王弟殿下は今日も元気に真実の愛をお探しです
拝啓 お母様、私が仕えるお嬢様の婚約者である我が国の王弟エドガー・グレン・ハミルトン殿下は、今日も元気に真実の愛をお探しです。
「とうとう見つけたのだ。私の真実の愛を」
「おめでとうございます」
失礼、どうやら見つけられたようです。真実の愛が見つかったとのご報告は、これで三回目となります。不思議なことです。
ちなみに、述べられた祝辞は侍女である私、アデラ・オフリーによるものではありません。私の仕えるシャノン・アドラム侯爵令嬢によるものです。この祝辞も三回目です。不思議なことです。
「殿下の真実の愛はどのような方ですの?」
「うむ、ベティ・ワイズ子爵令嬢だ。先日学園内で道に迷っているところを助けたのがきっかけで知り合ってな」
お母様御存じでしょうか。今は十一月、入学した者も既に数か月過ごして学園には慣れ切った時期です。そして私が調べた限り、最近編入してきた生徒はおりません。
「ベティは実に可愛らしいのだ。とても元気で、喜怒哀楽がはっきりとしていて、声も通るし、くるくると子犬のように動き回る」
「あら、それは本当に子犬のように可愛らしい」
あの規律厳しい学園を卒業されたお母様には信じがたいでしょう。最近では淑女教育を修めないまま入学する生徒もいるようです。最近卒業した私でも信じられないので、もしかしたら今年運営方針が変わったばかりなのかもしれません。
「私と気が合う女性なのだから、きっとシャノンも仲良くなれると思うぞ」
「そうですか。いつかお会いできる日を楽しみにしておりますわ」
「おお、そう言ってくれるか。それでは近いうちに二人が会えるように席を設けよう」
「ありがとうございます」
ところでお母様、手紙の上の事とお見逃しください。私最近王室の王族教育にも疑問を抱いております。それと我が国の側室制度や妾制度の有無も確認したく思います。私の記憶ではこの周辺でその制度を有しているのは海の向こうのかの帝国だけだと思うのですが。
「さて、そろそろ頃合いだな。アドラム侯爵家へ来るのは久方ぶりで懐かしかったぞ」
「お時間いただきありがとうございました。お見送りいたします」
「うむ。次の茶会はまたいつも通り王宮で」
まだ年若くも優秀な陛下を支える王弟殿下もまた優秀で、民として臣下として誇らしいです。
ですが最近、殿下の背中を見ると腹の底からせりあがってくる言葉があるのです。使用人に聞いた、平民が使う少しはしたない言葉です。
お母様はご存じでしょうか? 平民の間では他人に迷惑をかけるほど夢見がちな方を表す言葉だそうです。
曰く『脳内お花畑野郎』と。
敬具
「アデラ」
「はい」
王弟殿下を無事にお見送りした後、そのままの態勢、そのままの微笑みでシャノン様が私に声を掛けます。この後に続く言葉はわかっています。何せ三回目。
「ベティ・ワイズ子爵令嬢はどんな方だったかしら?」
「早急に調べます」
まぁ実際調べるのは私ではありませんが。そういった専門の方に依頼するだけです。三回目の依頼です、ええ。
一回目は隣国からの留学生のエリアーヌ・オフレ伯爵令嬢。国を代表しての留学生ですから身柄も確かで優秀な庇護欲を誘う可愛らしい御令嬢でした。
学園を代表してお出迎えをした王弟殿下はそのまま案内役となり、よくよろける足をお持ちで上目遣いを多用されるオフレ伯爵令嬢に打ち抜かれ「私は真実の愛を見つけたようだ」とシャノン様に告げました。悪夢でした。
何が悲しくて尊敬していた王弟殿下があっさりと甘い罠に嵌り、敬愛しているお嬢様へ酷い言葉を言うところを目にしなければならなかったのでしょう。私の尊敬の念は紙のように薄くなり、対して敬愛の念は庇護欲と共に膨らみました。
ちなみにオフレ伯爵令嬢は真実の愛ではございませんでした。調査の結果、彼女は確かに身柄も確かで優秀で庇護欲を誘う可愛らしい御令嬢でしたが、同時に本当に驚くほど何故か異性の前でのみ足がよろけて上目遣いを多用される性分で、それにより隣国の尊い方々に疎まれた末の留学という事がわかりました。
それでも我が国の王弟殿下一筋となっていたらまた話は違ったのでしょうが、彼女は隣国に婚約者がいるにもかかわらず、我が国の某伯爵子息ですとか某商会子息ですとか某騎士団副長ですとかと夜を共にしたようでございました。何という行動力。
シャノン様がその調査結果をさりげなく王弟殿下の執務室の机の上に置いた翌日。王弟殿下は深い溜め息をつきながら「聞いてくれるかシャノン……」とシャノン様とお茶をしておりました。短い春でございました。ちなみにオフレ伯爵令嬢は我が国からも隣国からも姿が見えなくなったそうです。神隠しでしょうか、まぁ怖い。
二回目は我が国の王室御用達のゲイソン商会の御息女であるイヴリン嬢。後継者として王宮に出入りすることもあった彼女は、貴族子女にはない溌溂とした健康的で肉感的な魅力にあふれる女性でした。
シャノン様へのプレゼントをはじめ、何か物を頼む前に「ご入用かと」と王弟殿下の望むものを紹介するその商才と、紹介する際の自信に満ちた美しい笑みに打ち抜かれ「真実の愛に身分など関係なかったようだ」とシャノン様に告げました。頭痛と眩暈がしました。
