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Counter World  作者: touya
3/6

(一条籐哉②)

「それで籐哉。お前はまず何が知りたいのだ?」


「うーん。この世界にどうやってきたのか?かな」


「なるほど、そうでしょうね」


「アリーシャ、やっぱりその口調に戻るのか?アリーシャは今何歳なの?」


「うーん、ちょっと待ってね。18才かな」


「いやいやいや、ついてたらそんな簡単にその話し方にならないし」


「それよりも知りたいんだよね?」


「もちろんです^^;」


「正直、この世界に来た方法は見当がつかない」


「聞いた俺が悪かった」


「ただ、籐哉が見ていたという夢の世界はover wallだろうな」


「over wall?]


「うん」


「壁を越える?」


「私達の世界には心と体には別々の世界が存在されるとされている。心だけがその世界に行く事が出来るという現象を聞いた事があるわ。さっきの言葉そのままなんだけど、over wall 現象」


「俺のいる世界でいう死ぬ前に見える世界のことか。いや、そういう世界とは違うのか」


「心の世界とはいっても誰もが行ける場所じゃない」


「アリーシャのいうことが本当なら、俺、子供の頃からその世界に行っていたのか。それでどうしてアリーシャのいる世界に」


「トゥーヤ・アルフレートのせいなのかもしれないわね」


「トゥーヤ・アルフレート?」


「私が結婚するはずだった王様」


「ああ、幼き王様か。その王様、若くして王になったということは父親の突然死とか?」


「いえ、違うわ。父親を追放したのよ」


「息子が自分の父親を追放って。その理由は?」


「噂では、母親の為だとか聞いたわ」


「なるほど。あれだろ、王様が好き放題して、堕落して遊んでるうちに疲れきっていた王妃の方にも恋慕う人が出来てしまって、その現場を押さえられ、王妃がその座をおわれたとか」


「その通りよ。どの国でもある話かもしれないけど、籐哉すごいわね。そして、トゥーヤ、アルフレートの母親は王妃から奴隷にまで落とされた」


「恐怖政治だな」


「この国は王様よりも王妃を慕う人民が多いと聞いていたから、嫉妬も混じっていたのかも」


「それが本当の話なら、やりすぎだよな。寧ろ、王妃を貶めて、人民の恐怖を煽ったのか」


「それもあるかもね」


「そうだとしても、今の王に父親を追放する力があるのか?それとも王妃、王子派閥が強力だったとか?」


「内乱さえ起こらなかった」


「前準備でもしていたとか?」


「それも違う」


「俺に推測できるのはここまでだな」


「ドラゴンの加護が委譲されたの」


「ドラゴンって、さっきの話にあったこの国のドラゴンか?」


「実際に姿を現したのを見た人はいないらしいけど、ドラゴンの加護が前国王からトゥーアに移ったらしいの」


「この国は小さい国だと言っていたがそのドラゴンの加護とかいうものもこの国の生き残っている理由の一つでもありそうだな」


「その通りと言いたいけど、ドラゴンの加護がどういうものなのか、この国の人たちでさえ、知らない事なの」


「アリーシャは知ってるの?」


「永遠の命」


「いや、それは違うだろ。永遠の命があるなら一代限りの不死身の王様がまだいるんじゃないのか?」


「ドラゴンの意志によってのみ委譲される。ドラゴンの機嫌を損ねることをすると即剥奪ってことじゃない」


「やっぱり、永遠の命じゃないし」


「長く治める事が出来たらそれに近いこともあるんじゃない」


「まずない。人間だよ、人間。この世界も俺のいる世界も権力を握ってしまえば人には欲が出る。欲の形が違えど、その行動、有様を見て、ドラゴンがその1人の人間だけを加護しているならどのタイミングで委譲されるのかは分からないがドラゴンの思う人の王としての何かが失われたらアドバイスされることもなく、謝罪する間も許されず、即委譲だろ」


「そうでしょうね」


「俺の世界なら毎日王様が交代しているかもな。いや、それよりもドラゴンの怒りを買って人類が滅ぼされる可能性が高いかもしれないな」


「籐哉の住んでいる世界って、ここよりも酷い世界なの?」


「奴隷制度は俺の住んでいる国にはない。といっても、世界という視点で考えると貧しい国や独裁国家が存在する以上、そういうものが存在しているのかもしれない。でも、平和で豊かな俺の国でも家柄と権力というものは存在してる。庶民には気づかない、気づかせないって感じでうまく政策を取っていると思っていたけど、ここ最近は強行採決や独断実行、賄賂収賄と、国民の反感を煽るようなことばかりが目立つ。俺の国もこの先どうなっていくのか、正直分からない」


