LOVEHOTEL
気がつくと僕たちはラブホテルの前に着いていた。
僕はアヤメを見た。
「ここでもNETは出来るわ」
完全に誘っている。
女の娘にここまでされて欲情を抑えられるほど僕は人格者ではない。
僕は諦めて彼女の誘いに乗ることのした。
「 ロコ Kagoshima 」
そんな名前のホテルだった。
中に入ると一番安い部屋を取った。
部屋に入るなり僕はベッドに寝転んだ。
「{パソコンないじゃないか?」
一応先制攻撃をかけてみる。
「これはそれよりも重要事項なの」
「君と寝ることが?」
「それも最優先事項よ」
「なぜ?」
綾女があなたを愛しているから」
「だって君は分身だろう?そうすることに意味があるとは思えないけどね」
「あら、素敵だと思わない?ドッペルゲンガーとSEXするなんて、奇跡的よ?」
「そうかもしれない、それが綾女の助けになるならなんでもするさ。不条理なことでもね」
そう言い終わった時にはアヤメはもう、服を脱ぎ始めていた。とても丁寧に。奇妙に洗練された動作だった。
結局僕たちは寝た。まるで現実感のないSEXだった。皮膚への感触も実体となんら変わりない。それでもそこには現実感というものが欠落していた。
ものの4分程度だったろうか?それでも僕は果てた。
「さあ、任務完了しました。軍曹?」
「あんがいそっけないのね?」
「僕くらいの年齢になるとそんなに情熱的なSEXはしなくなるものなんだ」
「ふーん」
「教えてあげましょうか?」
「何を」
「あたしがあなたと寝たことで綾女はしばらくめをさまさないわ」
「何故?」
それには答えず、アヤメはさっさと服を着て
「行きましょう」
といった。僕は部屋のドアを開けて彼女を先に送り出した。レディーファーストってやつだ。
僕らは再びタクシーを止め今度こそNETカフェを目指した。
そこで検索して得た情報は2つ。
ここ、鹿児島に教会がないということ。ここは古来より日本の神々の国なのだ。
そしてもうひとつ。
キリストが生まれた時産湯につかったというヨルダン川の水が聖水としてお土産やで売られていて、NETショッピングで買えるという事だった。
僕はとりあえず高瀬宅の住所で買っておいた。
こういうものは何が役立つか判らないからだ。
それを持って教会に行き改めて清めてもらえば完全だろう。
何故かわ判らないが直感的にそう思ったのだ。
「長崎に有名な教会があるわ」
となりで検索していたアヤメが声をかけてきた。
僕は手帳に住所と電話番号をメモした。
次の目的地は決まった。
それにしても、便利な時代になった。こんな極東の田舎町からでも世界中の情報が手に入る。10数年前には予想もつかなかったことだ。この際、時間は金塊よりも貴重だ。短時間で情報を入手できたことを僕はありがたく思った。