じゅういちわ
「ばっ…! 馬鹿なっ…! 有り得るのかっ…! この様なことがっ…!」
ぐにゃ〜、というよりは駆け巡る脳内物質っ的な。綺麗な箱だと思って拾ったら中に宝石が詰まってた時みたいな、そんな方向性で現実を疑う奴隷商人。
「読み書きっ…! 計算っ…! それだけならばわかるっ…! 見聞きした知識っ…! そういう事もっ…! がっ…駄目っ…! 高度な知識っ…! 立ち振る舞いっ…! 言葉遣いっ…! 説明がつかぬっ…!」
「それは外見の年相応に振る舞う方がよろしいという事でしょうか?」
「逆っ…! 貴様はそのままで良いっ…! いや、待てっ…! 出来るのかっ…! 演技っ…! 主人の望むままに振る舞うっ…! まさかっ…!」
「そう望まれるのでしたら」
当然ですプロですからと言える程に経験値を積んでいるわけではないが、想像上から上手いこと落とし込んでそれっぽく見せるくらいなら今でも出来る。例えば軽く頭を下げながら裾を軽く摘んで持ち上げ、片足を後ろで爪先立ち。
……これは奴隷か? いや、まあ見様見真似どころかイメージでしかない動作だし、専門家に教育を受けたわけでもないからなぁ。奴隷だってこの位は普通かもしれない。
「不要っ…! 教育などっ…! 圧倒的付加価値っ…! 値が付かぬっ…!」
……ん?
「これは商機っ…! こうしてはおれぬっ…! 厳選っ…! ワシの持てるコネクションっ…!」
そう言ってドタドタと駆け出していく奴隷商人。え、待って職業訓練は? 教育が不要ってどういう事……そう思った所ではたと気がつく。
教養が付加価値、初手顔を見た時点で奇跡だの高額商品だのと言っていた、教育の要らない奴隷のお仕事。コレらから導き出される答え……
つまり、性奴隷か!!!
いや、だって労働奴隷とかならもっと体力のある男とかの方が高額になるだろうし? 奴隷商人を見ていた感じではあの甲冑が例外とわかる程度には人間の体力はそこまで前世と違わない様で、そう考えれば私とて高額な労働奴隷になり得るが……
それをアピールするチャンスは無かったので、恐らく奴隷商人の中では私はちょっと利発な子供エルフとなっているだろう。となればやはり、そういう希少性とか需要と供給で高額になるという事に違いはあるまい。
……ふむ、これは、何というか。困ったなぁ……仮にも元男である訳で……うむ……
女性としての経験なんぞ一切無いし全て聞いただけの知識しかないが、果たしてそれでプロとしての仕事が果たせるのだろうか。
葛藤? いや、職業に貴賎はないってよく言うし。前世でもそういうお仕事をしていた方々はいらっしゃる訳で、むしろプロ意識を持って働く事こそが重要だろう。
そうとなれば特訓をせねばなるまい。勿論無断で商品価値を落とさぬ様細心の注意を払って!




