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【WEB版】底辺探索者は最強ブラックスライムで配信がバズりました! ~ガチャスキルで当てたのは怠惰な人気者~  作者: 御峰。


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第96話 底辺配信探索者の葛藤

 真っ暗な部屋の中。


 可愛らしい寝息の声が聞こえる。


 とくに耳元で聞こえる寝息の声は、聞いているだけで俺の心臓の音の方が大きい。


 如月志保。通称シホヒメ。


 シホヒメは俺の仲間の一人であり、彼女のおかげで俺な何度も助けられ、試練も乗り越え、さらに妹のダンジョン病まで倒す【エリクシール】を手に入れるまで力になってくれた。


 彼女はあまり自分のことは語らないけど、以前ちらっと見たスマホに映っていたのは、俺の配信チャンネルで、登録日はなんと初日からだった。


 あの日は今でも覚えている。


 配信で魔石を稼ぎながら投げ銭で生活費を稼げたら、いつか妹を治す薬をガチャから引けると信じて毎日配信を頑張ろうと覚悟を決めた。


 そして、チャンネルを作って数時間後に、まだ配信を行ってすらいない俺のチャンネルに登録者数が一人増えたのだ。


 登録者の個人情報は見れないし、名前も見れない。


 でもあの一人の登録者が俺にとっては大きな力となった。


 あれから毎日配信を頑張って、初めての配信の時から応援が必ず1はあった。


 今思えば、それも全てシホヒメのものだと分かる。


 シホヒメはよく言ってた。俺のガチャというスキルで自分が眠れないのを治してくれるかもしれないから一緒にいると。


 でもそれは本当なのだろうか?


 そもそもガチャでそういうものが出るとは知らないはずだし、結果から言うと安眠枕は出たものの、完治させられる品は出ないという。


 となると彼女はどうして俺を応援するのか…………。


 高校生の頃、同じクラスだった彼女が図書館に来ていた時があった。


 きっと静かな図書室が心地よかったんだろうけど、図書部員に嫌われてしまい、次の日からは来なくなった。


 あの時、初めて彼女と喋ったことはあるけど、彼女はきっと憶えてすらいないはず。


 こちらに向かって気持ちよさそうに眠るシホヒメの顔が見えた。


 暗闇でも分かるほどに美しいその顔に、俺の心臓はもっと跳ね上がる。


 …………女性を意識したことなんて一度もなかったのに、妹が復活して、生活も安定してきて、探索者としてもリンや仲間たちのおかげで楽しく毎日過ごしている。


 自分の心が満たされた感覚がある。


 だからなのか…………シホヒメを見るたびに顔が熱くなってしまう。


 最近こそ、呪いの腕輪の件で彼女が絶望した時は、俺だって苦しくなった。


 彼女が泣いたら俺も泣きそうになって、彼女が絶望したら俺も絶望して、彼女が笑ったら俺も笑いたくなる。


 …………まさかな。


 いやいやいやいや…………いやいやいやいや………………。


 ないない。


 仮にだ。百歩譲って仮にだ。


 俺とシホヒメの関係が深まったとして――――俺がシホヒメと釣り合うはずもない。


 何か取柄があるわけでもなく、ただガチャというスキルでリンが強くて探索者としてやっていけて、ガチャから排出される安眠枕で彼女は眠れる。


 今では安眠枕もあまり出せなくなった……そんな俺に何があるのか。


 今は腕枕で眠っているけど、その理由が分かってない以上、いつ終わるかも分からない。明日からは普通に眠れるようになって、俺はもういらない存在になることだってありえる。


 …………。


 …………。


 ドクンドクンと胸の奥が跳ね上がる音が耳に響き続ける。


 暗い部屋の中、俺は――――モヤモヤした気持ちで一睡もできなかった。



 ◆



 翌日。


 朝になって隣で眠っていたシホヒメの寝息の声が聞こえなくなった。


 ちらっと見たシホヒメは、可愛らしい大きな目を開いて、俺をじーっと見つめていた。


 すぐに笑顔になる。


「おはよう。エムくん」


「お、おはよう」


「あれ? エムくん…………(くま)……すごいよ?」


「あはは…………お、おう……気にするな」


 笑顔から心配そうな表情に変わった。


 眉間にしわが寄っても可愛いな…………はっ!? お、俺は何を……!?


「起きようか」


「ん――――やぁ」


「えっ」


「ぃやぁ!」


 頬っぺたがぷくっとなって俺の腕から頭を動かさないシホヒメ。


 うん……めちゃくちゃ可愛い…………。


 はっ!? お、俺は何を……!?


「本当に眠れたのか確認もしたいし、ひとまず起きよう」


「むぅ…………ねえ、エムくん」


「ん?」


「――――また腕枕……してくれる?」


「!? お、おう。シホヒメが眠れるならいいよ」


「えへへ……でもエムくんが寝れなくなるんなら、毎日は我慢しようか……」


「っ!? い、いや、そんなことは気にしなくていいよ」


「だ~め。私はエムくんの女なんだし、エムくんが眠れないなら、やっぱり違うと思うの」


「…………はあ。違うんだよ。眠れなかったのは…………し、シホヒメが横にいたから……」


「えっ……?」


 ポカーンとするシホヒメ。めちゃくちゃ可愛い。


 はっ!? お、俺は何を……!?


「き、緊張して眠れてないだけだから気にしなくていい!」


「でも……私の膝枕ではよく寝れたのに?」


「そ、それは…………」


 多分、今なら眠れない自信しかない。


「ふふっ」


 口元が緩むシホヒメ。


「本当に緊張しただけ?」


「あ、ああ」


「じゃあ、これからはエムくんが眠ったら腕枕してもらおう~これから一緒に寝れるように頑張ろう?」


「お、お、おう」


「ふふっ。変なエムくん~」


 俺も不思議だ。今の俺……本当に変なんだよな。

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