ゲイソン商会はアドラム侯爵家も懇意にしている商会です。当然シャノン様もイヴリン嬢はご存じで、個人的にも好ましく信頼できる者だと思われていました。それがまさかのこの裏切り。しかも平民。真実の愛に身分など関係なくとも、現実の生活に身分はとても関係あるのです。
ところがイヴリン嬢も真実の愛ではございませんでした。というのも、王弟殿下に告げられた翌日、シャノン様が調査結果を待ちながらどう事態の収拾を図ろうかと考えていると、イヴリン嬢がアドラム侯爵家へ御用聞きと一緒に結婚の報告をしに来たのです。もちろん相手は同じ平民の商人です。色々と察した私達は、再び頭痛と眩暈がしたのと同時にいたたまれなくなりました。
一応念のために調査結果を確認すると、やはりイヴリン嬢が王弟殿下に何か誘引した事実はなく、ただただ真摯に仕事をしていたら王弟殿下が勝手に惚れ込んでしまっただけという悲しい事実がわかりました。わかりたくありませんでした。
シャノン様は急いで王弟殿下にお会いして事情をお伝えになりました。王弟殿下はしばし片手で顔を覆われ固まっておりましたが、諦めるように深い溜め息をつかれた後に「シャノンよ、少しお茶に付き合ってくれ……」とシャノン様をお茶にお誘いました。短い夢でございました。ちなみにイヴリン嬢は当たり前ですがこの辺りの事情を一切知らないまま、今日も元気に商会を盛り上げております。
そして三回目です。
「こちらをご覧ください」
「ありがとう」
シャノン様にお渡しした資料は、私も事前に目を通してあります。
ベティ・ワイズ子爵令嬢はなかなか王弟殿下にお似合いの『脳内お花畑野郎』でございました。
ワイズ子爵はかの帝国に嫁いだ妹がいるらしく、また、そちらとの交流も途切れることなく続いているようです。
どうやら帝国は今、空前の恋愛結婚ブームらしく、それを帝国にいる従姉妹様から聞いているベティ・ワイズ子爵令嬢も恋愛結婚にかぶれてしまったようです。
もちろん我が国にも恋愛からの結婚をされた貴族はおります。子爵令嬢が恋愛結婚に夢見ることは何も問題ございません。
問題は、帝国で流行っている恋愛結婚が身分差を無視したもので、さらに子爵令嬢が憧れているのも同じものという事です。
何でも、帝国の皇太子が長らく婚約者候補であった優秀な御令嬢方すべてに暇を出し、大した後ろ盾のない子爵令嬢を婚約者としたらしく。一体どんな真実が隠れているのでしょう。
ともあれ、皇太子の婚約模様に沸き立った帝国貴族達は、あぶれた元婚約者候補の御令嬢方の争奪戦に加えて憧れや不満を表に出しての婚約の解消・破棄・新たな婚約とついでに熟年離婚と大わらわだとか。
それを従姉妹様から熱く語られたベティ・ワイズ子爵令嬢は、我が国も政略なんて味気ないことはやめて愛を貫くべきよ! 王弟殿下もきっと決められた婚約に不満を抱いている筈よ! 何なら侯爵令嬢が我儘言って無理やり婚約させたんじゃない?! なんて酷い事、待っていて私が今救いに行きます! と熱く燃えて、王弟殿下への憧れを隠すことなく狙いを定めたようです。脳内お花畑というか、出来れば現実を直視してほしかったですし、今すぐ領地に引きこもっていただきたいです。
「……帝国の間者、というわけではないのね」
資料をお読みになったシャノン様は、安心されたように呟かれました。正直、間者などベティ・ワイズ子爵令嬢には力不足かと思います。
「王弟殿下への御通達はいつにされますか?」
今回は一回目と同じように資料をそっと置かれるのでしょうか。そう思いながら今後の予定をお尋ねすれば、「いいえ」とシャノン様が微笑みました。
「これなら問題ないわ」
「…………シャノン様?」
あるまじきことですが、私はシャノン様が言った言葉が理解出来ず、思わずお名前を口にしてしまいました。
「殿下一筋で、子爵家の優遇など考えず、他のどの国の間者でもなく、殿下の名を笠に着る事もない。今のところとはいえ、いいわ。色々ともう少し鍛えなければならないことは確かだけれど、よかったわ、ようやくよ」
シャノン様は大切な宝物のように資料をそっと撫でられました。
「ようやく、殿下のお心を慰める者が見つかったわ」
それは、その役目は、シャノン様なのでは。
ベティ・ワイズ子爵令嬢は、シャノン様にとって目障りな小石なのでは。
私は意味が解らず呆然としてしまいました。
確かにこの数年、王弟殿下はシャノン様の前で平然と「真実の愛を探そうと思う」等と口にされていました。実際に愛を見つけたと嬉しそうにご報告されていました。頭にワインが詰まってしまわれたのかと思っていました。
それでも、王弟殿下はシャノン様を婚約者として丁重に交流をとられていました。
ですから私は、ただ火遊びが過ぎるだけなのだと。尊敬する立派な王弟殿下は、実はどこにでもいる仕事はできるが人として幻滅する上司の類だったのだと思って。
シャノン様がこれ以上悲しまないように支え続けようと考えていたのですが、もしや。
そもそもシャノン様は、この婚約を厭うておられた?
