英雄を継ぎし者の死
——英継が死んだ。
彼は勉強を人に教えるのが得意で“先生”なんて呼ばれていた。
昨日までこの教室で学んでいた友人が今日はもういない。
僕にはその事実を到底受け入れる事が出来なかった。
彼の学友は実に多様な反応を示していた。
僕と同じく、友の死に涙を流すもの。
彼がいなくなったらどうしたらいいのか分からないとわめくもの。
担任は人目もはばからず、1日中泣き続けていた。
彼が愛されていたことの証明であろう。
死んでくれてありがとうと告げるもの。
死ねばいいと思っていたが死んでしまうとは思わなかったというもの。
人として言ってはいけない事を言うものもいた。
しかし彼の態度が嫌われる原因となりうるのも一理あった。
事実、僕も君の厚かましい態度が嫌いだった。
3日後、彼の葬式は盛大に行われた。
彼は学校では知らない人はいなかったほどの有名人だったが、彼の交友関係は社会人にもあったようだ。
参列していた人は実に多岐にわたった。
普通の会社員から会社役員、省庁の官僚や医者。例をあげたらキリがない。
子供の様に声をあげて泣いていたものいれば、人生を狂わせやがってと悪態を放つものもいた。
仕事だけの関係だったら、いくら感情豊かでもこうはいかないだろう。
喪主は彼の両親が務めていた。
父は英国人の教職員で、母は日本人の編集者だった。
なるほど、彼の高い語学能力はそこから来ていたのか。
彼は棺桶の中で静かに眠っていた。
いまにも口から細かな語法や語彙が吐き出されそうだった。
とてもこれが死んでいるとは思えない。
なに三日も死んでいるのだよ。起きろよ。
僕は感情を言葉に乗せて彼に容赦なくぶつける。
すると不思議なことに彼に教わった事が頭によぎる。
“next stage has been dead for three days”
ああ、思い出した。
has been for A「死んだ状態がAの期間続いている」は、現在完了で継続を表す英語独特なもので、同様表現があと3つもあるから注意すべきだったね。
英継。彼の正式名称は
——最大手英語参考書、“次世代英語“
読んで頂きありがとうございました。
以上が英語参考書、“次世代英語“の葬式のお話でした。
このネタはTwitterのトレンドで「ネクストステージ 解散」というワードを見て思いついたものです。
作者は英語が得意ではないので間違いがあるかもしれません。
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