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絆と家族と遥かな夢





バシロの真意とは……

―前回より―


「……どういう意味だ?」

 必死に落ち着きを取り戻した慎一は言いました。

「そのままの意味だ。お前にゃ悪いが、俺達三人は家を継がねぇ……」

「……そうか……そうなのか……」

「本当、すまねぇと思ってる。こんなん裏切りだよな……だが、決めたんだ……」

「……」

「……怨むなとは言わねぇ……怒るなってのも贅沢だ……だがせめて、引き留めたりはしねぇでくれ……」

 胸中で渦巻く罪悪感を吐き出すように、バシロはひたすら謝罪し許しを請い続けます。

 しかし慎一はそんなバシロを咎めるでもなく、穏やかな表情で優しい言葉を投げかけます。

「馬鹿はよせよ、らしくないな。何故僕がお前の決めたことに一々口出ししたり、引き留めなきゃならないんだ?それがお前の意識で筋の通った理由があるなら、僕はそれを否定する権利なんて持たないよ。お前はお前の思うままに生きて戦えばいい。僕はそれを咎めないし、ましてお前を怨んだりなんかしないからさ」

「そう、か……すまねぇな、慎一……」

「だから謝るなよ。僕はお前の決断を否定しない。それで、就職と進学どっちにするんだ?まぁ、お前ならどっちを選んでも上手くやりそうなもんだが」

「進学だ。実はもう北エレモス理科大学をAO入試で受けててよ、あとは高校を卒業しちまえば良いって話なんだ」

「そうなのか。それはいい、最高じゃないか」

 慎一は不安げなバシロを心からの笑顔で応援しました。慎一の言葉に元気付けられたバシロは、大学でもその能力を余すところ無く発揮していきます。その活躍は勉強のみならずサークル活動や学園祭、更には学外にまで及び、刻印術者として慎一の手助けに向かう事もありました。

 そしてバシロは嘗て自分が刻印術で世話になった動物を研究する学者になりたいという夢を持つようになり、努力の結果特別待遇で大学院に進学。理学部で生命科学を学ぶ内にその研究意欲と探求心はどんどん高まっていき、やがてある大きな夢を抱くようになります。


 その夢とは『生命の人造』でした。


 数多くの研究を経て命の神秘や奇跡を目の当たりにしてきたバシロは、それへの理解を更に深めようと、自らの手で生命体を創りだすことを思い付いたのです。


 学者となり、母校の大学で動物学や生命科学を教えながらその研究に没頭していたバシロは、人員補充の為に研究チーム「ウボ・サトゥラ」を結成。同業者や学生を誘い入れ、どんどん力をつけていきました。情報が足りなければ調べ上げ、研究費が足りなくなればアルバイトをして稼ぎ、最終的には魔術師にも協力を仰いで実験を成功に導こうとします。


 ただ、だからといって研究が順調かというとそんなことはなく、むしろ計画は難航気味でした。

 生命の器たる細胞こそ化学合成でどうにか構築でき、細胞分裂も(成長したものは皆黒いウーズのようになってしまうものの)上手く行くのですが、どういう訳かすぐに死んでしまうのです。

 それには当然何かしらの理由があるようでしたが、その真相は誰にもわかりませんでした。

 かくして実験は迷走していくわけですが、シーズン3を読了した方ならばその先実験がどうなるかは既にお判りでしょう。

 よってこれより先は、シーズン3にて語られなかった側面を重点的に描写していきたいと思います。


―ある夜・研究室にて―


「ッフー……今日はこんなもんか。案外早く終わったな……今日は久々にゆっくりできるか」


 その日済ますべき作業を終えたバシロは、久々に外食しようと思い立ち研究室を後にしました。

 時刻は調度19:30。大学の廊下に人影はなく、あったとしてもまばらなものでした。


「(思えばここまで来るのも楽じゃなかったよなぁ。細胞の構成物質が解ってたのは良かったものの、そいつを一から人造しようなんざ無茶もいいところだっつーのに……まぁ、これも根底の理論は出来上がってたわけだが――ん?)」


 歩きながら感慨に耽っていたバシロの視界に、ふと見慣れた姿が映り混みました。


「(ん……ありゃケラスか?)おーい、ケラス」

「あら、バシロさん。お久しぶりです」

 掲示板の前に佇んでいたのは、全身を覆う紫の外骨格と角度によって色の変わる大きな単眼が特徴的なキマイラ型鬼頭種(複数種族の形質を持った鬼頭種の変異個体)の女、ケラス・モノトニンでした。

 ジゴール家に居候している若手調理師の彼女は、バシロの両親亡き今も自分の店を持つという夢のため日夜料理の研究に勤しんでいるのです(そしてその研究成果は大体バシロ達三人の食事になるのです)。

 その頃研究のため大学に寝泊まりしてばかりだったバシロはもうかれこれ二週間も家に戻っておらず、そろそろケラスの手料理目当てでも家に戻るべきかと思ってもいました。

「どうしたんだよ?お前がここに来るなんて珍しいじゃねぇか」

「栄養学科の先生からお話を聞いていたんです。今のままじゃまだまだ技量不足ですからね。もっと色々な事を学ばないと」

「ほう、そりゃスゲェな。今のままでも充分イケると思うんだが」

「まだまだですよ。それよりバシロさんこそ随分お早いみたいですけど、お仕事の方は?」

「大丈夫だ、データは纏めたし論文も完成。予定は狂っちまったがこれ以上無理に進めても進展はねぇだろうから、『人造有機生命素体の云々』とかそんな名前でもつけときゃ、遅くても来期にゃ学会で発表できる」

「では、今夜は?」

「勿論家に戻るぜ。大体五日ぐれぇは居るかな。まぁ正確な日数はスケジュールと相談しなきゃならんだろうが……」

「でもお家には戻ってくるんでしょう?それだけで充分ですよ、二人もきっと喜びますし」

「……そうだな。あれこれ考える前に、先ず戻って奴らに挨拶の一つでもしてやらねぇと」


 かくして実家に戻ったバシロはその後六日間に渡り家に滞在し、その間一家の団欒を楽しんだのでした。

次回、研究室にトラブルが!

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