09話 VSキラービー
あの後、夜遅くに街の宿に帰ってくると、なんかシリカが不機嫌だった。シリカによってリリは無事にマーサ食堂に送り届けられたようだ。そんでもって、不機嫌気味のシリカにその夜はたっぷりと搾り取られてしまった。
少し寝不足気味だが問題ない。ギルドクエストをクリアしに行くぞ、おー。因みに昨日のメインクエストの報酬は、そこそこのお金と、聴力の良くなる装備アクセサリーだった。勧誘チケットが出なかったのは残念だけど、その装備アクセが最高だった。聴力の良くなる装備アクセサリーは、猫耳型で装着すると獣人のようにケモミミになれるアイテムだった。マジで今度シリカに付けさせて致そう。
実のところ獣人の団長はモフモフしただけで、別にエッチな事はしてないからね。シリカは「全身から獣人の匂いがする」とか言って怪しんで来るけど、別に致してはないマジで。ケモミミを愛でるのと性欲は別というか、やっぱり純粋な心で愛でてあげたいからな。あ、でもシリカにケモミミ装備を付けさせて致すのは、たっぷりそっちの欲望で可愛がってあげるよ。昨晩搾り取られた分も含めて、今夜にでも…むふふ。
街を出てやってきたのは見上げる程の崖、所謂断層ってやつだね。その崖にそって進んでいくとあった。崖の中腹あたり、遠くからでも分かるほど巨大な蜂の巣がある。大きめの一軒家ぐらいはあるぞ。入り口に数匹キラービーが見える。サッカーボールを3つ分ぐらいのサイズだ。受付嬢の話だと、1匹であればFランク冒険者でも倒せるらしい。毒も蓄積系で何回か食らっても戦える程度のものらしい。
さて、早速あれに魔法をブッパしますか。やっぱ火属性魔法が良いよな。杖に適当にMPを込めて、火属性魔法を撃つ。動かない蜂の巣には簡単に命中する。どうやら蜂の巣は燃えやすい素材で出来ていたみたいで、簡単に燃えていく。この調子なら30発程火属性魔法を撃ち込んだら、全部燃えそうだ。
そんな事を考えていると、蜂の巣からキラービーが次々飛び出してくる。どうやら巣が攻撃を受けたことで、働き蜂たちが戦闘モードになったらしい。
「シリカ!」
「はい!」
巣から出てきて襲いかかってくるキラービーを、シリカが一撃で仕留めてくる。だがシリカが仕留めるスピードよりも、巣から出てくるキラービーの方が多い。あっという間に辺り一帯はキラービーで埋め尽くされる。
僕も杖を使って近づいてきたキラービーを叩き落とす。だが数が多すぎる数百はいるぞ、シリカもキツそうになっている。ここは作戦変更だ。
「シリカ、こっちに来い!」
シリカを呼び寄せると、水魔法を発動させる。僕とシリカを中心に水の膜が表れ、2人を球体状に包み込んだ。即席の水の防御壁ってところだな。これでキラービーは中に入ってこれない。
作戦はこうだ、水魔法でキラービーから逃れる。諦めたキラービーたちが諦めて巣に戻ったところで、巨大な火属性魔法で一気に巣を燃やし尽くす。それなら最初から巨大な火属性魔法を撃っとけばよかったんだけど、なんか通常の火属性魔法撃っちゃったんだから仕方ない。
水の膜越しにキラービーと睨めっこだ。こちらは水魔法を発動し続けているので、少しづつMPは減り続けている。だが、魔力ポーションを飲めばMPが回復する。魔力ポーション全部使う前に、流石に向こうが巣に帰っていくでしょう。
なんて思っていた時期がありました。あれから1時間、一向にキラービーは巣に帰りません。水の膜の周りを戦闘態勢でぐるぐると飛び回っています。魔力ポーションもあと数本と言ったところです。んー、どうしよう。キラービーたちは1箇所に固まっては居ないから、魔法で一掃には出来ないんだよな。
そう考えていると、キラービーたちの動きが変わる。何か違うものに興味を惹かれるように、一斉に違う方向に飛んでいく。そちらに視線を向けると、獣人解放団たちが居た。ステータスは僕らより低いはずであるが、数でキラービーたちを倒していっている。
よし、今のうちだ。キラービーたちが獣人解放団に注意を惹かれてるうちに、水魔法を解除する。魔力ポーションを飲み干し、杖にMPをどか食いさせる。威力は程々に効果範囲を広く、そんなイメージで放った火属性魔法は、動かないキラービーの巣に飛んでいき、勢いよく燃やし尽くしていく。あの調子なら数分もあれば全て燃えるはずである。
