よんわ
全然大丈夫ではなかったので、現在控えめにいってエルフの森は危機に晒されている状況らしい。いや、仕事量が増えたとか大量の赤ん坊の世話をしなければならないとか、そういった内部的な危機も勿論あったのだが、もっと直接的な危機。
つまりは、オークによる侵略である。エルフの里にオークが攻めてきたってフレーズだけで大分やばそうなのがご理解頂けると思うんですがぁ! エルフがオークに勝てる訳無いだろ! みたいなイメージを持ってる人も多かろう。
実際この世界のオークって奴は単なる豚の獣人とは一線を画す存在である。いや、牙だの鼻だのといったパーツは豚っぽいし、一回り大きな体躯は成る程イメージに反しない立派なオークであった。カラーリングは黒だけど。腹回りとかは肌色で面白いと一瞬思った。
……シャチじゃん? 成る程? 魚じゃないの? 陸上生物じゃないでしょ? 豚とシャチ混ぜて人型にしましたみたいな化け物じゃん? オークの生息地は湖畔? で森に湖が飲み込まれたんだ? ふーん? ……先に仕掛けたのこっちじゃんかよぉぉぉおおお!!!
と、現代社会的な思想の持ち主である私としてはやっちゃったぜと汗ダラダラな状況であったが、どうにも元々オークは狩でエルフを交配先にも食料にもしてたらしい上、近い将来に攻め込まれていたのは確実だったらしい。
つまり森に生息地が飲み込まれたのは計画が前倒しになっただけであり、別に大量の水とか無くても乾いて死ぬとかは無いらしい。水辺が好きなだけで。弱点じゃ無いんですね。控えめに言って化け物じゃん。
というわけで、興味本位でこっそりと前線地区に観察に行った結果として腕の一振りで木が粉砕される光景を見てしまった私の絶望がわかるだろうか? アレはやばい。人間じゃねぇ。いや人間ではないんだけど。
対するエルフ側も、森の中なのにどうなってるのかさっぱりわからない遠距離狙撃で脳天に矢を突き立てたり、魔法と思しきもので土やら木の根やらを操って善戦しているのは人間技じゃ無いなって思った。地面が消えて落ちたオークが串刺しどころか黒髭危機一髪だもんね。
で、幸いにもこそこそしてた所を見つかってR18Gされる事もなく、すごすごとお家まで帰ってきた私を発見したエルフさんの大号泣よ。
「ご無事でなによりですぅうぇっ」
「ゴメンナサイハンセイシテマース」
撒いたのは悪かったと思うけど、もし行きたいって直接言っても確実に止めて、というかここを通りたくば私を殺せ的な覚悟キメてらっしゃったし。まあ悪かったっていうポーズは必要だよね。
いや、確かに下手に身体に当たっても矢を弾いてた連中見た時にあコレは死んだなって思ったけども。別に鱗とか無さそうだったのに弾くとかどうなってるんですかねアレ。
「姫様が動かれなくても、我々が命を賭して穢れた侵入者どもに対処致しますので! どうか! どうか此処でお待ちいただければ!」
「アッハイ」
普通種族としてピンチで、目の前に対処できる手段が転がってたら使うんじゃないかなぁとも思ったけども、よくよく考えたら初手森面積倍化とかいうやらかしをした制御可能かわからない戦略兵器とか使いたくないよね。