「アデラ」
気が付くと、シャノン様が苦笑しながら私の前にお立ちになっていました。
「勘違いしないでね。私は殿下の婚約者であることを誇りに思っているし、これからも務め上げるつもりよ」
それは、それでは、シャノン様のお心が傷つくだけなのでは。
「ああ、そんな顔をしないで。綺麗な顔が台無しよ……そうね、貴方には今後も、いずれ私と共に王宮へ上がってもらうつもりなのだから、少し話をしましょうか」
シャノン様は私をソファーに座らせると、自らもその隣にお座りになりました。
といいいますか、今『いずれ私と共に王宮へ』と仰いました? 仰いました?! お母様、アデラはやりました!!
「アデラはいつから私付きになったかしら」
「八年前です。シャノン様が九歳、私が十二歳の時でした」
「そう。ではその時にはもう殿下と婚約を結んでいたわね。何故私が婚約者になったかは知っている?」
「アドラム侯爵領と強く連携をとる必要があったのが一つ、それと、王弟殿下が強く望まれたからと伺っております」
「その通りよ」
私の目をじっと見つめる薄い水色は、とても綺麗で静かな色でした。
「アデラは『ラメルカの悪夢』を覚えていて?」
「はい、十年前のラメルカ海岸で起きた海難事故ですよね」
死亡者が三人、怪我人が多数出た悲劇の船上園遊会。まだ年端もいかぬ子供達が海に投げ出されたこの事故は、あまりいい噂のなかった先王陛下から今の国王陛下に王位継承するきっかけになった事故です。
ただ事故が起きただけなら、いかに多数の貴族を巻き込んでいたとはいえ、王位継承を、という話にはならなかったでしょう。
『ラメルカの悪夢』は悲劇であり英雄譚なのです。
事故を起こしてしまった先王陛下は心身衰弱を起こし、まともに事後処理が出来ず、すべてを取り仕切ったのは園遊会に参加し自らも被害者であった当時第二王子の王弟殿下と、園遊会には参加していなかった当時第一王子の国王陛下、このお二人だったのです。
動揺している大人達を叱咤して活躍する王子二人に、多くの貴族は光を見たとのことで、王位継承を行う時にはほぼすべての貴族が大いに歓迎している状態だったそうです。
ちなみに、前王妃陛下とその御実家が園遊会を実質的に取り仕切っていたことから、前王妃もまた完全に隠居せざるを得ず、王宮の勢力図は大きく変わりました。
我が国は十年前に一度生まれ変わったようなものなのです。
「あれはね、様々な要因で起きた『事件』だったの。詳しくは言えないけど、それらが複雑に絡み合ってしまい、挙句、誰もが予想してなかった魚の異常行動と悪天候がぶつかった結果の事件」
突然の打ち明け話に体が強張ります。侯爵令嬢にして王弟殿下の婚約者であらせられるシャノン様。この方が『詳しくは言えない』として語られるという事はつまり、これは国の機密に近いものなのでは。
「私はあの時七歳で、海は凶暴で冷たかったわ」
そしてさらに落とされた驚愕の発言。
「落ちたのは伯爵家と男爵家の子女数人では?! アドラム侯爵家はそも参加されては……!」
「ええ、公式ではそうなった。けれど現実はそうではなかったの。あの園遊会には特定の派閥で中枢の重要なポストにいる貴族は、すべて後継者をつれて参加せざるを得ない状況に追い込まれていて、数人どころではない多くの子供が落ちたの」
完全なる国の暗部です。これを知ってしまったという事実とその内容に血の気が下がります。
シャノン様が海に落とされていた。一歩間違えば命を落とされていたかもしれないその過去が恐ろしく、手がみっともなくも震えてしまいました。
私の震えに気付かれたのか、シャノン様はそっと私の手を包むようにとってくださいました。