僕とシリカは獣人解放団に襲いかかるキラービーを殲滅すべく、そちらに向かった。残りの魔力ポーションを飲み干す頃には、キラービーたちは数を減らしていき、あちこちへと散り散りに逃げていった。
「助けてくれたのか、ありがとう。」
僕は獣人解放団の人たちにお礼を言う。すると団長が僕のところにやってきた。
「べ、別にたまたま通りかかっただけだし。き、昨日のお礼みたいな感じだし。」
何か歯切れの悪い団長はジリジリと近づいてきて、獣耳をピョコピョコさせている。ん?なんだモフってほしいのか?右手を団長の頭に乗せてやる。すると団長は自ら頭を左右に振り、撫でられていく。おお、何だ懐っこいやつだなぁ。昨日も最後は仰向けで、腹を見せてクンクン鳴いていたもんな。
「私は29歳なのだが。き、貴様は、年上とかど、どうなんだ?」
団長が撫でられながら上目遣いで聞いてくる。
「年上?良いと思いますよ。」
「そ、そっか。」
なにやら、満足したようで1歩下がる。それに合わせて僕も撫でていた右手を引っ込める。
「私達、やり直すことにしたんだ。やな奴らを許すことは出来ないけど、憎み合わずに互いに尊敬し助け合えるそんな場所を作りたいと思ってる。」
そう言う団長はどこかスッキリとした表情に見える。
「だから、今度会いに来る時はさ。もっと年取ってるかもしれないけど。今度胸張って会いに来る時は、ご、ごしゅ、さまって呼んでいいか?」
「え?ごしゅなんて?」
ちょっとマジで最後の方声小さすぎて聞こえない。聞き返すと、団長は顔を真赤にする。
「な、何でもない!…だからそういう事だから、また会いに来るからな!絶対だからな!!」
そう言って団長は獣人解放団を引き連れて去っていた。また会いに来る?これは何かの複線か?それともよくある、また会いに来ると言って本編で再登場しないやつか?うん、わからん。とりあえず次また会えたら、今度もモフらせてくれい。
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ギルドに依頼達成の報告に行くと、ギルドクエストが達成された。そしてDランクにランクアップすることが出来た。やっぱ、ランクアップはギルドクエスト達成の報酬であるギルド名声っぽいな。
因みにキラービー1体の経験値は少なかったが、大量に討伐したことでそれなりの量の経験値が入ってきた。その経験値から経験値150を消費して、僕をレベルアップさせた。
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ツクモ Lv.6
種族:闇人 クラス:魔導士
HP :69 MP :111
STR:17 VIT:38
DEX:90 AGI:48
INT:111 MND:27
所持金:1,285,000G
称号:Dランク冒険者
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ついにステータスが3桁に到達したぞ。恐らくはステータス的に言うとCランク、いやBランクぐらいには到達してるんじゃないか?そして、新たなメインクエストも発生する。
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《メインクエスト:次の街へ移動せよ》
商業都市アルカの冒険者ギルドへ行こう
アルカにある商人ギルドで商人登録をしよう
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次は商業都市だって。しかも商人ギルドで商人登録だ。戦闘じゃなくて、次は商売をするのかな?ワクワクするね。早速明日の朝一で出発しよう。
そうと決まれば、マーサ食堂へ行ってリリを愛でながらの最後の晩餐だ。いそげ、今からお腹が鳴って仕方がないぞ。そう思いシリカを見ると…。
「あれ、なんか不機嫌?」
「別に、不機嫌じゃありませんよ。」
いや、めちゃくちゃ不機嫌じゃん。どしたのよ。
「私はまだ頭撫でられた事がないから、不機嫌だとかそんな事ありませんからね。」
なにやら自ら不機嫌の理由を説明してくれる。どうやら僕が団長を撫でてモフってるのを見て不機嫌らしい。心配すんなって夜は宿屋で、ケモミミ装備アクセ付けさせて、嫌って言うほどモフってやるからな。覚悟しろよ、僕のモフモフタイムは超濃厚で超長いからな。ふふふ、今から楽しみだ。その前にマーサ食堂へ行ってリリを目で愛でなければ。




