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オトコを見せてよお兄ちゃん!





バシロ「言われるまでもない(キリッ」

―前回より―


「……どうしたジゴール、何が可笑しい?」

「何が可笑しいってかァ?決まってんだろ!」

 勢い良く舞うように立ち上がったバシロは、芝居がかった動作で再びクワガタの化け物へ姿を変えつつ言い放ちます。

「ガキふん縛ってドヤ顔で殺してやるとか吐かしてるテメェがよ、滑稽でたまんねぇのよッ!」

「何?」

「考えてみりゃスゲー簡単な事だったんだよ……あぁ、漸く気付けたぜ……」

「……何にk――「何に気付いたってか?何に気付いたってそりゃあ……テメェみてーなビビリでヘタレの農薬モヤシ如きに、直の殺しをやり遂げる程の根性なぞあるはずがねぇって事にだよゥッ!」


 バシロの煽りがは的確であることは、それまで余裕の表情だったレーゲンがあからさまに顔をしかめ小刻みに震え出した様子からして明らかでした。その完璧なまでのエリート意識故に自分の手が汚れることを恐れていたレーゲンは、様々な悪事を計画し金品や人員を用意こそしますが、直接的な行動は全て手下達に任せっきりだったのです。


「……――それが、どうした?何と言おうと私はガキ共を――ぉぐっ!?」


 レーゲンの腹を突いたのは、湾曲した黒い棒状の物体でした。よく見ればそれは、縛られているロフィの額から伸びています。

 バシロの外骨格と同じような色合いと質感、光沢を有するそれこそ、ロフィの宿す刻印術の力―カブトムシの角でした。一矢報いんと力を振り絞ったロフィの一撃は強烈だったようで、レーゲンは腹を抱えてうずくまってしまいます。


「ッんの、ガキがぁ!」


 しかしながら、それはロフィにとって最悪の結果を招いてしまいます。不意打ちでタガの外れたレーゲンは、この糞餓鬼めもう許さんぞとばかりに拳銃を構えます。

 バシロは咄嗟にレーゲンを止めようとしましたが、 ゴロツキ共の執拗な妨害に阻止され思うように動けません。そして――




 レーゲンの放った二発の銃弾が、見事に二人の眉間を貫いてしまったのです。


「――ぁ……ぁ……」


 弟妹達の死を目の当たりにしたバシロはショックの余り絶句し、意識を失いつつありました。


「……は……ははっ……やっ、た……やって、やった……ィやってやったぞぉ!どうだジゴール、僕の勝ちだ!もう農薬モヤシなんて言わせない!言わせるものか!」


 一方のレーゲンは、まるで気が振れたかのように大声で喚き散らします――が、


「喜べティアーズ!僕にだってやればできたんだ!やれ臆病だ気弱だ女々しいだと僕を馬鹿にしていた親戚連中だってもう怖くない……って、ティアーズ?」


 何故でしょうか、ティアーズからの反応がまるでありません。何時も何よりレーゲンの事を気に掛けていた彼をして、普段ならこんな事など無いはずでした。


「おい、ティアーズ。どうした?喜べよ、あのジゴールがあそこまで――ッッ!?」


 ふと隣に目を遣った瞬間、レーゲンは言葉を失いました。隣に佇んだまま微動だにしないティアーズの――首から上がない(・・・・・・・)のです。切り落とされたのか、引きちぎられたのか、兎も角気付かぬ内に彼は絶命していたのです。


「……ティア……ーズ……なぜ、こんな…―ッッ!!」


 認めがたいティアーズの死を何とか受け入れようと必死になるレーゲンでしたが、サディスティックな現実はそんな彼に更なる追い撃ちをかけてきました。大勢でバシロの周囲を取り囲んでいた筈の手下達が、ティアーズと同じような姿で殺されているのです。

 今にも気が狂いそうになる状況でしたが、レーゲンはそれでもどうにか必死で正気を保とうとします。

「(落ち着け……落ち着くんだ僕……ここで取り乱したら奴の思う壺だ……)」

 レーゲンがホールの中央に目を遣ると、そこには確かに刻印術で姿を変えたバシロが佇んでいました。黒く鋭い外骨格で覆われた指先からは確かに血が滴り落ちており、彼がティアーズや手下達を殺したのは火を見るよりも明らかでした。


***


「(ッへ、何だよ……人殺しってなぁ存外簡単なんじゃねぇか……勢いに任せりゃこの程度、塵を払うようなもんだ……は……はは……クソッ……)」

 一方、怒りに身を任せレーゲンの手下達を惨殺したバシロは何とか気分を高揚させんと頑張りましたが、どうやっても目の前で兄弟達を殺された悲しみは癒えず、依然として彼の気分は暗いままでした。

「(は、は、クソがっ……何で……何であいつ等が……クソ―――ッ!?)」

 しかし暗い気分であっても、刻印術者としての彼の感覚は衰えていませんでした。何やら不穏な気配が自分を取り囲んでいる事を察知したバシロは辺りを見渡した後、ふと何処かへ連絡を入れているレーゲンの姿を目にしたのです。


***


 一方連絡を済ませたレーゲンの気分は、昨期ほどと打って変わって晴れ渡っていました。

「待ってろよジゴール……僕の秘策でお前に地獄を見せてやる」

 得意げな眼差しでそう言うレーゲンの手には、掌サイズのリモコンらしきものが握られていました。彼の考える"秘策"とは一体何なのでしょうか?


―同時刻・駐車場―


 一方、場所は変わって屋外駐車場。研究室から離れた場所に一台の白いワゴン車が留まっていました。

 中に乗っているのは細身の若い男と体格の良い年配の男の二人組でした。種族はそれぞれ若い方が黒豹系禽獣種で、年配の方が霊長種のようです。

「ふぅ……思わぬ所で手こずって出遅れたが、何とか間に合ったっぽいな……」

「そうだな。まさかあそこの門が閉まっているとは、計算外だったが……これで行ける」

暗躍する影の正体とは!?

次回、切り札を発動したレーゲンだが……

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