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絶望の淵で花笑む少女に幸多からんことを……。
可哀想すぎるぐらいに私は世界に見放されている。
私の代わりに目の前の犬がワンワンッと鳴いてくれている。
……いや、威嚇されているのか。
どう見ても懐いてくれているようには見えない。
「は~~~~」
今日もため息をつきながら、ゴミに埋もれながら空を見上げる。
私は空に憧れている。なんとも陳腐で稚拙な表現だが、本当に空になりたい。
大空を羽ばたく鳥ではない。どこまでも続いて、果てしなく大きな空がいいのだ。
まぁ、けど、ゴミと同然のような扱いをされても負けないもんね☆
涼しい風が優しく私の頬を撫でる。もうすぐ日が沈む。茜色に染まっている雲を見つめながら「あと少ししたら帰ろう」と呟き、私は目を閉じた。
さて、ここで私がどうしてゴミ捨て場に置いていかれたのかという経緯から話そう。
…………いや、その前にこの世界のことについて少し説明しておいた方がいいか。
この世界には、とある伝説がある。
国の命運を握り、国を繁栄させる者が現れる者が現れるだろう、と。
なんとも抽象的で信憑性のない話だ。この噂を流した者を殴りたくなる。
せめて性別だけでも分かるようにしてほしい。じゃないと誰もが「もしかしたら自分が伝説の者?」みたいな発想になってしまう。
人は皆、自分を特別だと思いたいものだ。もちろん、私も思っていた。
なんていったって、私の瞳はオッドアイズ。右目は秘色。左目は聴色。……ごめん、ちょっとお洒落に言ってしまった。
右はブルーっぽくて、左はピンクっぽい。ただどちらも透き通るぐらい色素が薄い。
私は別に自分の目を気に入っているのだが、世間はどうやら違うようだ。特に私の家族は私がこの瞳を持って生まれたせいで忌み嫌っている。
そのせいで私は少しでも気味悪さを軽減させるようにと、どちらの瞳も茶系に見えるような眼鏡をかけさせられている。
目は良い方なのに……。
まぁ、そんなことはどうでも良い。話を戻そう。
伝説はそれだけではない。彩る力を持つものが世界を豊かにしてくれるらしい。
なるっほど~~! とはならない。ちんぷんかんぷんである。
確かにこの世界には極稀に能力を持つ者が生まれてくる。私は実際に会ったことはないが、その能力は多種多様だそう。
もちろん、国はその存在を重宝し、大切に扱う。能力者をめぐって争いなりかねないほど、能力者の存在は国にとって重要なのだ。
能力の有無は血筋は全く関係ない。突然変異みたいなものだろう。
この国にいるのは、風を操れる能力を持った「フウマ」と人の心を読むことができる「ヨミ」、あとは王子! 彼も能力者だ。
けど、なんの能力かは明かしていなかった。ただでさえ王族で特別扱いされているのに、能力者というステータスがさらに追加されて、もはや待遇は神様並みだろう。
それがいいかはおいておいて……、この国の能力者は三人だ。
もちろん、私は何の能力もない。瞳の色がただ変わってる女の子…………。
「くっそ~~~!」
私は目を勢いよく開き、日が沈んだ空の下で自分の人生に嘆いた。