース大陸は聞いたことしかなく、実際に行ったことはない。何も分からない状態でテキトーな場所に飛ばされては困る。ライムントにはしっかりと確認してもらいたいところだ。


「あ、ひとつ言っておくことがあった」


  ヴェローザがタバコをふかしながら言う。


「なんです?」


「メリエース大陸に行った場合にはテレパシーは使えない」


「そうなんですか? どうしてです?」


「マギアゲールの影響で結界が張られているんだ。困ったもんだ」


言ってヴェローザはタバコをふかす。


「そうだっんですね。でもきついなそれ」


「ああ。ま、そういうことだから覚えておいてくれ」


  そう言ってたとき、ライムントがちょうど合流した。


  そして、ライムントは転移の魔法(マギア)を使った。すると、エーベルトとフュールの足元に光の輪ができる。


「じゃあ行ってきます。先生、兄貴」


「行ってくる」


  エーベルトとフュールがそう言うと、ヴェローザはタバコをふかしながらいった。


「ああ。頑張れよ。かなりの遠征調査だからな。必ず封印してこい」


  「分かりました! では」


  それを最後にエーベルトとフュールの姿が消えた。


「ふっ。頑張れよエーベルト」


 タバコをふかしながらそう言って、ヴェローザとライムントは校舎に戻っていった。



 ▲



  気がつくと、エーベルトとフュールは畑と畑の間の街道に倒れていた。なぜ倒れているかは分からなかった。


「⋯⋯どうやら転移成功したらしいな。フュールも大丈夫か?」


  エーベルトが聞くと、フュールがなにやら足首をさすっている。


「どうした? なんかあったのか?」

 

「どうやら足を挫いたみたい。おんぶして」


「⋯⋯は? おんぶ?」


  いきなり言われ戸惑うエーベルト。しかしよくよく考えると、普通の人間のエーベルトが挫いていないのに、封印されたとはいえ、まだ十分な身体能力を有しているフュールが挫くはずがない。エーベルトは半目を作りながら問うた。


「お前、嘘ついてないよな?」


「ついていない」


「⋯⋯本当か?」


「⋯⋯」


「なんでそこ黙る!?」


  その後、普通に立って歩いている姿を見ている限り嘘だったのだろう。


「さてフュール。どこに行くか」


  エーベルトが問うとフュールは無表情で考える仕草を見せた後、言った。


「とりあえず街に出てから考える」


  そう言ってフュールは先々に歩いていってしまった。初めての地でこう先々に行かれては困る。エーベルトも呼び止めながらあとを追った。


 しばらくすると、街に出た。その街はとてもお洒落な街で、レトロ感溢れる街並みだった。

  大きい街だけあって人も大勢いて、時々人と肩をぶつけそうになるくらいだ。


「なぁフュール。街に出たけど、どうするんだ?」


  すると、フュールは足を止め考え込んだ。数十秒考えた後、口を開いた。


「とりあえず宿を探す。エーベルトもついてきて」


  そう言って再び歩みを始める。


「お、おい。待てって」


  エーベルトも追おうとして、歩み進めた時だった。


「きゃっ!」


「いたっ!」


  前方から歩いてきた女性とぶつかってしまい、2人とも転倒してしまった。

  女性は年は同じくらいだが、胸も大きく、歩く度に揺れるほどで、しかも、顔も神か悪魔に愛されたとしか例えようのない端正な顔つきだった。

 エーベルトはそんな女性をいつまでもほっておくわけには行かないと思い手を差し伸べた。


「大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」


  すると女性はエーベルトの手を取り、立ち上がってから口を開いた。


「ええ、大丈夫よ。それよりあなたも大丈夫? 派手に転んでたわよ?」


「そ、そうですか? でも僕は大丈夫ですよ」


  エーベルトがそう言うと、女性は「ふふっ」と笑った。


「これも何かの縁ね。私はフェミリー。お詫びとしてはなんだけど家に来てちょうだい。ご馳走(ちそう)(おご)るわ」


「え、でもそんなお詫びだなんて。俺はただぶつかっただけで――」


  そう言ったとき、後から肩を叩かれた。振り返るとそこにはフュールが立っていた。


「なんだよ? 今は女性と話して――」


「うちのエーベルトがすみませんでした。でも私たち食事も寝所もあてが無かったので助かります」


  フュールはエーベルトの言葉を遮って女性――フェミリーに頭を下げた。


「お前は礼儀ってもんがないのか!?」


「この期に及んで礼儀など言ってられない。これはチャンス」


「お前なぁ⋯⋯」


  エーベルトは呆れたように息を吐いた。すると今度はフェミリーの方が口を開いた。


「ふふっ。面白い子たちね。いいわ。今日は泊まっていきなさい」


「え、でも⋯⋯」


「いいのよ。⋯⋯私ひとりで寂しいから話相手になってちょうだい?」


  そう言って大きな胸の谷間を寄せる仕草を見せてくる。なんて積極的な人なのだろう。エーベルトは頬を赤らめて慌てて視線を逸らした。


「じゃあ早速帰りましょ。あなたたちも行くわよ」


  そう言ってエーベルトたちが歩いて来た方へと歩みを進める。エーベルトとフュールは顔を見合わせてからあとについて行った。


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