prologue
のんびり、更新していまっす。
感想とか頂けると有り難いです!
ん、そんなに気になるの?
そんなに面白いとは思わないけどなー。
でも、キミが聴きたいなら、どこから話そうか…。ちょっと長くなるかもだけど、いいのかな?
ふふ、分かったよ。
じゃあ、まずはあの話からだね。
あはは、懐かしいねー。
思い出して笑っちゃったよ。
えー?覚えてないの?
もう、ほんとキミは…。
はいはい、話しますよーだ。
始まりのそれはね‐‐‐
□ ■ □ ■ □ ■
商業大都市コリーンにある大陸支部に当たる通称ギルド、正式名称、依頼型斡旋所には、様々な依頼が来る。探し物や討伐といったピンからキリまであるわけだが…。
「女を拾ったんだが、どうしたらいい?」
紺のマントを着た、赤茶色の短髪の青年シド・ハイムはさも当たり前の様に言った。仕事は丁寧で、能力も高い、将来有望株と言われているが、私生活面がかなりガサツ(と言う噂)な男が脇に女の子を抱えてギルド窓口の前に居る。連れて来たのではなく、ホントに拾ったかのように、女の子を抱えているのである。周りの視線を見るにしても、どうやら周りも同じ事を目にし、思っているだろう。
ギルド内部は酒類も、提供するカウンターとテーブルがあり、仕事上がりにエールを呑む、冒険者は多い。いつもはワイワイがやがや五月蝿く、声が聞き取りづらい事もしばしば…。今日はちょっと五月蝿い日のようだ。
「申し訳ございません、もう一度おっしゃってもらえますか?」
「女を拾った、どうすればいい?」
聞き間違えでは無かったみたいだった。
「っっ!? こんのぉ、ばか! どこから攫ってきたのよ!!」
窓口嬢たるもの、如何なる場合もとりみだすべからず。なんてあるが、この際そんなものは投げ捨ててやる。自称ではなく、ギルドの看板嬢である、リリィーは人目もはばからず、つい叫んでしまった。
「攫ってなどない、拾った」
「女の子が道に落ちてる訳ないでしょ!!」
「落ちてた」
「だーかーらー! 例え落ちてても拾って来るな!」
「む、戻してこいばいいのか?」
脇に抱えた女の子をひょいと高く持ち上げる。
見たこともない服装で真っ黒な髪をもつ子だった。
「戻すな!!」
「…お前の話、意味わからん」
「ハッ倒してあげましょうか…?」
ふと、視線を感じ周りを見る、騒ぎすぎたせいか、ギルド内でも目立ってしまってようだ。静まり返ったギルド内部。誰かが置いたコップのコンという音が響いた。
リリィーは、さっと本来の仮面をつけ直し
「…コホン! シド・ハイムさん、奥の部屋にどうぞ。それと皆様、騒いでしまい申し訳ございません。つい、我を忘れてしまいました。以後気をつけます」
窓口用の笑顔で微笑む。徐々にではあるが興味を無くしたのか、またいつもの様に、所々で笑う声があがる。リリィーは、ため息をつき、隣の同僚に了承をもらいシドの後を追って部屋へと急いだ。
「で?説明してもらえます?」
部屋は、ソファーとテーブルしかない簡素な造りとなっていた。シドは抱えていた女の子を降ろす。
「飯でも食べようかと思ってな、裏道を通ったら、こいつが落ちてたから拾って、取り敢えずギルドにもってきてみたんだが?」
「…あー…頭が痛いわ。拾ってきたのは、いいとして…。なんでギルドなのかしらね?」
「…なんとなく?」
「…はぁ」
ある種の気まずい空気が流れる。シドは、拾った女の子の頭を猫を撫でるかのように撫でている訳で、それを見せつけられているリリィーは更に機嫌を悪くする。
気持ちがいいのか、満足そうな顔をする彼女だったが、長い沈黙を破ったのは名も知らぬ彼女本人だった。パチッと目を開き、二三度瞬きをしたあと、ぐるーっと見渡して、自分の頭を撫でる手に目が留まる。瞬間止まる世界、目尻軽く涙が貯まり、ぷるぷる震える体。そして…
「へ…」
「「へ?」」
「へんたーい!!!」
ガバっと起き上がった彼女は、叫びながら猛烈な平手打ちをシドに浴びせた。ビターン!!!
それが彼、シド・ハイムとのファーストコンタクトだった。