「驚かせてしまったわね。そんなつもりはなかったのだけれど、そろそろ、私と殿下の正しい関係を知ってほしかったのよ」
困ったような微笑みに手の震えが止まりました。
正しい関係とは、一体何なのでしょう。
「私はこのアドラムの長女として、他の子よりは早熟だったと思うわ。だから大人がすべて正しく素晴らしいものだなんて思っていなかったけれど、それでもいざとなったら助けてくれるのは大人だとも思っていた。けれどそうではなかった。私達子供を陥れたのも、陥れなくとも見捨てたのも大人で、あの地獄から助けてくださったのは殿下ただ一人だった」
語られる声は冷たいほど静かで落ち着いていて、それが何故か恐ろしく、シャノン様の心がいまだに温まっていないように感じました。それが私にはとても辛く、思わず不敬ながらも手を握り返してしまいました。
シャノン様は握られた手に驚きながらもくすぐったそうに笑われ、「ありがとう」といつもの柔らかな声に戻られました。
「必死だった海の上と違って、陸に着いてからは殿下はいつもの調子で明るく励ましてくださったの。だけどその手は震えていたわ。動かない方がいいだろうと一日待って、それでも誰も来なくて、なんとか人がいるところまで辿り着けば自分達は死亡した扱いになっていたのを知った時、ずっと微笑んでくださっていた殿下の顔から表情がごそりと落ちたのを覚えているわ」
普段からは想像もできない殿下が語られます。ですが、そういえば昔から伝え聞く殿下は話の中の通りでした。いえ、逆なのでしょう。この過去があったからこそ、優秀な王弟殿下の話が伝えられたのでしょう。
「そんな、そんな事が、あったのですね……あの、では、シャノン様は旦那様と奥様に対して、どんな……」
一つ気になったのはそこでした。アドラム侯爵家は私から見てもとても仲睦まじいご家族です。シャノン様と弟君のマイロ様を分け隔てなく愛し、過去に何か確執があったようには見えません。けれどシャノン様から見れば何か思うところがあるのでは、そう考えてしまいます。
「ほとんどの親世代は事件に巻き込まれた子供に謝罪し、後悔し、哀れみ、愛してくださっている。お父様もお母様もそう。だからもう一度愛することが出来た」
……つまらない心配でございました。きっと私では想像もつかない様々なやり取りがあっての今なのでしょう。
よかった、と心から思います。大変な思いをされたシャノン様の心が、傷ついたままではなく、ご両親への愛を持てるようにまで回復されたことに、本当に安堵します。
「……私の腹にはね、その時についた傷があるの。令嬢としてどうしようもない傷だわ。本来ならもう何処の家にも嫁ぐことは難しいでしょう。だから殿下は私を婚約者に選んでくださったの。君は何も悪くない、これは守り切れなかった王家の罪だ、と言って」
優しい方でしょう、ともう一つの事実を告げられ、私はまた体を強張らせてしまいます。強張らせて、自分の事ではないのに、泣いてしまいそうなほど心が痛みました。
体に傷。それは確かに令嬢として致命傷です。それを理由に婚約を渋られることもあると聞いております。
けれど、殿下は違った。だからこそ選ばれた。そのことに、シャノン様は深く感謝されているのでしょう。
…………いえ、待ってください。まさか、だから殿下はシャノン様ではなく『真実の愛』とやらを探しておられるのでは? あら? シャノン様何か騙されていませんか?
私の中で王弟殿下の評価が『素晴らしい王族でシャノン様の命の恩人』というものと『シャノン様に恩を売って好き勝手やってる性悪お花畑野郎』の極端な二択を行ったり来たりしております。うううん?
