肉体回収
俺はかつて最強だった。しかし、今は違う。肉体がバラバラになってしまったせいで、本領を発揮できないのだ。
なぜこうなったのか?それは、俺の息子が俺よりも強くなり、俺の身体をバラバラにしたからだ。つまり、息子のせいでこの惨状となったわけだ。
現在、この世界で最強なのは俺の息子だ。もはや俺は最強ではない。しかし、まだ諦めるつもりはない。俺は肉体を回収し、息子にリベンジを果たすつもりだ。負けるわけにはいかない。
俺がもう一度最強に戻りたい理由は、俺の嫁が“最強な男”を好むからだ。だからこそ、俺は再び最強の座を取り戻し、嫁を見返したい。このままでは、俺の嫁が息子のことを好きになってしまうかもしれない。それだけは絶対に許せない。息子だろうと誰にも嫁を渡すつもりはない。
さて、俺の現在の状況だが――頭、胴体、右腕、左腕、右脚、左脚がバラバラになっており、それらを回収しなくてはならない。幸い、思考はできるし視界もあるため、頭だけは無事なようだ。しかし、頭だけでは動けないのでどうすることもできない。もし地面が突然坂になれば、転がって移動できるかもしれないが、この世界でそんな都合のいいことが起こるとは思えない。
しかし、この世界には魔法がある。俺は魔法の力で自分の身体を引き寄せることが出来るのだ。が、身体がバラバラになってしまったため、本領を発揮することが出来ない。ゆっくりと俺はまず、胴体を引き寄せる。
「早くしなければ!」俺は焦る。息子のマザコンぶりは異常だ。昔からそうなのだ。手を繋ぐこともあたり前だし、キスもする。それも濃厚なやつだ。気持ち悪すぎる。俺がキスをしたい!もう何年も嫁とキスをしていない。俺はシャイな性格だからそんなことを平気で出来ないんだ。俺はただ最強なだけなんだ。
しばらくして、俺は胴体に加え、両脚と左腕を回収した。残るは右腕と左腕だけだ。そこに、突如嫁と息子が現れた。息子がテレポート能力を使ったのだろう。嫁は俺の右腕を、息子は左腕を持った。俺は返してもらえるものだと思った。しかし、嫁は俺の右腕を息子に渡した。息子は俺の両腕に最強の結界を張り、封じてしまった。その結界は、今の俺の力では解くことができないほど強力だった。
あれから千年が過ぎた。俺の肉体は死んだが、精神だけは生きている。俺は結界の中にある腕に意識を移した。しかし、この結界を解ける者は未だ現れない。
誰か、俺か俺の息子を超える強者が現れる日は来るのだろうか……?
終わり