An attempt
この物語は前作puer‐Jamの続編です。
前作を読みたい方は、砂さらら か Puer‐Jamで検索してみてください。又は以下のURLからどうぞ。
http://nw.ume-labo.com/dynamic/novel/a/n0493a/index.php
「お客様にご案内申し上げます。大変お待たせいたしました。当機は間もなく着陸いたします。シートベルトの着用をもう一度ご確認下さいませ」
9月29日僕はスカイマーク・エアラインズBC301便のC28番席に座っていた。
エリスは… 綾女は自殺未遂をしたのだ。
僕のポストにダイレクトメール以外が来ることはまず無い。
見なれない白い封筒が届いていた。
差出人に見覚えは無かったが住所が鹿児島になっていたので、綾女の逗留先だと分かった。
封書が来るということは、綾女に何か起こったということだろう。
良い知らせではないと直感した。
僕は急いで封を切るとすぐさま読んだ。あれから、つまり もう一度連絡を取り合って欲しいとのメールの後、僅か1週間後のことだ。
僕は綾女に会いに行くことにした。急追3日の休みを取り飛行機の切符を取ったのだった。
鹿児島空港に着くと僕は花を買った。
白い百合の花束だ。変な花言葉は無いだろうな?
そう言うことをもっと知っておくべきだったかもしれない。
タクシーに乗り、手紙に書いてあった病院の名を運転手に告げた。
「希望ヶ丘病院」
するすると車は滑り出した
その病院は、空港から1時間30分ほどの所に在った
田舎にしては立派な病院だ。入院設備もととのっているらしい
。
僕は吉村綾女に面会希望を告げる。程なく病室番号を教えられた。
と言うことは峠は越したと言うことらしい。
部屋番号は「2046」どこかで聞いた番号だが思い出せなかった。
部屋に入ると付き添いに来ていた老夫婦が腰を挙げた。
僕は手紙を見せ自己紹介をした。
「遠い所をよう来らんさった」老婦人が言った。
「いいえ2時間ちょっとですよ。お構いなく」
そしてベッドに横たわる女性は点滴とマスクをされて眠っているようだった。
僕は呼んでみた。
「エリス」
綾女と呼ぶよりの好いと思ったのだ。
もう一度耳元で囁いてみる。
「エリス」
まだ薬が効いているのか意識はもどらないようだ。
僕は老夫婦からことの顛末を聞いた。
綾女はずいぶんと情緒不安定となっていて介護士の 尽力も空しく、どんどん悪化して行ったそうだ。
そしてついに綾女は抗鬱剤や安定剤。果ては風邪薬や眠剤を大量に飲んで、服薬自殺を図ったと言うことだった。
幸い命に別状は無かったが、夢遊病のように意味不明の行動を取るようになっているそうで。
時折まともになることも有るが、その時はいつも悲しげに
「オーウ オーウ」
と唸りつづけ涙を流し 徹、徹と叫ぶようにしているそうだ。
僕は悲しくなってしまった。と同時に、徹に怒りを感じてしまった。
もう彼女は十分苦しんだ。自分も障害を持つ身なのだ。もう成仏して忘れさせてやれば好いものを。少し恨みがましく思ってしまう。
突然エリス=綾女が目を覚まして、僕を見ている。
「オーウ?」
彼女は叫んだ。
僕のことを徹だと思ったらしい。
僕は言葉を紡げなかった。
錯乱しているのだろう。しかし情緒的には落ち着いているようだ。
比較的マトモな方のエリスだったのは幸いだった。
僕は黙っているしかなかった。
「徹お帰りずっと待っていたんだよ。どこにいってたの?」
エリスはポータブルPCに打ちこんだ。
僕は老夫婦を見やった。
「そうだと、言ってやってくんせぇ」婦人が懇願するように言う。
「遠いとても遠い所だよ。君に会いに戻ってきた。
君こそどうしたんだい? 薬をを飲みすぎたって言うじゃないか、なんでそんな馬鹿なことをしたんだい?」
「あなたを探していたから」
「僕はここに居る」
「安心したかい」
「徹、ずっと会いたかった。3年も待ったのよ」
「ごめん、色々忙しかったから。でももうこうして傍に居るよ」
「オーウ!」
彼女は肉声で言った。
僕は泣きながら彼女を抱きしめた。
他にどうする術も持たなかったからだ。
僕の涙は頬を伝いエリスの髪にポツリポツリとひとしずくづつ落ちた。
MISS.Mさんの企画協力。作詩提供により執筆しました。