「アデラ、難しく考えないで」
私の迷いは顔に出ていたのか、くすくすと小鳥のような軽やかな声で笑われてしまいました。
「実はね、殿下が真実の愛を探すと言われる前に、私に想う人が出来たら教えてほしいと言われているの。全力で応援するから、と。だから多分だけれど、私が遠慮しないようにわざと大げさに愛を探されているのよ」
驚きました。まさか先にシャノン様にお心の自由を許可されていたとは。
…………いえ、待ってください。結局それもご自身が好きに動けるように許可を出されただけでは? ううん? シャノン様私もうわかりません。
「私は、あの日救われた私達は、その命と一生を殿下と陛下に捧げようと決めたの」
軽やかな笑顔でシャノン様は告げられます。その目もその声も、先ほどまでの冷たさや静けさなどではなく、熱く強く輝く誇りがあるように思えました。
「私達は国の手足ではなく、殿下と陛下の手足であり剣であり盾であることを選んだの。二度と悲劇を起こさないように。誰もが裏切りにあわず平穏な毎日を送れるように」
まるで物語のような高潔で尊い関係性は、けれど現実として存在すると、とても、とても重く悲しい関係性です。
あの事故、いえ、事件が起きなければ、陛下はまだ王太子として余裕をもって学ばれていたかもしれません。殿下は今よりももっと朗らかな調子で学園生活を謳歌していたかもしれません。そしてシャノン様は別の方と別の幸せを堪能していたのかもしれません。
けれど、そうはならなかったのです。
関わった誰もがまだ子供のまま大人にならざるを得なかった現実に、ひどく胸が締め付けられます。
「私では無理なの。私達はある意味共犯者のような関係だから、そこに安らぎをもたらすことが難しいのよ。私と殿下と陛下の願いは国の泰平、民の安寧。私達はそこへ目指す同志。必要があれば厳しくもする。けれど、私は殿下にこそ幸せになってほしい。殿下にこそ安らいでほしい。だから殿下が真実の愛を見つけて、それで心安らかに笑うことが出来るなら、私はその方に感謝し全霊でお守りするわ」
近すぎて、傷を思い出し過ぎて、想い一つで崩せない関係性だからこそ、そこに恋愛感情を置くことが出来なかった。だから。
貴族が義務を負う。
この方はそれを当たり前の事と承知し、その上で王弟殿下と国王陛下へとすべてを捧げ、国と民の幸福の為に滅私されていらっしゃる。
いいえ、きっと国と民とそして殿下と陛下の幸福がそのままシャノン様の幸福なのでしょう。
私は……。
私は、シャノン様にこそ幸せになってほしい。
だって私は知っている。お仕えしたこの八年、シャノン様は侯爵家令嬢としての責務、王弟殿下の婚約者としての期待、それらすべてに完璧に応えられるよう励まれていた。それこそ一般的な貴族令嬢が手にしている娯楽等を切り捨てて。
伯爵家の次女である私に、貴族としての価値などほとんどない。ただこの侯爵家に代々仕えているから、近い年齢だから、愚鈍ではないから。それだけでシャノン様のお付きになる事が出来た。それは私自身の才覚ではない。大きな目標などない。ただ目の前の仕事をこなすだけで満足している。そんな私なのに、それでも信頼してここまでお心を打ち明けてくださった。
この方に、相応しい人間でありたい。
この方の努力が実を結んでほしい。シャノン様にこそ心が安らかであってほしい。穏やかな世で心からの笑みを浮かべてほしい。
その為ならば、私はきっとどんなことだって出来る。
……ああ、そうか。この気持ちか。
シャノン様の王弟殿下への想いは、きっとこれなのでしょう。
王弟殿下のシャノン様への想いも、また同じ種類の物であればいいと願います。
お二人の間には、きっと私が考えるよりも固い絆が確かにあるのでしょうから。
それならば、私はただただシャノン様に従うだけです。シャノン様の献身を支えるだけなのです。
…………それはそれとして、あきらかに頭に花畑を構築している女性を選んだ殿下の趣味は、やはりあまり褒められたものではないと思うのです。
「シャノン様、もっとエドに優しくできないんですか……!」
シャノン様は王弟殿下にこの上なくお優しいのですが?
学園の廊下、シャノン様の行く手を阻むように本を落としたのはワイズ子爵令嬢の方です。邪魔なものを片付けるように私が拾って渡したのですが、何故か私に何を言うでもなく見ることもなく、私の後ろにいらっしゃるシャノン様を見て怯えたように肩を震わせてのこの発言。ちらちらこちらを見ながら去っていく様は子犬というよりは不審人物。
王弟殿下を愛称呼びは、まぁ許可が下りているのでしょう。ですがシャノン様は貴方に名前を口にする許可を与えておりませんが。まさか『脳内お花畑野郎』とは本当に頭の中が花で埋まっている状態なのでしょうか。お可哀そうに、病院はあちらです。
「エドはシャノン様との関係に疲れてるんじゃないかしら、だって『ベティといると全部忘れてしまうくらい楽しいな』と……あ、シャノン様! ご、ごめんなさい!」
お疲れになっている方がシャノン様とのお茶会であんなに自由に振る舞われるのですか?
学園の食堂、シャノン様が何時もお座りになる座席の近くで殿下の側近とその婚約者の方に話しかけていたのはやはりワイズ子爵令嬢です。無視してシャノン様と座るとまたまた肩をびくりと揺らして震えながら「私、失礼します……!」と走っていきました。
だからシャノン様は貴方に名前を口にする許可を与えておりません。殿下の側近とその婚約者の方が「いきなり何だったのでしょう、あの方」と零されているのを聞くに、面識のない上位貴族に話しかけたという事でしょうか。あと災害が起きたわけでもないのに令嬢が走るとは。教師陣に改めてのマナー講座の開催を提言してみましょう。
「シャノン様! いい加減、エドを解放してください! 愛がない関係なんて空しいと思わないんですか!」
シャノン様が王弟殿下を縛り付けたことなど一度もありませんが?
