幸福
読んで戴いたら嬉しいです。゜+.゜(´▽`人)゜+.゜
焼け付く太陽は遥かなる距離に和らぎ、地上に辿り着く頃には、キミの温もりに似た温度で部屋を照らす。
一面の窓から降り注ぐ光が、安らかな眠りを妨げてボクを目覚めさせる。
傍らには愛しいキミ。
白に溶け込みそうに、眠りに溶け込んでいる。
白い壁、白いベッド、白い窓。
熱烈に、けれどとても静かに愛している。
全裸のキミはうっすらと睫毛を揺らす。
白い毛布を手繰り寄せて身に纏い、キミはボクを見て微笑んだ。
どれほど愛し合っても、またキミを求めてしまう。
触れていたいと思う。
ギリシャ神エロスも嫉妬するほど、ボクらは何度も愛し合う。
遠くの波の音が染み渡る。
深く落ちて行く。
それはキミが仕掛けた罠なの?
ボクはまんまとその罠に堕ちて、奴隷に成り下がった。
そう、とても喜びに溢れて········。
キミの足に誓いの口付けをしよう。
キミは身体をくねらせ美しく笑う。
もう誰も邪魔出来ないよ。
キミはボクだけを見ていて。
ここにこうして。
永遠に·······。
永遠に·······。
看守Aは看守Bにカードを切りながら言った。
「あの囚人、いつもああなんだ
とても倖せそうな顔で何も見えていない」
看守Bが言う。
「現実が受け入れられないんだろうよ」
看守Aは怪訝そうに言う。
「終身刑が? 」
「あの男にとっては、それは然したる問題じゃないな」
「じゃあ、何が問題なんだ? 」
看守Bはタバコに火を点け言った。
「あの男は真面目過ぎたのさ」
看守Aはカードを配る。
「ああ、解るよ」
「殺された女は相当のビッチだったらしい
それがあの男には堪えられなかったんだろう」
看守Aは額に皺を寄せる。
「よくある話だな、珍しくもない」
看守Aは思う。
『本当に、珍しくもない······』
看守Bはタバコを深く吸い込むと静かに煙を吐き出しながら言った。
「ああ、そうだな
奴はおそらく、もう帰っては来ないだろう
愛しい女を撃ち殺した男の末路はこんなものさ」
看守Aは画面に映った幸福そうに壁の一点を見詰める囚人を暫く眺めて眉をしかめる。
看守Bはタバコを燻らせ言った。
「奴は自分の心を閉じ込めた
警察が踏み込んだ時、奴は腐敗した死体にしがみついて離れようとはしなかったらしい」
看守Aは言った。
「愛する女を撃ち殺した現実を直視できなかったんだろう」
看守Bは頷く。
「ああ、哀れな話だ
救いは奴が狂ったことだろう」
看守Aは視線を浮遊させる。
「幸福なんて、そんなまやかしを信じる事なのかもしれないな·········」
看守Aは薬指の結婚指輪を指先で強くこすった。
『帰ったら、彼女はもう何処にも出掛けてはいないだろう········』
fin
読んで戴き有り難うございます❗(o´▽`o)ノ
もっと背景とか詳しく書けたら、深みがでて雰囲気もでたのですが、いかんせん牢獄と云うものがよく解らなくて、そのまま書いたらチープな感じになってしまいました。
哀しいです。。゜(゜´Д`゜)゜。