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デッド・オア・キス  作者: 夕凪渚
2章 メリエース大陸〜第2のマギアビースト〜
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10話 『強大な魔力』

「⋯⋯フェミリーさんから?」


  エーベルトは頬に汗を垂らしながら聞いた。


「そう。エーベルトがマギアビーストの話をしたとき、感じた」


「マギアビーストの話⋯⋯ああ! あの時か」


  そう。エーベルトが何の調査をフェミリーから聞かれたとき、マギアビーストと言ったら突然歩みを止めて険しい空気を纏っていたのだ。その時の不穏な空気をフュールは感じ取っていた。


「それで、お前は何が言いたいんだ?」


「そんなの決まってる。フェミリーが――」


  そう言おうとした時だった。


「コソコソと何の話をしているのかしら? 私が何だって?」


  突然、後からフュールの肩をポンと叩き、フェミリーが割り込んできた。それを見てエーベルトとフュールは驚いた様子を見せた。


「あ、いや、さっきのご飯美味しかったなって⋯⋯」

 

  言って後頭部をぽりぽりとかくエーベルト。苦し紛れの言い分だった。しかし。


「あらそう! それは嬉しいわね! さ、お風呂が出来てるわよ! 誰が先に入る?」


  エーベルトの言い分をそのまま飲み込み、フェミリーは鼻歌を歌いながらどこかへ行ってしまった。


「⋯⋯ふぅ、危なかったな」


「⋯⋯」


  エーベルトが言うも、フュールはじっとフェミリーの方を見たまま答えなかった。




 ▲




「あー⋯⋯疲れが取れるー」


  風呂の湯船に浸かりながらエーベルトはそんなことを呟いた。あの後、どっちが先に風呂に入るかエーベルトとフュールで相談し、エーベルトが先に入ることになった。今ごろ女子同士でガールズトークしている所だろう。


「にしてもフュールのあの言葉の意味⋯⋯」


  そう。先ほどフュールがフェミリーから強力な魔力が感じられると言っていた。その後、フュールは、エーベルトとフュールが話していた時も少し感じたと言っていた。


「まさかな⋯⋯」


  そう言ったとき、風呂のドアがガラガラと音を立てて開かれた。


「エーベルト。体洗ってあげる」


「ちょフュールさん!? お前なにやってんだ!?」


  いきなりフュールがタオルを巻いて現れて、椅子に座れと合図してくる。タオルを巻いてるといえ、白いきれいな太ももも出ているし、胸もタオル1枚でしか巻いていない、目のやり場に困る。


「だから体を洗ってあげる。いや、洗いっこしよ」


「だから何言ってんだお前は!? いいから出てけ!」


「せっかくエーベルトと洗いっこできると思ったのに」


  そう言ってフュールは風呂から出ていった。その顔は無表情だったが、どこか残念そうだった。



  エーベルトは風呂から上がりリビングでくつろいでいた。ちなみにフュールもエーベルトが上がったあと入浴し、今は上がってエーベルトに腕を絡ませている。


「そういえば! 勢いであなたたちを連れてきちゃっだけど、名前聞いてなかったわ!」


「確かにそうでしたね。俺の名前はエーベルトです」


「私はフュール」


  エーベルトに続き、フュールも自己紹介すると、フェミリーは満足そうに頷いた。


「エーベルト君と、フュールちゃんね! よく覚えておくわ!」


「ちなみに私とエーベルトはこういう関係」


  そう言ってフュールはエーベルトの頬にキスをした。


「ちょっと!? いきなり何すんの!?」


  いきなりキスをされたエーベルトは声を裏返し、悲鳴を上げた。それを見たフェミリーはくすくすと笑った。


「いいわねぇ2人とも! 私もエーベルト君とそういう関係になりたいわ〜」


「じ、冗談はよしてください!」


  エーベルトが恥ずかしそうに頬を赤く染め、視線を逸らすと、フェミリーは「冗談よ」と言っておかしそうに笑っていた。

  フェミリーは冗談で言っていても、思春期真っ只中のエーベルトにとってはかなりドキッとするものだ。


「さてと⋯⋯そろそろ寝ようかな」


  そう言ってエーベルトは立ち上がった。それと同じようにフュールも立ち上がる。


「ん? どうしたフュール」


「別に」


  そう言って無表情を貫くフュール。そこでエーベルトは半目を作った。


「⋯⋯お前まさか一緒に寝ようだなんて考えてないよな?」


「考えてない」


「本当か?」


「⋯⋯」


「だからなんでそこ黙る!?」


  本日2度目のやりとりをしたところで、フェミリーから声が上がった。


「あなたたちの寝所は2階の部屋よ。それと部屋が1つしかないから2人一緒の部屋で――」


「無理です!!」


  フェミリーの言葉を遮ってまでエーベルトは断った。それも当然。フュールという生粋の変態と一緒に寝るなんて自殺行為ほかならない。


「あら? そういう関係じゃなかったの?」


  フェミリーが首を傾げる。


「いや、違いま――」


「フェミリー、おやすみなさい。また明日」


「ちょっ!? 何すんだよ!?」


  フュールはエーベルトの言葉を遮り、エーベルトに腕を絡ませながら2階へ上がっていった。



 ▲



「それは本当なのか?」


  フェミリー家2階。扉を締め切り、エーベルトとフュールは敷布団の上で座りながら下に聞こえないように話していた。


「本当。昔に会ったことがあるはず」


  「会ったことがあるって⋯⋯マギアゲールが起こったのは100年以上前だぞ?」


  エーベルトが強調した言い方をすると、フュールはこくんと頷いた。


「実際私は100年以上前に戦争に参加していた。そこで何人か猛威を奮っている者がいたはず」


「それがマギアビーストで――フェミリーさんだと言いたいのか?」


  エーベルトが言うと、フュールは首肯した。


「確かに。それも無くはないかもしれないな。でも、まさかな⋯⋯」


「そのまさか。フェミリーはマギアビースト」


  フュールが強い口調で断定した。エーベルトとしてはまだフェミリーがマギアビーストという確証を得られていなかった。しかし、マギアビースト本人のフュールが言うのであれば一気に信用度は上がる。


「⋯⋯まぁ今日は寝よう。明日また考えよう」


  そう言ってエーベルトは部屋の電気をパチンと消した。




「⋯⋯?」


  電気を消してから数十分後。エーベルトはしっかり眠りについたはずだったが、体の周りを何かがもぞもぞと動いていて目が覚めてしまった。エーベルトは気になって電気をつけた。


「⋯⋯ん? なんだ?って!」


「エーベルト寝てなきゃダメ。私の時間が有効に使えない」


  エーベルトが布団をめくると寝巻きの胸元を解き、エーベルトの体に寄り添うフュールがそこにはいた。


「なんだよ私の時間て!? いいからどけ! お前はそっちだろ、う、が!」


  そう言ってリズムよく、隣の布団へフュールを押し返す。すると、フュールはそのまま転がっていき、動かなくなった。――多分寝たのだろう。


「まったく⋯⋯。油断も隙もないやつだな⋯⋯」


  そう言って再び電気を消し、エーベルトは眠りに入った。


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