表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Counter World  作者: touya
2/6

(トゥーヤ・アルフレート①)


「over wallの中か」



前国王の不正を暴き、幼くして国王の座についた少年が納得したように暗闇の中で輝く虹色の世界の中で寝そべっている。


ここがドラゴンの巣窟であったなら我は苦しみも無く、果てることができただろうか?


星空の無いこの世界でいつまでもこうしていたいと思う事はわがままだろうか?


父上は今頃、面識のあった他国へと落ち延びる事が出来たであろうか?


そうなれば我が身は父上の謀略によって謀反人として、他諸国から討伐されるのだろうか?


何人もの愛人を囲い、国づくりを忘れ、すべてを部下や領主たちに任せきった。


それを原因にこの国では内乱、暴動が頻発した。


そして、母上も融資の相談役として招いていた商人の男と恋に落ち、奴隷の身分にまで落とされた。


今頃は何処を彷徨っているのだろう。


この身が王になれば母上の身分を戻す事もできるのではと思ったがそれを探す事も保護することも許されず、せめて、居場所だけでも掴めればいいのだが。


我には何一つない。


我には何一つ残らない。


我には何一つ変えられない。


我にはこの命さえ、ドラゴンの加護により、絶つ事が出来ない。


我が身の代わりとなるものがこの世界の理を創造してくれればいいのだがその様な願い届くわけもない。


(我加護の元に選ばれし王よ)


(そなたの願いは届いた)


(この世界の理をそのものに託す覚悟はあるか?)


「もしかして・・・・・・」


(お前を加護するものだ)


「我願い、聞き入れると」


(お前は別世界の理を壊すまでこの世界に戻る事が出来なくなるがそれで良いか?)


「代わりとなるものにより、この世界の理に変化が訪れてもですか?」


(そうだ。一つの世界だけに変化をもたらせても、それではもう一つの世界の扉は開く事が出来ない)


「母上の笑顔を取り戻す事が出来るならそれで構いません」


(取り戻せるかどうかは私の知るところにない)


「承知しています。私が勝手に思っているだけです」


(それでも良いのだな)


「はい、全身全霊を持って、我が身を捧げます」


(目を閉じよ)


目を閉じたトゥーヤは暖かな感覚をその身で感じていた。


次の瞬間、感じたことのない硬さを背中に感じた。


「ここが変革を起こさねばならぬ世界か」


自分の部屋と比べるまでも無く、四方八方が瞬時に見渡せる狭い空間。


背中に感じた硬さの原因はベッドに置かれていた何冊かの本のせいだった。


「どうやらこの部屋から変革、いや整理をしなければならぬようだ」


籐哉の部屋は本棚で囲まれている。


空いている空間にはノートパソコンを置く為の丸型のテーブル。


ゆったりと読書を楽しみ為のものだろうか。


セミダブルサイズのベッド。


その広さを利用して、ベッドには何冊かの本が準備されているように置かれていた。


「執事やメイドがいるような主ではないようだがよく考えれば、この状態を勝手に動かしてよいものだろうか」


悩んでいるトゥーヤ。


そして、前触れも無く、籐哉の部屋の扉が開く。


「籐哉、ご飯だって言ってるでしょう!いつまで本・・・・失礼しました」


開いたと思った扉が何事もなかったかのように閉じる。


「あの子は誰?籐哉の友達?見た事ないから最近知り合ったのかしら。だとしても、早朝に遊びに?もう一度確認してみるしかないわね」


そして、また扉が開く。


「短い間だと思うが世話になる」


籐哉よりは年下と窺える少年が頭を下げている。


東子は無言でトゥーヤを見たまま、動かない。


「すまないがそちらのご子息は我国の世界に飛ばされておる」


「じーっ」


「私の我ままに何も知らぬまま、同じように飛ばされ、困惑しておると思う」


「それでそれで」


「この世界の理を変えるために来た」


「この世界の理?」


「そのためにはこの世界の事を知らねばならない」


「それならあの子の部屋は丁度いいわね」


「どういうことだ」


「この部屋の棚の本は資料として向いていると思うわ」


「そうなのか。非常に助かる」


「その前にご飯を食べに下りてきなさい。話はそれからにしましょう」


「承知した」


「それから汗臭いその服をすべて脱いで、あっ、ついでにお風呂に入りなさい」


「これを脱げというのか。王家の証である」


「ここを借りたいのよね?主のいうことが聞けないなら出て行ってもらうけど」


「この国の作法に従うことにする」


痛いところを突かれ、トゥーヤが服を脱ぎだす。


「ここじゃなくて、いいから。とりあえず、付いて来なさい」


「承知した」


東子に連れられて、二階にある籐哉の部屋から一階にある風呂場に降りてゆくトゥーヤ。


籐哉の母である東子は別世界から来たトゥーヤを違和感無く、風呂場に案内し、蛇口や石鹸、シャワー、替えの下着や体を拭くためのタオルまで説明した。


「この恩は近いうちに返す」


「はいはい、いつでもいいからね。それじゃ、ごゆっくり」


そういうと風呂場の扉を閉めた。


そして、食事を終えて、出勤前に寛いでいた進に抱きつく。


「と、東子?」


「息子の部屋に別世界の人間がいたんだけど」


「またまた、出勤前にそういう話やめてくれよ。甘えてくれるのはうれしいけどさぁ」


「いやいやいや、今日は会社休んでください。有給まだ残っていたわよね?」


「急にどうしたんだ?」


「だから、本当に籐哉が王子さまのような少年と入れ替わったの!」


「そうかそうか。体調不良で休む事にするよ。お前を病院に連れて行かないとだ」


「そうじゃなくて。今その子はお風呂に入っている。出てきたら分かるから」


「王子さま?お風呂?出てくる?」


「うんうん」


「またまた(笑)籐哉が朝から風呂に入るのが珍しいから驚かそうとしているのか。それだったらそろそろ時間だし、仕事に行って来るぞ」


進が居間のドアを開けようとしたとき、見ず知らずの少年が入ってきた。


「良い風呂だった。食事の方も頂こうと思い、来たのだが」


「出来てるわよ。この椅子に座って」


「これはどのようにして使えばよいのか?」


「こっちの方が良かったかしら」


そういうと、東子は箸をフォークとスプーンに替えた。


「手間を掛けさせてすまない」


「いいのよ。しっかり食べてね」


「ありがたく頂く」


東子の流れるような対応に反して、進はその少年の一進一動を目で追いながらも呆然と立ち尽くしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