11話 『フェミリーの正体』
「うーーん! いい朝だ!」
「眩しい」
翌日の朝。エーベルトとフュールは朝日を浴びるため家の外へ出ていた。今の日差しはひときわ強く、2人を眩しく照らしていた。
「あれ? フェミリーさんは?」
「フェミリーなら朝ご飯の支度」
フェミリーは家の中でせっせと朝ご飯の支度をしていた。
「なぁフュール。フェミリーさんで思い出したんだが」
エーベルトがそう言うとフュールが首を傾げた。
「なに?」
「その、フェミリーさんがマギアビーストだっていうことだよ。それをどうするんだ?」
エーベルトが言うと、フェミリーは無表情のまま言った。
「直接尋ねる。そうした方が早い」
「お前正気か? いきなり『マギアビーストですか?』なんて聞けるわけないだろ?」
「そんなストレートには聞かない。案がある」
「案?」
エーベルトが言うと、フュールはエーベルトの耳元で言った。
「昔の話を聞く。それで少しでも反応があれば一気に畳み掛ける」
「一気に畳み掛けるって⋯⋯大丈夫なのか?」
「大丈夫。あっちが本当にマギアビーストだったとしても私が打ち勝つ」
そう言って拳を作るフュール。確かにフュールはマギアビーストだ。もし、フェミリーがマギアビーストだとして、攻撃などしてきたらエーベルトには何も出来ない。そこでフュールがいれば心配ない。しかし、フュールは今魔力封印されているため、力が出せないはずなのだ。
「朝ご飯出来たわよー。って、日光浴でもしてた?」
と、突然後から声がし、振り返るとフェミリーがエプロン姿で立っていた。
「は、はい。すぐ行きます!」
そう言ってエーベルトとフュールは家の中へと戻っていった。
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「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさま」
エーベルトとフュールが同時に手を合わせて朝食を食べ終えた。
「2人ともやっぱりよく食べるわねぇ。結構量があったと思うんだけど」
フェミリーがそう言いながら食器を台所へ持っていく。エーベルトは苦笑した。
そう。さっき呼ばれて部屋に戻り、テーブルを見ると、そこには朝食とは思えないほどの量で彩られていたのだ。それをエーベルトとフュールがほとんど食べてしまった。
「は、はい。お腹すいてたので⋯⋯」
「私も」
2人がそう言うと、フェミリーは「へぇー」と言っていた。ちなみにフェミリーはあまり食べない方で、少し残していた。
「なぁフュール。畳み掛けるってどのタイミングでいくんだ?」
エーベルトはフェミリーが台所にいるのを見計らって小声でフュールに問う。
「自然な流れでいく。そうすれば上手くいくはず」
そう言って拳をぎゅっと作る。
「分かった。じゃあお前に任せるぞ」
それから数十分が経った。
今、リビングにはエーベルト、フュール、フェミリーの3人が揃っている。聞くのなら今がチャンスである。
「フェミリー」
「はい? なにかしらフュールちゃん?」
いきなり名前を呼ばれ、笑顔でフェミリーは返した。
「私とフェミリー、昔会ったことがある気がする」
フュールが言うと、フェミリーは怪訝そうにフュールに言った。
「⋯⋯昔? いつのことかしら? フュールちゃんとは会った記憶が無いわ」
「それは嘘。絶対に会っているはず。100年以上前に」
フュールが最後の言葉を言った瞬間、フェミリーの動きが止まった。――昨日と同じ不穏な空気を纏いながら。
「100年以上前? 何を言ってるのか全然分からないわよフュールちゃん」
言ってくすくすと笑う。フュールは一気に畳み掛けた。
「それはこっちのセリフ。100年以上前、会っているはず。マギアゲールで」
フュールが言うと、またもフェミリーの動きが止まって、眉をピクつかせた。明らかに動揺しているようだった。
「マ、マギアゲール? なんのことかしらねぇ⋯⋯」
「私はマギアゲールに参加していた。そう、兵器、マギアビーストとして」
「⋯⋯」
その言葉を言った瞬間またもフェミリーの動きが止まる。止まったかと思いきや、背中をぷるぷると震わせていた。
「⋯⋯フェミリー?」
フュールが怪訝な顔でフェミリーに尋ねると、突然フェミリーが大声で笑い出した。
「ふ、ははははは――ッ! バレてしまってはしょうがないわね!」
すると次の瞬間、フェミリーの体が発光しだし、辺りを光一面にしてしまった。
「く⋯⋯! ま、眩しい」
そして数十秒後、その光は無くなった。
「い、今のはいったい。って――」
エーベルトがそう言おうとしたが、言葉を詰まらせてしまった。理由は単純。それはフェミリーの装いにあった。
「フェミリーさん⋯⋯。その姿は⋯⋯」
「ふ、はははっ! これが私の魔装よ! どう? 似合ってるでしょ!?」
そう言って高々に笑うフェミリー。
そう。今の彼女の装いは金属質のパーツに身を包んだドレスの装いだったのだ。手には槍のような物を持っている。
「魔装⋯⋯! やっぱりマギアビースト」
フュールが警戒する様子で言った。
「そうよ! 私がマギアビーストのフェミリー・ローレイラよ!」
「⋯⋯本当にフェミリーさんが、マギアビースト?」
エーベルトがそう言うと、フェミリーはエーベルトの目の前まで歩いていき、顎をクイッと上げた。
「そうよぉ? どう? 今の気持ちは。ずっと探し求めてたんでしょ? 」
「は、はい。あ、そうだ」
そう言ってエーベルトはフェミリーから距離をとった。
「何をするつもりかしら? まさか魔力封印しようだなんて考えてないでしょうね?」
「⋯⋯!」
エーベルトは無言のまま肩をビクつかせた。理由は単純。図星だったからだ。
「どうやら図星だったみたいね。言っておくけど封印なんかさせないわよ?」
「なぜ、ですか?」
エーベルトは額に汗を垂らしながら聞いた。
「魔力封印がどうやるのかは知らないけど、そんなの勝手にさせるわけないじゃない。それか条件付きでさせてあげてもいいわよ?」
「条件?」
エーベルトよりも先にフュールが聞いた。
「そう条件。私と魔法で勝負して勝ったら魔力封印させてあげてもいいわよ? ただし負けたら――」
そこで一旦言葉を切り、ニヤリと唇の端を歪める。エーベルトは唾を飲み下した。
「――私の奴隷になってもらうわ」




