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ひだまり童話館(参加作品・過去お題作品)

こほり池日記

作者: 天神大河

 (きょう)(みやこ)では(みっ)()ほど(まえ)から(ゆき)()(つづ)き、(さむ)くなったことを(つう)(かん)します。


 (まい)(にち)のように(にっ)()()いている(わたし)()も、今日(きょう)ばかりは(さむ)さで(ふる)えてしまい、(なん)()()(そん)じをする()(まつ)です。


 さて、今日(きょう)は、あけぼのの(ころ)()()めました。()(だん)よりも(すこ)(おそ)()きてしまったのは、あまりの(はだ)(ざむ)さに(わたし)()えられなかったからです。ちょうど今日(きょう)()(ごと)(やす)みだったので、(さむ)(なか)(あせ)って(じゅん)()をせずに()んだのは、(さいわ)いなことでした。


 ()()えを()ませ、(ねむ)()(なん)とか(おさ)えながら(そと)()をやると、お(やかた)(さま)(しん)殿(でん)(つり)殿(どの)(つき)(やま)(いた)るまですっかり(ゆき)()(しょう)(ほどこ)されていました。(とく)(にわ)(すみ)にある(おお)きな(いけ)には、(かがみ)(おも)わせるほどの()(ごと)(こおり)()っていたのです。


 ()づけば、お(やかた)(さま)()(ども)らや、()(しき)(つか)える(わらべ)たちが、(みな)(いっ)(せい)(いけ)(まわ)りに(あつ)まって、(こおり)(うつ)()(ぶん)(かお)(のぞ)()んでおりました。(なか)には、(いけ)(うえ)()かった(たい)()(ばし)(あつ)まって、(つぎ)(つぎ)(らん)(かん)から()()()(わらべ)までいる()(さま)


 (すこ)(あぶ)ないのでは、と(おも)ったのも(つか)()(らん)(かん)(そと)()っていたお(やかた)(さま)のご(ちゃく)(なん)が、えいっ、と(こえ)()げて(はし)から()()りたのです。


 (さいわ)い、(いけ)(うえ)()った(こおり)まではそれほど(はな)れていなかったので、(りょう)(あし)でしっかりと(ちゃく)()はできました。ですが、それと(どう)()にぱり、ぱり。(みょう)(おと)(ひび)いたかと思うと、ご(ちゃく)(なん)(かた)(あし)(いっ)(しゅん)()れた(こおり)(した)(しず)んでしまったのです。ご(ちゃく)(なん)は、すぐさま(いけ)から(あし)()()げると、()(ばし)りで(にわ)()けていきましたが、(いけ)のそばで()れた(あさ)(ぐつ)()ぐと()(がお)でまた(あそ)(はじ)めました。


 (さむ)さが()にならない(げん)()(おの)()(まえ)に、(わたし)(おも)わず(こえ)()して(わら)いそうになりました。いけない、いけない。(きぬ)(すそ)(くち)もとを(かく)して、しばし(わらべ)らの(あそ)(まわ)(こう)(けい)(なが)めておりました。そこで(わたし)は、ふと(あたま)()かんできた()()(いっ)(しゅ)()んでみたのです。



 こ()(いけ) あそぶ(わらべ)の こ()あれど (しずか)なるかな (ふゆ)のあけぼの



 (いま)、こうして(にっ)()()いていて(おも)うことですが、この()()()(みょう)()()(われ)ながらつくづくうんざりしてしまいます。もう(すこ)()()らしい()()()むことができれば、(きゅう)(ちゅう)(はたら)(にょ)(かん)()()てられたり、やんごとなき(たち)()のお(かた)から(ふみ)使(づか)いが(つか)わされたりすることもあったでしょうに。


 ()がつけば、もうすぐ(しん)(ねん)になります。(らい)(ねん)こそは、きっと()(そう)()(ぶん)(ちか)づけると(しん)じながら、今日(きょう)(わたし)(にっ)()をまとめたいと(おも)います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 企画より拝読しました。 冒頭の「京の都」というフレーズから展開する描写で、タイムスリップして冬の都の雪景色に引き込まれていくようでした。 寝殿造りのお屋敷の庭で、貴族のお坊ちゃまも、使用人…
[良い点] 何とも雅なぱりぱりでしたね。 日記形式というのも、何とも斬新でした。 書き続けていくことは、それとなく苦痛も伴いますが、総じていえば、生きている実感を得ることができる行為ですよね。 来年…
[良い点] ひだまり童話館様の企画に初めて参加して、拝読いたしました。 平安貴族の日記 という形式で、童話というのは初めて拝見したので、とても新鮮でした。 子どもが読むとしたら、元気な子どもたちが氷の…
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