第四章⑩
水色の館の、ある狭い部屋のベッドに、灰色のメイド服、そして灰色の髪のホウコは腰かけて、雨が降り続ける窓の外をぼんやりと眺めていた。
ホウコの隣には、純白のメイド服。
ホウコは、そのメイド服に手を伸ばした。
「ホウコ、まだ、」綾織の声がした。綾織はホウコの隣に腰かけ、そのドレスをホウコからほんの僅かに遠いベッドの上に移動させた。「まだ、分からないから、もう少し、待ってて、そうしたら魔女の洗濯屋さんが、洗ってくれるから」
ホウコは小さく頷いた。「ねぇ、結」
「なに?」
「結は素敵になったね」
「そうかな?」綾織は微笑む。
「まるでタイムマシーンに乗っているみたい、私の時間は止まってる、このメイド服を着たのが凄く昔なのは理解できるよ、でも、私とメイド服の関係は、なじんでないの、なじまないまま、灰色になった、早く白いメイド服に着替えたいよ、ごめんね、この話をするのは何年前から? でも、私はそう感じてから、一秒も経ってないの」
「もうすぐだから、洗濯が終わるまで待って」
「いくらでも待てるよ、」ホウコは優しく微笑んだ。「でも、早くしてね」
「また来るね」綾織はパーティ会場に向かった。