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自分の子どもを虐待しているなんて世間に晒しているようなものだ。
……いや、別に世間に晒していても、むしろ私という存在が家族にいるということの方が可哀想だと思ってくれるのかもしれない。
社会って難しい☆
異なる性質を持っているというだけで、虐待されることもあれば、特別扱いされることもある。
全ての事象は表裏一体。私はそれに従うしかない。
どれだけ尊厳を奪われたとしても、私はこの世界で生きていくしかない。
…………それにしてもお腹が悲鳴を上げている。
「ねぇ、お母様、あの子、裸足だよ」
「あの子は……、カベラ家の子だわ。……しょうがないの。神様に嫌われたのよ」
小さな女の子が容赦なく私を指さす。
ホームレスで酷い見てくれの人たちなどごまんといる。ただ、私は帰る家があるみすぼらしい子なのだ。
リエル・カベラという名を名乗ったことはない。
…………てかさ、神様に嫌われたって酷くない? 私が先に神を嫌ったの!
「あら、リエルじゃない?」
……この子は姉の友人だ。たまに家に来て、お茶会をしている。
姉と同様、いつも派手な格好をしている。彼女の趣味は私を馬鹿にすること。
良かったじゃない、こんなところで私と出会えてラッキーね。
「ジュリー嬢、お久しぶりです」
私はにこやかに挨拶をする。彼女が外部の者である限り、私たちは立場は対等だ。
別に私の家は貴族ではない。だが、そこそこの地位を築いてはいる。
「一人なのかしら?」
「見ての通り、置いていかれまして」
私がそう言うと、彼女はハッと鼻で笑う。まるで絵にかいたような悪役。
「相変わらず鼻につく態度ね」
私はニコッと笑う。笑っとけばなんとかなる。これで私が怒鳴り散らかせば、私の負けだ。
私の取り柄は一度も悲しみも怒りも表に出したことはないことだ。
「眼鏡をかけていたっておぞましい瞳だと分かるわ」
それなら話しかけてこなければいいのに~~。
私は瞳のことは散々言われるが、それ以外の外見では暴言を吐かれたことはない。ありがたいことに、美貌は母親から譲り受けている。
整い具合でいえば、私が一番良い遺伝を受け継いだ気がする。父親も母親の美貌に一目惚れしたわけだし……。
その点、私以外の兄弟は皆父親に似ている。
そこだけ、ざま~みろッ! って思える。勿論、父親も綺麗な顔をしている。
母親の金髪だけ子どもたちは皆譲り受けた。ただ、私の場合は少しだけ癖がついているせいでふわふわしているけど……。
父親のブラウン系の髪は誰一人としていない。この世界では金髪の方が高貴に見えるから、その点で言えば、私たち子どもたちは随分と良い遺伝子を貰った。
ありがとう、母。それだけは感謝してるよ。
「あなた、なんか臭いわね」
「ゴミ捨て場に捨てられてきたからね」
顔を顰めて、鼻をつまむジュリーに対して、彼女も暇だなと思う。
私を蔑む暇があれば、自分磨きの一つや二つすればいいのに……。私はあくびをしながら、「なら絡んでこなければいいのに」と笑みを浮かべた。
こんな性格だから、余計に腹が立つのだろう。
てか、そもそも彼女は一人でこんなところで何をしているのだろう。
彼女は私に苛立ったのか、顔を真っ赤にして何か言おうと思った瞬間、私が先に言葉を発した。
「ジュリー嬢はここで何してるの?」