End of the world
『地球は、本日で終わります』
テレビから、総理大臣が震える声でそう告げたのを、僕は横目で見ていた。
「・・・ドッキリ、かしら?」
母親は首をかしげ、
「この総理大臣頭おかしいんじゃないの?」
妹はきゃらきゃら笑いながら罵倒する。
ほかの家でも、この話を本気にしてる人はあまり居ないみたいだ。
でも、「僕」は知っていた。
本当に、今日地球が終わってしまうってことを。
僕は母親に「出かけてくる」と告げ、家を出た。
目指すは親友の家だ。
僕の家から徒歩3分。
チャイムをならすと同時に扉が開いた。
「ね?僕の言ったとおりでしょ」
ニコニコ笑顔の親友、敬が出てきた。
敬は、予知能力を持っている。
けれど周りから「キチ×イ」って呼ばれてるし、誰も信用しない。
でも、僕だけは信じている。
だって、僕も超能力を持っているから。
「で?雅は可愛い妹ちゃんとか、偉大なお母様とかじゃなくて本当に俺でいいわけ?」
僕は無言で頷いた。
「・・ま、雅がそういうならお言葉に甘えさせてもらうよ。正直まだ逝きたくないし。」
僕の能力は「小さな奇跡」を起こすこと。
例えば、自分が交通事故にあったとする。
瀕死の重症。
でも、「生きたい」って願えば、一週間ぐらいで怪我をする前の体より元気になったりする。
けれど、世界中の人を救いたいって願っても叶わない。
せいぜい、自分を入れて2人が限界だ。
だから、多分地球が終わっても生きたいと願えば僕と敬ぐらいは生き残れるだろう。
僕は、僕を「気持ち悪い」と笑う妹や「生まれてこなきゃ良かったのに」と蔑む母親より、親友を守る。
「あと、30分で終わるね」
「ああ」
「あと、20分」
「うん」
「あと、10分」
「うん」
「あと、10秒」
「・・うん」
『敬と、生きたい』
僕は、奇跡に願った。
まばたきをした次の瞬間
「・・・なんなんだよ、これ」
僕は目の前の光景が信じられなかった。
「俺の、予知でみた光景と同じだ。なぁーんにもない」
そう、敬の言うとおり。
何もないんだ。
ついさっきまで僕等がいた敬の家も、3分歩けば着く僕の家も。
そして、「人間」も。
あるのは大地と、色々な物の残骸だけ。
僕たち、地球で二人きりになったようだ。