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5/12

ごわ

 アレだ。火星に行ってゴキと戦う漫画。エルフ対オークの様子はまあ単純に表現すればそんな感じ。強いて言えばゴキには言葉が通じないっぽいけど、オークには言葉は通じても話が通じないっていう差があるかなって。あと末路。


 決してお茶の間に放送出来ないような凄惨な光景というやつを目撃する事になった原因は簡単で、つまりオークによる奇襲攻撃がエルフの本丸的な世界樹付近にまで浸透してきたというだけ。


「ほれぇ、貴様もさっきのメスみたいに命乞いでもしてみろぉ。死にだぐないですぅ、助けでくだざいぃってなぁ、いっひっひ」

「死ねぇ!」

「ひひっ、この距離で貴様らが勝てる訳ねぇだろぉ!」

「がっ……ごふっ」


 ファンタジー小説とかで、主人公が幼少期に村を盗賊に襲われる描写とかって大体村が燃えてるよね。つまり燃えていない現状はまだ凄惨な過去とかじゃ無いって事なんだろうか? などと現実逃避。


「姫様に手を出させるなぁ!」

「何としても安全な場所へお連れしろぉ!」

「させるかよばぁーか! コッチはソレが狙いだぁ!」

「ほれ、お前さんも嬲って遊んでないでさっさと仕事だ仕事」


 数で言えば2桁程度の、決して大勢とは言えないオークの襲撃はしかし、精鋭と呼べる連中が固まっている様子であって。更に言えば奇襲により距離も場所もアドバンテージを失った状態。


 べしゃりと顔にかかるのは飛び散った血液で、その元となる腕をがりがりと咀嚼するオークは控えめにいってファンタジーというよりホラーとかグロとかそういう世界の住人であった。アレか、ダークファンタジーとか言っとけばOKだろ的なアレか。


 いや、もし私が純粋に前世とかそういったものなくただ知識とかそんな感じのだけがある聡明なだけの生まれたてハイエルフちゃん0歳だったらトラウマとかそんなレベルじゃないぞ。


 腕をもぎもぎ(柔らかい直喩)されたエルフとて、殺されたり殺されずにいたりするのは先程言った漫画との末路の差の話だろう。従順なら孕み袋、反抗すれば食料。おっ蛮族ぅ。


 そんな蛮族にがっちりターゲッティングされてる現状、ひょっとして詰みなのでは? と思うのも無理ないだろう。いや、諦めるには早いとかいう連中がいたらですね、火星に送ってやれば良いんですよ。いや、最近は地球で闘ってたんだっけ?


 逃げ隠れしようにも単純に走って逃げたところで、ね? っていう。隠れるってのももう手遅れな状況なんだよなぁと。戦う? すみませんそのコマンドまだ未実装なんですよ。


 成る程身体は十全に動かせる。前世では身体の固さやら骨格やらで出来なかっただろうY字バランスどころかI字バランスだって出来る柔軟性を遺憾なく発揮する事も出来るし、全力疾走しても転んだりする事は無いと断言出来る。


 しかしまぁ、この少女ボディに体躯に似合わぬ超絶パワーが有るかと言われれば、無いんですよ。強いて言えば前世基準で大人顔負けのパワー位なら出せるだろう。いや、充分強いよ? 平均的な人間よりつよつよなのではと思えるくらいには強いよ?


 で、その程度で重機もかくやと思えるようなパワーと一般人目線でいえばき、消えた! ふっ、後ろだ! が出来るようなスピードを兼ね備えたフィジカルモンスター(比喩にあらず)を相手に戦えるとでも? いやいやいや無理無理無理。


 魔法? 成る程、一理ある。どちらかと言えば魔法適正高めなイメージのあるエルフの、それも樹齢やら溜まった魔力やらで生まれ持つ魔力が決まる中世界中にマナをまき散らす系世界樹君から生まれた私が持つ魔力はといえば。


 比喩表現で無限。この手の表現に良くある上限は無限とも言えるが蛇口が小さいとか、プールからバケツを使って汲み出すとかそういった問題も無く、万全の状態で制御する気も無くフルにブッパすれば森が倍に広がるどころか世界を森で覆い尽くすことすら可能かもしれないほど。


 つまり使い方もイマイチ分からず、制御なんてできるかわからない爆弾を至近距離でボンってさせる事を勇気とか希望とか言うのであれば、成る程解決策はある訳だな! やったぜ。


 純粋にフィジカルの強化に回す? 身体がボンってなる公算が大きいが? なんの指向性もない漏れ出た程度の魔力で既に華奢な童女がバーベル100キロ位持ち上げれる程ってのも凄いけど、それを更に10べぇだぁ! して身体が持ってくれるかはさっぱりわからないっていうか。


 つまり、目の前で此方に手を伸ばすオーク相手になんとかする手段は無くて。終わったなぁなんて締めで高速で回っていた思考を止めて。目を閉じていなかったのは単に惰性の様なものだったが。


 つまり、そんな完全に終わったと思えた瞬間に。


 それを優に超える絶望が。


 天から降ってきて。


 ……ソレからしてみれば、恐らくぷちりと。私からしてみれば、目の前でぐしゃり。助かったと、単純には思えなかった理由。ソレは決してエルフの増援だとか、そういったものではなくて。


「GYAAAA !!!」


 ソレは、つまるところドラゴンとか呼ばれる怪物だった。

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