学園の中庭、シャノン様がご学友とベンチでくつろいでいたところ、突然目の前に現れて叫ばれたのはまたまたワイズ子爵令嬢です。令嬢が叫ぶ、という異常事態に、無礼を通り越してシャノン様もご学友の御令嬢もあっけにとられていると、フンッと鼻を鳴らして堂々と去っていきました。
何度も言いますがシャノン様は貴方に名前を以下略。ショックから回復されたご学友は、あまりのはしたなさに「あの方、平民でした?」と身分を疑われていました。わかります、そのお気持ち。ところが残念ながら正真正銘ワイズ子爵家のご令嬢です。脳内を花で汚染されるとそれまでの淑女教育が削除されてしまうようなのです。
「殿下の真実の愛は困った方ねぇ」
学園からの帰りの馬車の中で、シャノン様が溜め息をつきながら零します。けれどそのお顔は悪戯な子供を見守る大人の苦笑でした。心が広すぎではないのでしょうか。
「わざわざ殿下がいらっしゃらない時に現れますね」
「そうね、必ず殿下が公務で学園を欠席や遅刻や早退をされている時ばかりね。あの方なりにちゃんと考えているのよ。拙いけれど」
拙過ぎでは? と思うのは私だけでしょうか。
実際、殿下がご覧になっていないところで事を起こそうとも、誰かしらが殿下に報告をしている筈です。なんせ側近の方やシャノン様のご学友にも迷惑が掛かっているのですから。
「殿下は全部ご存じよ。あげられる報告を聞くたびに楽しそうに笑って『やはり子犬のようだ』とご機嫌だったわ」
嘘だと仰ってください、王弟殿下。
「私もね、ちょっと楽しいのよ。子犬とは言いえて妙ね。家に帰ってきた時にペットを見ると気が抜けるでしょう? あの方の突拍子もない言動ってそんな感じなのよ」
嘘だと仰ってください、シャノン様。
といいますか、王弟殿下もシャノン様も、それは愛というよりも愛玩……いえ、殿下とシャノン様のお心を私が勝手に推測するなど、とんでもないことでございます、ええ。
ですが、本当に? 本当にあの女性でよろしいのですか、王弟殿下? 私にはあの言動はもってのほかで、外見以外でほめる場所を見つけるのが苦難なのですが、王弟殿下?!
私の疑問が破裂しそうなほど膨らんできた頃、事態が動きました。
「シャノン、彼女を虐げているというのは本当だろうか?」
またしても学園の中庭、昼休憩の時間とあって、他の生徒も思い思いに寛いでいる中での事でした。
目の前の近衛兵を引きつれた王弟殿下にそっくりな人物は誰でしょう。そのそっくりな人物の背後から幼子のように顔を出して覗き見しているはしたない女性はワイズ子爵令嬢だと思うのですが。
「虐げる、とは?」
「彼女が言うには酷い暴言を吐かれたと。本当か?」
王弟殿下が婚約者たるシャノン様をお疑いになる筈がありませんので、今シャノン様は王弟殿下にそっくりな方とお話しされているのですね、わかります。
「暴言……覚えがありませんわ。淑女としてはしたない真似は考え直すよう伝えたことはございますが」
「ああ、なるほど! マナーの指摘をしたのか。うむ、シャノンは良き手本となってくれているようだな」
何という事でしょう。シャノン様をお認めになりました。という事はまさか本物の王弟殿下だったという事でしょうか。
「違う、違うのエド! マナーとかじゃなくて、『殿下に近づくな』って、『たかだか子爵令嬢の分際で』って馬鹿にされたのよ!」
何時から学園は無法地帯になったのでしょう。王弟殿下かもしれない方と侯爵令嬢の会話に子爵令嬢が割り込む。しかも王弟殿下を愛称呼び。さらに侯爵令嬢を侮辱。これが、こんな生き物が、安らぎになると? 愛しいと?
