絶望した彼女
いつからだろうか。
世界がこんなに汚く見えるようになったのは。
親の全てわかっていると本当に思っているところが怖い。学校のクラスメイトの裏の顔が怖い。道行く人のこっちに向けたちょっとした視線が怖い。
この世に私の味方はいるのだろうか。LINEのメッセージの笑の先の顔は本当に笑っているのか。そもそも味方ってなんだろう。こんなにも生き辛く息苦しい世の中は生きるのに適した環境ではない。汚れているのだ。そう思うようになった。
私は外に出るのが怖くなった。
ネットに居場所を見つけた人をTwitterでみかけた。
あぁ、そうか。ネットにそんな使い道があったのか。フォロワーは私の味方と言えるのかもしれない。私の味方になってくれるかもしれない。自分と話の合う人間が集まるのならそれはそれは息のしやすい場になるだろう。
ダメだった。キラキラして見えたあれらは、私のいきたい世界は、才能のある人に集まって、才能がある人が集まって出来たものだった。私にはそれがないらしい。作りたての出来たてほやほやのアカウントで何百もいいねを貰う人達を見ていやになってしまった。そもそも文才もない。流れてくる絵を見ては「これだったら私の方が上手いな。」と思う。そう思う自分に嫌気がさす。嫌な人間なのが浮き彫りになる感覚。承認欲求だけは一丁前にあるから通知音に飛びつく。そういう自分が嫌になった。
私はあの輪には入れない。
1人でいい。私を求めてくれる人。恋愛でも友愛でもいい。ネットに溢れる不特定多数の「君」に向けた言葉は空虚だ。彼らは私は見ていない。あれじゃない、私に向けた言葉が欲しい。
友達がいないわけじゃない。いい子ばかりだ。でも彼女たちが見てる私は仮面を被ってしまった私だ。誰も私を見ていないし、そういう状況を作ったのは私だ。自分で自分の首を絞めている。でも小さい頃からそういう風に生きてきてしまった。優等生。大人びた子。優しい。責任感がある。いつも笑っている。出来る子。リーダー。あなたなら出来るよ。君は前に立つべきだ。本当にいいこだね。君に任せるよ。ああああああああああああああああああああああああああああやめてくれ。やめてくれ。やめてくれ。力の抜き方がわからなくなってしまった。本当の私はどれなのかわからなくなってしまった。私はできる子。少しずつ少しずつ大きくなってくる。私はできる子。あれ。出来ない。間に合わない。あの子は出来てるのに私はまだできていない。ねえお母さん、どうしてもやりたくなくなってしまったの。はあ、やらないで将来どうするの。留年するよ。え、じゃあ学校辞めるの?中卒で将来何するわけ?ちがうよ。私は少し休んだら元のいい子に戻れるから。やめてよ。どうしてひとつ決めたら将来のことも全部決まるような風に言うの。少し休ませて。
私は初めて自分でつけた枷に気がついた。取り方が分からない。
夜になって目を瞑る。明日は学校だ。なかなか寝付けない。目を開けてみる。暗い部屋。明日は嫌なことがあることが決定している。また目を瞑る。黒い瞼の裏をひたすら眺める。考えてしまう。この先ずっとこんな感じで明日に絶望していきていくのだろうかと。涙がでてくる。悲しみだろうか。私はなんで泣いているのだろうか。分からない。わからない。
鳥が鳴いている。この季節ならだいたい5時くらいだ。
日が昇る頃に鳥も動き出すことを知ってしまった。
日の出の時間も知ってしまった。今日も寝られなかった。
結局寝てないせいもあり、学校には行けなかった。
このままだと不登校になってしまう。それはいい子じゃない。いい子は学校へ行き、友達と笑うのだ。くり返し、この子はどうして人の悪口を言って笑っているのだろう。でも、私も笑わないと。今の話なんの意味があるんだろう。でも周りの子も共感してるしそれが普通なのかな。この子達はどうして自分の目で見てもないことをさも自分が被害者だと言わんばかりに話すのだろうか。そんなことを思いながら。理解できないことが理不尽に押し寄せてくるように思えて疲れてしまった。