9話 『不穏な空気』
「あなたたち、食事も寝所もあてがないって言ってたけど、いったいどこから来たの?」
フェミリーの家までの帰路を歩きながらフェミリーが口を開いた。
「ヴァルエスト大陸から来ました。少し調査したいことがあって」
エーベルトが答えると、女性は驚いた顔をしていた。
「すごいわね! もしかして船とか使わずに魔法の転移で来たとか? それでも強大な魔力を有するんだけど」
「その通りです。魔法の転移できました」
「やっぱりね。やっぱ女の勘は鋭いわね」
そう言って指をパチンとならす。エーベルトは力なく苦笑した。
「あ、そうそう。その調査したいことってなんなの?」
エーベルトは答えようとしたが、1度止めた。マギアビーストの調査と言ってしまっていいのだろうか。そんな考えがエーベルトの頭に過ぎる。しばらく考えて、エーベルトは言った。
「マギアビーストの調査です。最近また出現したと聞いて来ました」
「⋯⋯」
エーベルトがそう言うとフェミリーが何も言わずに俯いて足を止めた。
「どうしたんですか?」
「なんでもないわ。ちょっと目にゴミがね。さ、行きましょう」
「は、はぁ⋯⋯」
一瞬だが明らかに目にゴミが入ったと思えない空気を纏っていたフェミリー。しかし、エーベルトは気にせずにあとをついていった。
そうこうしているうちに、フェミリーの家へとついた。フェミリーの家は一般的な大きさの家だった。中に入っても、物はあまり少なく、リビングにはソファとテレビとテーブルがひとつ置いてあるだけだった。
「さ、座って座って! 今お茶淹れるわね」
エーベルトとフュールは言われるままにソファへと腰をかけた。
エーベルトたちは寝所はとりあえず確保できた。問題はマギアビーストの封印だ。マギアビーストの居場所が分かれば早いのだが、居場所が分からないため1から自分で調べなければならない。
そう考えていたとき、お茶がテーブルに置かれた。飲んでみると、最初は苦いが後味はとても甘い味がしてとてもバランスの良いお茶だった。
「それにしてもすごいわね。まさかヴァルエストからの来客者なんて。招いたことが無かったから緊張するわ」
「いや、そんなに緊張しなくても、俺たちの方がしてますよ」
そう言ってエーベルトは苦笑する。
「あ、そろそろご飯の時間ね。ちょっと待っててちょうだい。今作るから」
そう言って水色のエプロンを身にまとい、食事の支度を始めた。食事の支度をしてから数十分後、テーブルには豪勢な食事で彩られていた。
「これ、全部フェミリーさんが作ったんですか!?」
「美味しそう」
エーベルトとフュールが驚きの表情を浮かべていると、フェミリーは胸を反らして言った。
「ふふーん。こう見えて料理は得意なの。好きなのから食べてちょうだい」
「そうなんですね! じゃあ早速いただきます!」
「いただきます」
2人が手を合わせたあと各自好きなものに手をつけ口に運ぶ。
「んー! 美味い!」
「美味しい」
2人が同時に言うと、フェミリーは照れくさそうに言った。
「あらそう? 嬉しいわ! どんどん食べてちょうだい!」
「はい!」
しばらくの間食べ続け、かなりの量で埋め尽くされていた料理はきれいになくなっていった。
「ふぅー! 食った食った!」
「おふたりさんよく食べるわね。あっという間に無くなったわ」
そう言われてエーベルトは少し照れくさくなって、頬をかいた。
「エーベルト。ちょっと来て」
と、突然後ろから肩を叩かれ、振り返るとフュールが立っていた。そして言われるままについて行き、リビングを出た所の廊下に出て、フェミリーの死角から話し始めた。
「どうしたんだ? まるでフェミリーさんに聞こえないようにするみたいにさ」
「その通り。フェミリーの話がある」
「ん? なんだ?」
エーベルトが言うと、フュールはフェミリーの方をちらちらと確認しながら話し始めた。
「フェミリーから強力な魔力を感じる」