「ん? それはいつの話だ?」
「え、いつ……あの、え、エドと仲良くなってすぐ……?」
「シャノン、覚えは?」
「そのような言葉は口にしておりませんし馬鹿にしてもおりません。ただ、学園内とはいえ最低限のマナーを守れない方は今後の道が閉ざされますゆえ、婚約者を持つ方に不用意に近づかない事、学園内の平等は意見交換を円滑に行うための制度であって身分を忘れてはならない事、これらは確かに伝えました。その時はまだ殿下から紹介されておりませんでしたので、ただただ至らない生徒がいるのだとばかり」
「なるほど、それは仕方がない」
「え?!」
そうです、いかに寵愛されているように見えても、王弟殿下がしっかりとお認めにならなければ、周囲はただの無礼な女生徒と断ずるしかありません。
どうやら本物の王弟殿下だったようです。ワイズ子爵令嬢が未熟すぎる令嬢というご認識はあるようで何よりです。愛玩……ではないのなら、よく聞く『馬鹿な子ほどかわいい』というものでしょうか。なるほど、それでは確かにシャノン様の百倍、いえ千倍可愛く感じる事でしょう。
「すまなかったな、私がシャノンにベティの事を伝えるのが遅くなったが為にすれ違いが起きていたようだ。安心するといい、もうシャノンがベティを指南することはない」
「で、でも! 今でも暴言は続いてるの! 酷いわシャノン様、いくら自分が愛されないからって、エドに愛されてる私に嫉妬して!!」
「嫉妬? シャノンが?」
目を丸くされたのは王弟殿下とシャノン様で、私も思わず小首を傾げてしまいました。
「え、そ、それは……え、そうだったのか? なんと、それは今まで申し訳ないことを……」
心底申し訳なさそうにうなる王弟殿下に、シャノン様は慈愛の微笑みを浮かべて「殿下、落ち着いてください。違います」と述べました。私からも重ねて申し上げたく思います。「違います」と。
「だが、ベティがそう言って……」
「殿下、殿下のその信頼した者を疑わない広いお心は素晴らしいと思いますが、人の感情は不確かなものです。ゆえに、どうぞ一方の意見だけではなく複数の視点と客観的事実をもとにご判断なさってください」
「つまり……」
「違います」
「で、あるか!」
心底安心した様子の王弟殿下に、シャノン様は変わらず慈愛の微笑みを浮かべております。私も一安心です。
さて、困惑したのはワイズ子爵令嬢でしょう。
婚約者同士なのに、王弟殿下もその婚約者も嫉妬など、恋愛感情などないと言い切る。正直、王族貴族の政略結婚ではごく普通の事です。伯爵令嬢の私でも理解している事なのですが、その驚愕の表情は何なのでしょう。まさかワイズ子爵令嬢の妄想を、シャノン様が殿下に恋い焦がれて無理やり婚約を結んだという天地がひっくり返ってもあり得ない妄想を、現実のものだと思い込んでしまっていたのでしょうか。
「でも、あの……ッ聞いてエド! それだけではないの、シャノン様は、その、権力をにぎりたいだけなのよ!」
言うに事欠いて、筆頭侯爵家のご令嬢であるシャノン様に、権力欲。既に権力はお持ちですが。
いえ、わかります。わかりたくはありませんが、自分が虐げられていたことは事実にしたい、しかし嫉妬されていない、となると他の動機が欲しかったのですよね、ええ、わかります。わかりますがわかりません。もしやワイズ子爵家の淑女教育とは幼児教育だったのでしょうか。失礼、幼児も一緒にされたくはないでしょう。
「シャノンが? 権力を?」
王弟殿下も意味が解らないと首をひねります。ですが、そんな反応でも光明を感じたのか、ワイズ子爵令嬢は引きつった笑みでさらに何か言い募ろうとします。
「そうよ、自分こそが王妃に相応しいと言ってたわ! エドを操って自分が国の頂点になるって言ってたの! そんな人を婚約者にしておくなんて危ないわ!!」
何を。
何をふざけた事を喚いているのでしょう、この汚物は。
これ以上の不快音をシャノン様の耳に届けてはならない。触れたくもありませんが仕方がありません、あの口を物理的に塞ぎましょう。
「わ、私はいいの、どれだけ暴言を吐かれたって、でもエドが馬鹿にされたのが許せなくて……!」
なおも囀る汚物を止めるべく一歩前へ踏み出したところで、何故かシャノン様が私の先を遮るように手を出して制しました。何故ですか、そう叫びそうになった次の瞬間です。
「それはない」
はっきりと、怒鳴るのではなく声を響かせたのは、王弟殿下でした。
「シャノンが私を、国を裏切ることはない。絶対に」
王弟殿下は、汚物を悲しそうに見つめながら続けます。
「残念だ、ベティ・ワイズ子爵令嬢。其方は私の真実の愛ではなかったのだな」
「……え?」
呆然としている汚物を置いて、王弟殿下はシャノン様の前へいらっしゃると「無駄な時間を取らせてしまった。今日はもう帰ろう」と仰って手を差し伸べてきました。シャノン様をお選びになったそのこと自体は良いご選択でございますが、王弟殿下、後ろの汚物が恐ろしい形相ですがよいのですか。
私がちらりと汚物を見たのに気が付かれたのか、シャノン様が殿下の手をお取りになってから伝えてくださります。
