激しい雨
この物語は前作puer‐Jamの続編です。
前作を読みたい方は、砂さらら か Puer‐Jamで検索してみてください。又は以下のURLからどうぞ。
http://nw.ume-labo.com/dynamic/novel/a/n0493a/index.php
「想いでは悲しみに満ちている。」
僕はベッドに横になり、天井の一点を凝視していた。部屋の灯りは消さずに抗鬱剤と睡眠剤を過剰摂取して、お気に入りの映画音楽をヘッドホンで耳から注入していた。もちろん聴くためではない。意識を外界から遮断するためだ。
僕の脳裏には想いでが巡っていた。「愛」とのこと。杏とのこと。
そしてたった今、辛すぎる想いでを僕は産み出してしまったばかりだった。
とても悲しい出来事だった。しかし、それを犯したのは まぎれも無い僕自身なのだ。
杏。僕は今君を失おうとしている。いや既に失ってしまったのかもしれない。
もう、この街に僕のいるべき理由はない。
今の僕に出来ることはこの街を去ること。杏の世界から消えることだ。
僕はこの街から逃げ出すことを決めていた。
僕は卑怯者だ。自分の罪から逃げ出そうとしているのだ。でもそれが僕なのだ。
それに、僕には気がかりな人が居る。
綾女。彼女の傍に居たい。
それは切望と言って良かった
僕の中で彼女の存在はどんどん大きくなって行く一方だった。
僕は彼女のために出来ることを探していた。
残念なことに今、僕には何の力も無いのだ。それが悲しかった。
それでも僕は彼女への想いを消すことはできなかった。
彼女のの居る街へ行こう。一刻も早く。
その思いだけが僕の中で、幾度も幾度も繰り返されていた。
巡る悲しい想いでの中で、眠りは一向に訪れなかった。
そして夜はいつまでも空けることがないように思えた。
窓の外はいつのまにか冷たい雨が、いつからか激しく降り始めていた。
そしてその雨は僕の心の奥深くに、やはりとても冷たく降りしきっていたのだった。
もし読んでいただけたなら批評、批判、感想、採点などお寄せ下さい。必ず読みますのでお願いしますm(__)m