この世界の成り立ちについての小さなこと
私が産まれた水上という世界は、おそらく他の世界とは違っている。私は私を主体とした確かな世界を持っているし、君も君を主体とした世界を持っているはずだ。水上は私と君の世界に潤いを与え、色を淡くする。その淡さに多くの人々は気づいていない。きっと群青色の髪の魔女たちでさえ、気付いているのはごく僅かなものたちだけだろう。水上という世界が取り囲む、私と君の世界。淡い景色、淡いブルーの光、淡い笑顔の君、淡く進む、時間。その淡さはとても自然主義的であるが、自然に産まれたものではないことは明白だ。誰かによって作られた淡さ。この世界、至る場所に発見されるギミックからも、誰かが何かを企んでいることは明らかだ。魔法と伴った、仕掛け。工学と呼ぶには上品すぎ、遊びと呼ぶには目的が明白でない。企み、というのが適切か? そう、この世界には誰かが何かを企んだ形跡があるのだ。なんのために? さあ、それは分からない。しかし、その企みは、この世界が産まれるのと同時に、いや、もっと前から運動を続けていたのだろう。
だって。
あり得ないのだ。
この世界が成立することが。
水の上に施された世界。
その仕組みは、私が考えられる範疇を超えている。
幻想、という言葉に頼らなければ、私はこの世界を認められない。
でも幻想は確かに存在している。
信じなければいけないのだろうか?
信じるのなら、私はきっと、何かを見つけ出すために人生を捧げるだろう。
君は調子が悪そうだね。でも、それは君のせいじゃない。
この淡い世界のせいだ。
幻想のせいだ。
解けてなくなってしまう世界だとしても、誰かが企んだ幻想ならば。
君はどう思う?
君には小さなことだったとしても私は絶対に。
許せないって、思うんだ。