「殿下、後始末はちゃんとなさってください」
「うん? そうか。近衛、誰でもいい。ワイズ子爵令嬢を子爵家へ送り届け、同時に子爵へ令嬢の謹慎を命じよ。詳細は追って連絡する、とな」
「エド?!」
何とも軽くひっくり返された手のひらに、シャノン様だけは動じず、私も汚物も周囲の生徒も驚きます。
近衛に押さえられた汚物が「何で?!」「どうして?!」と叫んでいますと、王弟殿下が振り返り汚物を見ます。その顔は先ほどの悲しげな様子は何もありません。
「ワイズ子爵令嬢、無聊の慰め感謝する。其方の愛は心地良かった。だが、私の婚約者を嘘で貶めたのはいただけない」
「う、嘘じゃ……!」
「いや、嘘である」
嘘でございますね。
「私もシャノンもいまだ未熟。ゆえに常に試されている。そのような私欲はないが、万が一あったとしても発言するなど許されない」
王弟殿下がちらりと周囲を、ある一点を見てから汚物へと視線を戻されました。なるほど、陰ながらの護衛はあの辺りにいらっしゃるのですね。
「そうでなくとも、王家が選び定めた婚約者、側近、近衛。私はかの者達の忠心を理解しているし信じている。それらは重く決して手放してはならぬものであるという事も」
ああ、やはり。やはり。
心の安らぎを求めていたのは確かなのでしょう。真実の愛とやらに心を浮き立たせていらっしゃったのも事実なのでしょう。それでも、このお方は王弟殿下。
シャノン様がいつか語られた通り、王族として、民を、国を守る事を、臣下の働きに応える事を、単純にして誠実な為政者のそのお心を、間違いなくお持ちなのです。
「え、エド……私、そんなつもりじゃ……!」
「許しはここまでである。今後は私の名を呼ぶことは許さない。不敬と心得よ」
「そん、そんな……ッ」
汚物の中ではどのような花畑が広がっていたのでしょうか。シャノン様へのあの不敬、もしや恐れ多くもシャノン様に成り代わろうなどと考えていたのでしょうか。もしそうなら汚物の極みでございます。
「……残念だ。其方ならシャノンとも手を取り合えると思っていたのだが……」
一番ありえたかもしれない未来は、王弟妃となったシャノン様の侍女や女官になってひっそりと囲われる、といったところでしょうか。もはやそんな未来は絶対に訪れませんが。
がくりと頽れた汚物を置いて、お二人は並んで歩きだされました。私もその後に付き従います。
これまでも、これからも、きっと変わらないであろう二つの美しい真っ直ぐな背中に見惚れながら、そっと心の中で訴えさせていただきます。
王弟殿下、あの汚物では手を取り合うことなど不可能だったと思います、と。
拝啓 お母様、私が仕えるお嬢様の婚約者である我が国の王弟エドガー・グレン・ハミルトン殿下は、今日も元気に真実の愛をお探しです。
「シャノン、私は気づいたのだ。真実の愛を探す前に、まずは女性を見る目を持つのが先だと」
「賢明なご判断かと」
失礼、しばらくは女性を見る目を養われるそうです。ところでお母様、急に何かしらの言葉が頭に浮かぶことはありませんか? 私は今急に『無駄骨』という言葉が頭に浮かびました。不思議です。
王宮で行われるはずだった定例の茶会は、王弟殿下の申し入れにより本日もアドラム侯爵家で行っております。謝罪の言葉の代わりとばかりに大量に持ち込まれたシャノン様のお好きな花と菓子を受け取ったアドラム侯爵家側としては、これらを王宮から持ち帰る手間が省けて大変ありがたいです。まぁそもそもこのような物を渡す必要が無ければよろしかったのですよ殿下。
「いっそシャノンに紹介してもらうのがいいのかもしれない。誰ぞいるか?」
「私の紹介ですか? そうですね……私が一番信頼しているのはここにいるアデラですが」
ああ、お母様! 最高の誇らしさと全力で逃げ出したい意欲がぶつかった時はどのようにすればよいのでしょう?!
「なるほど、アデラ嬢か。いいか、シャノン。私はまだ死にたくない」
「あら殿下、少しは女性を見る目が育ってきたではありませんか」
どうやら全力で逃げ出す必要はないようですので、ただただ誇らしさを享受しようと思います。
さてお母様、ここだけの話ですが、円満な婚約者同士と社交界で認識されているお二方の関係は、正しく政略によるもので、そこに恋愛感情はございません。よくある話ではありますが、ご存じでしたか?
とはいえ、お二人は既に固い絆で結ばれているようです。ええ、勿論恋人ではございません。友人とも少し違う気がします。同志、と聞きましたが、主従関係、というのが一番正しいのでしょう。
立ち位置が違えども支え合う、唯一無二の、決して裏切らない信頼と尊敬。
それは確かに真実の恋とは言えず、王弟殿下の求める真実の愛とも違うことはわかるのですが。
それでも、これもまた真実の愛と言えるのではないか、と思う今日この頃です。
敬具
追伸 ちなみに私の心には間違いなくシャノン様への真実の愛が溢れております。ええ、王弟殿下には負けません。不敬でしょうか? どうぞお見逃しください。
2024/04/01 誤字修正
2024/04/02 誤字修正
2024/04/10 誤字修正