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ななわ

 自殺志願者、そう思っていなかったかと言われれば嘘になる。というか正直なところ余りの絶望に逆に吹っ切れた系のやつだとばかり思っていたわけで。


「ふんっ」

「GYOOO!!!」


 オークの動きはまあ、目で追えた。追いつけるかと聞かれれば無理だったろうけれども、どう動いてるかを確かに認識する事は出来ていた。


 ドラゴンも同じで、尻尾を思い切り振るった先端こそ目で追う事は難しくとも、視界に入っている中でどういう軌跡で動いたかを認識する事は出来ていた。


 と、言うわけで。初動すら見る事が出来ずに気が付けば消えていて、振り向いた先に剣を振り抜いた姿勢を認識。ヤ◯チャ視点を味わう事になった訳だが。……に、人間って凄いですねぇ。


「……硬いな」


 いや、硬いなじゃ無いんだよなぁ。みろよドラゴンさん何が起きたかわかんないって顔……かお……ごめん爬虫類の表情とか見てもわかんないです。まあなんかそんな感じの雰囲気だよ多分。


 馬鹿みたいな大剣を片手で振り抜いてるのには最早何も言わないが、コレが人間のニュートラルだった場合そら人間が1番繁栄してるに決まってるよねっていうか、なんでまだ人間以外が生き残ってるの? ってなる。


「GYA「うるさい」」


 吠えようとしたドラゴンの顎が打ち上げられる。流石に胴体含めて丸ごと吹き飛んだりはしないが、やはり目に追えない速度で動かれるとコマ送りみたいにしか見えぬ。


 びしゃりと、噴き出た血が地面に広がる。あの体躯に対しては微々たるものだろうが、血が出るなら殺せると言うことで。……正気か? 実は物語の読みすぎで寝落ちした結果とかじゃないだろうな。


 打ち下ろされた巨大な前脚を、平然と大剣で受け止めて。いや地面が陥没する様な衝撃を受けて体幹が微動だにしていないってどういう事かと。加えれば埋まらずに何故か地面が円形にボコォってなってるのはどういう事なんですかね?


 あれか、衝撃の受け流しとかそういうやつか。いきなりバトル路線みたいな事するのびっくりするからやめていただきたいんだが? 絶対余裕で躱せただろ。


「なるほど」


 何を納得したのか小一時間ほど問い詰めたい。脳筋なの? 直接筋肉で確かめないと何かを理解できないタイプの人種なの? 動作で言えばするりと。音で言えばドグシャァって感じで前脚が払われて。鱗とかひしゃげてんじゃんこわっ。


 踏み潰せないなら尻尾で、そう考えたのか何も考えていないのかはともかくとして、動いたと辛うじて認識出来る速度で振われた尻尾は何故か宙を舞っていた。いや、トカゲの尻尾切りってそういう事じゃ無いぞ。


 痛みを感じたのかはともかくとして、命の危機を感じたのだろう。あの剣の届かない所へと逃げようとしたのか、あるいは勢いを付けるためか空へ飛ぼうと拡げた翼が。


「飛ばれると面倒だな」


 付け根からあっさりと両断される。なんだろう、コマンドを入力する度にキャンセルされてるみたいな、カウンターぶち込まれて無効化されてるみたいな…… たかが空飛ぶトカゲ風情が、人間様に勝てるわきゃねぇだろぉぉがぁぁ!!!!! みたいなアトモスフィアを感じる。


 まあたった今飛べなくなったみたいなので、実質火が吹けるだけのトカゲなのかもしれない。まあそこの甲冑にとってはの話だが。私にとって? 目の前で怪獣大決戦されてるパンピー目線ですが何か? 未だに命の危険をひしひしと感じている訳で。


 ……いや、命の危険というか、なんというかこう、なんか凄いの来そうな感じというか、圧倒的なパゥワァを感じるというか……最後っ屁というには余りにも大きくない? な感じの。


 ブレス。餌に群がる羽虫を払う程度の威力でオークが消し炭になるそれを、瀕死故に余力を残さぬ全力で。となればどれ程の威力になるのか。


 閃光を感じた次の瞬間に、暗転。死んだなとか考える暇もなく、あっ、その程度を思い浮かべて。私は意識を失うのだった。

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