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Rhode Island  作者: あきぐも
第1章 劣勢
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001:進水と就役

                   1

 1940年8月7日、サンフランシスコ造船所

 私の艦首から何かが割れる音がした。その小さな音の後に、山のような観衆から、割れんばかりの歓声が響く。

 私はそれに応えるように汽笛を目いっぱいにならす。同じタイミングで私の艦尾が海水に触れる。夏の日の海水はそれほど冷たくない。

 今日、私は母なる母胎(ドッグ)から大海原へと見送られた。これから私は母胎(ドッグ)から離れ、『軍艦』として就役するため、艤装工事を行われる。何もないこの甲板に様々な兵装が載っていくと思うと、これからが楽しみだ。

 全長273m、全幅37mの私は

                Rhode Island 

と命名された。



 進水式から数か月経ち、1941年10月1日、ようやく私の艤装工事が終わった。

 前に二基、後ろに一基の計六門の18インチ砲と、両舷に配備された5インチ両用砲。また敵航空機を撃ち落とすための、28㎜四連装機銃(シカゴピアノ)が多数搭載されている。それまでの標準型戦艦とは一線を画した艦影であった。私は合衆国海軍として最高峰の戦艦として建造されたのだ。

 

 そして10月17日。私にとって初めての航海である試運転に出発した。サンフランシスコ沖を全力で走る。記録された速度は、30.27ノット。これも合衆国の戦艦として最速である。合衆国の戦艦として最速、最強の称号を手に入れたようでとても誇らしかった。

 

 12月7日、18インチ砲の試射を行うため再びサンフランシスコ沖へと出港した。私は18インチ砲をすべて左舷に向け斉射を行う。

 とてつもない音が太平洋上に響く。砲弾がはるか遠くの水面に落ちる。この砲に耐えられる戦艦はこの世界に存在しない。いつか合衆国に仇なす敵に、この砲から発射されたSHSを命中させてやりたいものだ。

 試射の帰り、午後3時28分ごろに暗号化されていない通信が入る。

「真珠湾空襲さる。これは演習ではない。」

 真珠湾が攻撃されているという知らせだった。真珠湾には【ウェストバージニア】をはじめとした艦隊が停泊しているはず。それが壊滅でもしたら合衆国にとって大きな損失となる。

 いますぐにでも救援に行きたいという気持ちを抑え、私はサンフランシスコに到着した。


 12月8日、大統領が真珠湾への攻撃は大日本帝国によるもので、宣戦布告前に攻撃を行うという『だまし討ち』を行ったと発表。私は忌々しいジャップの空母部隊に必ずや一撃を入れてやると誓った。



 12月16日、私は屈辱的な大敗北の直後に、アメリカ合衆国の戦艦として就役した。

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