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第二章②

小田切はアンリエッタとの約束を反故した後、遇蹄荘にやってきた女性とモータボートに乗り込んだ。

 その女性の名前は冲方シノ。年は小田切よりも五つくらい上だが、体が華奢で髪の毛の色が明るいため世間一般の評価では十代に見えなくもない。しかしシノが小田切より年上であることには変わりない。しかし、シノにはイノセントという形容詞がよく似合う。

「急にアポが取れたの、だから腕なんて組んで強引に急いじゃったけど、怒らないでよ、でも、あの娘はきっと勘違いしたでしょうね、今度、様々なことを説明してホワイトラグーンを案内してあげなきゃね、あ、小田切君が誘って上げた方があの娘はきっと嬉しいだろうな」

 シノは小田切がステアリングを握る後ろでよく分からないことを言っていた。しかし、上機嫌なので小田切は適当に相槌を打つ。

「若いって、いいよねぇ」

 シノは過去の様々なことを思い出しているようだった。小田切は安全運転に集中していた。この辺りから水路の幅が急に狭くなるからだ。

「小田切君、なんか言ってもいいんじゃない?」

「え、」小田切は一度後ろを振り返った。「なんですか?」

 シノは助手席に場所を変えた。「お姉さんが、こう、気持ちを込めて、若いってイイよねぇって言ってるんだよ」

「ああ、」小田切はすぐに反応できた。「シノさんも若いですよ」

「うんうん、分かってるね、さすが、小田切君」シノは小田切の肩を三回叩いた。

「あ、一週間くらい前にシコちゃんから招待状が届きましたよ、誕生会の、もう七歳なんですね、早いなぁ、ついこの前まで赤ちゃんだったのに」

「やっぱり分かってないよ、小田切君、」シノは助手席のリクライニングを倒した。「シコの気持ちも、私の気持ちも」

「どういうことですか?」

「シコは私に何も言ってないの、つまり、秘密にしてたのよ、」シノは大きくて子供っぽい欠伸をした。「……で、誕生会は、どこでやるの?」

「あ、聞くんですか?」小田切は微笑んだ。

「当然よ、私はシコのなんなの?」

「確か、水上大の敬鳴館、三〇一号室」

「狭い部屋だわ、」シノは悩ましげに目元を抑える。「っていうか、誰に教室を確保してもらったのかしら、山崎? それも祖父江?」

「狭いと、なんなんです?」

「私は小田切君を信じてる」

「ええ、ちゃんとプレゼントを用意して行きますよ」

「そういうことじゃないってば、ああ、もう、小田切君との会話はかみ合わないな」そう言いながらもシノは微笑んでいた。それからシノは大きな目を瞑った。

「もう、十分くらいで着きますけど」

「十分したら起こして」



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