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私は裸足になった傷だらけの足で家へと帰る。
気付けばあたりは真っ暗だった。裸足に慣れ過ぎたせいなのか、ちょっとやそっとじゃ痛みを感じない。
野性的になれてラッキーかもしれない。望んでなったわけではないが、無人島とかで生き延びれるタイプになれた。
このオッドアイズのせいで私は実の家族から奴隷扱いされている。
……まぁ、オッドアイズだけが原因ではないのだけど。
「家からかなり離れたところで置いていったな~~、も~~!」
私は砂利道から、草原へと道を変える。
草原は足に優しい。優しく包み込んでくれる。たまにいかつい石も存在してたりするけど。
馬車が通る道を遠目で見つめながら、早く家に着きたいな、と思う。……家に帰ったとて、温かい家ではないのだけど。
夜空に輝く星たちを眺めて、大体の方角を知る。
これまで幾度となく色んな所へ置いていかれた。その度に、絶対に家に帰っていた。我ながら凄いと思う。親も内心はびっくりしているだろう。
最初は迷いに迷っていたが、十六歳にもなると、家までの道は方角さえ分かれば大体つくことができる。
親のおかげで私のサバイバル能力上がりすぎじゃん~!
能天気にそんなことを考えながら、家へと足を進める。
何度も捨てられたとしても、私はあの憎き家へと帰るのだ。そこしか帰るところがないから……。
歓迎されなくとも、野垂れ死ぬよりかはましだ。
何度も逃げ出したいと思うが、行く当てがない。そうなれば、死んでしまう。社会ははみ出し者の私には冷たいのだ。
そうこうしているうちに、私はようやく街へと戻って来た。
賑やかな夜だ。活気に満ち溢れていて、夜なのに明るい。私みたいなみすぼらしい格好の人間が歩くべきではないのだろうけど、やっぱりこの楽しい雰囲気にもまれたい。
キラキラしている生活を覗くのは好きだ。
人生に悲観せずに生きていられる。お金も権力もなにもないけど、私はかなり楽観的だと思う。
「ママ~~!」
突然、どこからか姉の声が私の耳に響く。その声にビクッと体を震わせてしまう。
もしかして、私の家族、ここにいる?
私は声がする方に恐る恐る目を向けた。……やっぱり。
両親、姉、兄、妹がいた。六人家族のはずなんだけどなぁ……。人生って上手くいかないものだ。
私の家は裕福な方だ。彼らの服装は華やかで上質なものばかり。それに比べて私は、この家のメイドよりも酷い格好をしている。
悲劇のヒロイン症候群にでもなりそうだ。
「私、これが食べたいわ!」
両親は私以外の子どもには甘い。
彼らは笑顔でレストランへと入っていく。なんとも虚しい光景だ。
これが本当に物語の中なら、読者は私を哀れんでくれるだろう。だが、ここは現実だ。
私は自分を哀れむことなどしたくない。そうやって、今までも耐えてきた。
ぐううぅぅぅぅぅ、とお腹が鳴る。
「お腹減ったな~~」
いつも何かしらご飯はある。ほぼ残り物だけど……。
ただ、彼らと一緒にご飯を食べたことはない。私の姉は随分と肥えている。兄と妹は普通なのだが、姉だけはかなり体格が良い。
ご飯を一緒に食べたことのない私が、何故いつもお出かけを共にさせてもらえているかというと、もちろん荷物持ちだ。
家に閉じ込められているより断然良い。外の空気に触れることができているからこそ、私は別に病んでいないのだと思う。
…………けど、どう考えても、両親って馬鹿だよね!