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にわ

 一段高くなった台上の椅子にぽつんと座らされ、傍には前世基準でえらい別嬪さんな、耳の長い女性。うやうやしく控えるとかそんな感じの所作で、木の実やら水やらを甲斐甲斐しく補充してくれる。


 なるほど、現状を箇条書きで良いところだけ書き出せばまるで天国みたいに表現出来るんだろう。エルフの里でVIP待遇。最高クラスの飲食物に普通なら見られないエルフの舞踊りに歌唱。ふむ、なるほど。


「「「わいわいがやがや」」」


 どんちゃん騒ぎという単語が圧倒的に似合わない種族による飲めや歌えの大騒ぎは一体なんと表現するべきなのか? 太鼓こそ無いけどハープって実質三味線みたいなものだしやはりどんちゃん騒ぎなのでは? エルフのどんちゃん騒ぎとは。


 明らかに酔っていると思しき連中の踊りやら歌やらを延々と観る事、実に3日。というか3日も飲めや歌えしてるせいで連中ほぼ全員酔っ払っているのでは? こっちはただの綺麗な水、向こうはなんかの果実酒。一体どこで差がついたのでしょうねぇ?


 最初は良かったよ? あ、なんか始まったなって思ったら綺麗なお姉さん方が美声で民族的な歌を歌ってくれて、ああ歓迎してくれてるんだなぁと思った訳ですよ。食べ物だって実に美味しい果実だの世界樹の朝露なる貴重そうなフレーズの水だのね?


 笑顔で手を振るだけで感極まったみたいに大はしゃぎするし、手の一つも叩いてみれば狂喜乱舞といった光景は、よっぽど楽しいだろうなぁ生きるのが、と思わせるものだったし?


 気が付いたのはまあ日が暮れてまた日が登った辺りかなぁ? どことなく赤ら顔でふらつく奴がパラパラと、ひょうたんみたいな物をラッパしてる訳ですよ。ははーん? 酒じゃな? どれ私にも一口頂戴? 姫様にはまだ早いかと。さよけ。


 まあしゃぁない。実質0歳児やろ? しゃぁないわなぁと諦めてな? まあ気を取り直して出し物を観るかなぁと。一瞬だけなんかおかしいなぁと思いながらもそう切り替えてね?


 また日が沈んで、登る訳ですよ。手を変え品を変えで色んな物語を聴かされて、劇を観て、はぁ成る程ファンタジーな世界じゃのぉなんてそれなりに夢中になって。まあ実際ハイにはなってたんですよ。ハイエルフだけに(渾身の激ウマギャグ)。


 3度目の洛陽の頃には向こうは酩酊こっちも眠気のあまりほぼ酩酊状態と変わらんと。寝かせろよ! 寝かせろよっ! 0歳児ぞ? 我0歳児ぞ??? 最早酒を飲みながらワイワイガヤガヤするだけの集団が、時折思い出したみたいにこっちを指して大声。


 うるさいし寝れないし酒は飲めないし。年末年始の親族の集会で大人が酒で騒ぐ中眠れない子供の気持ちを思い出すとは正にコレよと。眠さのあまりに感じるぐるぐるは一体何か、考えもせずに感じるままに。思うままに。


 大きくなりたいと、まぁはい。そんな感じで、ね? 一番の望みは酒飲んで寝る事だった訳で、じゃあ大人になれば酒が飲めるんじゃないかなと。じゃあとかく大きく大きくと、大きくなる事だけをイメージした訳ですね。


 かといって女王様モード的な何かに変身出来るわけでもなく。しかし不発というには妙な手応えと疲労感。やったぜ、成し遂げたぜ的な達成感と地響きを感じながら視界が暗転。自分が何をどうしたかもさっぱりわからないままスヤァ。






 目を覚まして、葉っぱの山の上でもう一眠りしたい欲求を感じながら現状を確認する。つまり、やはりと言うべきかコレは夢では無く、ファンタジーな世界でハイエルフのお姫様になった、と。


「お目覚めになりましたか! 誕生祭の盛り上がりについ姫の様子に気が付かず……そのぉ」

「三日三晩皆良く楽しんだ様ですね」


 無論嫌味である。よくよく思い返してみればお付きのエルフも何度か交代してたし、最後の方は酔ってたし、なんなら騒いでる連中も寝てたり起きたりしてた様な気もするし。3徹してたの私くらいじゃないんですかぁ? 的な。


「はい! 何と言っても姫様の誕生祭ですから可能な限り盛大にと!」


 純真無垢かよ。


「姫様にもお喜びいただけたようだと皆申しておりますが、そのぉ……」


 なんで喜んでると思うのか、コレがわからな


「さ、流石に森の大きさが倍に広げて頂けるとは思ってもおらず……新たに生まれたエルフ達も姫の様な聡明さを持ち合わせておらず……」


 あ、ふーん? 勢力圏が倍に広がった的な? ほーん? ……控えめに言ってただのやらかしなのでは? あれ、私やっちゃいましたぁ? とか言ったらキレられそうなレベルの。


「姫もご存知でしょうが、生まれたエルフの魔力や知識は主に樹齢に影響されますので。古くも魔力が溜まっていなかった木が姫の魔法により影響されて生まれたエルフ達はともかく、新木とも言うべき新たな木々から生まれたエルフ達は魔力こそ通常より大きいものの赤児と呼べる程でして……」


 存じ上げて無いです。


「流石は世界最高の神木たる世界樹、天聖樹より生まれし至高のハイエルフの君と皆感涙に咽ぶ程ですが、御身の世話に多くの手を割くことがですね、そのぉ……」


 嫌味とか飛ばしてる場合じゃない件について。天聖樹だけに転生者ってかはははやかましいわっ! 要するに労働者人口はほぼ変わらないまま労働量が倍、挙句大量の赤ん坊の世話を強制させられていると。感涙じゃなくて純粋に泣いているのでは?


「出来ればで結構ですので、どうか、暫くはごゆっくりとお寛ぎいただければ幸いでして……」

「アッハイ、オトナシクネテマス」

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