10年以内に世界が滅亡するらしいのでタイムマシンで原因を調査しに行ってくる
タイムマシンが発明された。
そして、その活用法が話合われた結果、未来へ行きその進んだ技術を持ち帰ろうということになった。
しかし、実際に未来に行ってみると、百年後はおろか十年後の世界でさえも滅びていたのだ。そこで、その原因を解明する使命を帯びて数か月後の未来へ、私は調査に来た。
街は死んでいた。
人影は見当たらない。
「いったい、この数か月で何があったんだ?」
エイリアンの侵略とか未曽有の大災害とかがあったようには見えない。建造物は全くの無傷なのだ。強力な病原菌という可能性は考えられなくはないが、たった数が月で街から人が消えるということも考えにくい。
どうして。
私は途方に暮れる。
ふと思った。そういえば、自分や家族はどうなったのだろう。
この目で確認することが恐ろしくはあったが、家に行ってみることにした。
いつもの道だ。迷うことはない。ほどなくして見慣れた我が家に到着し、チャイムを鳴らす。
「待っていました。開いてます。どうぞ」
ゾクリとする。背筋が凍りそうな不気味な響き。
無人の街で初めて聞いた声は、自分の声だった。。
※※※
目の前に自分が座っているというのは奇妙を通り越して寒気がする。
鏡を見ているのとそう変わりはないと思うかもしれないが、違う。一見、鏡のようでいて、それが鏡を見ている時の感覚に反して、自分と別の動きをするのだ。まるで、鏡の中の自分が急に意思を得て動き出したかのような気味の悪さがある。
「私は、ここで過去の私に会うことになっていたので待っていました。他の人は既にみな死んでいると思います。——さて、どうしてこうなったのか知りたいのでしょう?」
「ええ。教えてください。この数か月で何があったのです?」
男、未来の自分は、小さなカードのようなものを差し出した。
「これです」
「これは?」
「今からさらに遥か未来からもたらされた装置です」
「何ですか?」
「——宇宙の真理です」
宇宙の真理。そんなバカげた言葉、目の前の自分がこれほど真剣な様子で言っていなければ信じなかっただろう。異様な状況も相まって、このカードに本当に「宇宙の真理」とやらが詰まっていそうな気がした。
「この装置を使えば、人間に宇宙の全てを理解させることができます」
「宇宙の全てを理解しても避けられなかったなんて……。いったい何があったというのです?」
それだけの知識があってなお避けられない禍とは何か。
目の前の私は、ペティ・ナイフでシャリシャリと林檎の皮をむいていた。
皮をむき終えると、皿に並べて私に勧める。林檎は好きだが、今はそんなものより近い未来に訪れるであろう禍のことが気になる。
未来の私も林檎に手を付ける様子はない。
「ゲームの話をしましょう。たとえば、全てのステージをクリアし、隠し要素も全て見つけ、文字通りやれることをやりつくしたらどうしますか?」
「きっと飽きてそのゲームをやめてしまうでしょうね」
「そういうことです。では、これにて……」
次の瞬間。止める間もなく部屋に鮮血がほとばしった。