「一庶民である籐哉がそんな話をしたり、国家権力に対して、そんな発言して許されるの?」


「民主主義だからな、俺の国は。民が主の国・・・・・なはずなんだけど、どうして、家柄や権力が主だから、由々しき事態だな。って、俺は気付いたところで何かが変わるわけでもないけど」


「いえ、変わらないと!気付いたならそれは自分の人生の破滅を意味するとしてもせめて考えなさい。あなたはこれからドラゴンと対峙する人間なの。そのままじゃ、ドラゴンの巣窟に辿り着く前に死んでしまう」


「普通に山登りして、ここがドラゴンの巣窟です・・・到着しました・・・さあ、頑張りましょう♪の最短ルート攻略じゃないのかよ。まさか・・・・」


「はい、その通りです」


「アリーシャ、俺まだ何も言ってない」


「はい、正解です!」


「お約束があるんですね?」


「お約束?」


「辿り着く前に多くの試練が待ち構えている的な?」


「ああ、それはないです」


「遠い目をしてこっちを見るのはやめていただけますか、アリーシャさま」


「何を言っているんですか、籐哉さま」


「それで試練ルートがないとして、どうして、死んでしまうんですか?」


「ドラゴンに選ばれたものじゃないと、聖域に入った瞬間、魂を取られるといわれています。まあ、噂です噂」


「過去にそういうことがあったのですか?アリーシャさま」


「籐哉さま、わたしにどうして、さまをつけるのですか?私もさまをつけてしまうではないですか」


「そ・れ・は・で・す・ね・・・・俺に討ち死に迎えと、王妃になられるであろうお方がご命令なされるからです><」


「わ・た・く・し・・・・・その様な事は一言も口に致しておりませんが?」


「選択肢はないんだから、覚悟はしていたけど、俺、死ぬのか?」


「分からない」


「まぁ、いいけどさ」


「良くは無いでしょ!私が付いているのよ。簡単に死んでもらったら、この私の名に傷が付くわ」


「ああ、それは大丈夫だ。俺が失敗したら隠すか、どう誤魔化すか、考えておけばいいし」


「籐哉、選択肢はないって言ったけど、諦めるために行くんじゃないの?分かってる?」


「俺は俺に期待してないから、諦めるためでもいいんだけどさ」


「あなたにはあなたの世界で待ってる家族や恋人がいるんでしょ!それに私の初めての相手も今、目の前にいるのよ」


「だからかな」


「だから?」


「俺の両親。俺とは血の繋がりはないんだ。彼女も俺がいなくなれば、また別の男作ると思うし。本当に幸せな日々だったよ。それに甘えて、自分の好きな事ばかりをやっていたらこんな世界に飛ばされてきた」


「こんな世界。だよね、籐哉の住んでいる国の話を聞くと、そうかもしれないね」


「アリーシャ、さっきから喋り方がどんどん変わってるぞ」


「ええ、そうですわ。そうだよ。それが悪い。私だって、この部屋に覚悟を決めて、入った。しかし、そこにいたのは王様でもなく、一庶民のあなた。一庶民には一庶民の自由があるけど、王家の姫となると、政略結婚の駒として扱われる。それに納得できなくても、理解した振りをして、嫁がなきゃいけないの。あんたにその気持ちが分かる。そして、私は見ず知らずの一庶民のあんたに賭けたの。ええ、私の勝手な気持ちと勢いに任せたところもあったのかもしれないけど、初めての相手に選んだわ。家柄や権力?そういうものって不自由で縛り付けられて抜け出す事の出来ない呪いのような一面もあるのよ。一庶民のあんたには分からないだろうけど。私は庶民の生活に憧れて、庶民の生活に紛れてこっそりと暮らした事もあるのよ。その時友達になった子が奴隷として売られていく事になったときに私は正体を明かした。多くの人が私の前にひれ伏したわ。その友達も普通の生活が約束され、その場は凌げた。しかし、私には永遠の城外出禁止令が出された。その禁止令以外にこの国の王との結婚カードが出された。それとも弱小国とはいえ、神国といわれる国へ嫁げ。あなたでも、今ここにいる私の選択を間違いとは思わないわよね。何がどうなっているのか分からないのはこの私。このまま国に帰ることになれば、私は城の中でただ老いていくだけのやっかいもの。分かった。私はそういう人間」


「ごめんなさい」


「謝らなくていいから」


「それでも俺は俺には期待しない」


「それでも行くのよね?」


「それでも、才女の力には期待してもいいかな?」


「ふぇっ」


アリーシャが少し慌てる。


「アリーシャの為にも死なないように最善も尽くす」


籐哉の瞳が力強く、アリーシャに注がれる。


「しょうがないわね。わたくしに期待しなさい、一条籐哉」


「よろしくお願いします」


「ええ、頼まれてあげるわ。それからレイリア、もう出てきてもいいわよ」


「レイリア?」


ベランダ越しにアリーシャを警護していたと思われる人影が姿を見せた。

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