じゅうわ
がらがらと、1時間も揺られていただろうか。激しい振動こそあるものの、半ば夢うつつの様な状態だったので正確なところはわからない。
一度止まったような、また動き出したような、そんなふうに感じていたところでひょいと担がれる。外の様子を伺うにどうやら丁度日が沈むところだろうか。
そこはかとなく大きめの屋敷の様な建物。鉄格子のついた牢屋みたいな部屋に放り込まれるものと思っていたら、窓こそ格子がついた小さなものが手の届かない高さにあるものの、普通な感じの小部屋に放り込まれる。
「意識がある様だから教えておくがっ…! 貴様を拾ってやったのはワシっ…! 恩っ…! 故にワシの言うことは絶対っ…!」
ザワザワ聞こえてきそう。とはいえまあ詰みじみた行き倒れが解決したのは確か。その先に待ってるのが奴隷っていうのはちょっとどうかと思うが。
「無論貴様を買う事になる新しいご主人様にもっ…! 服従っ…! さもなくば待つのは死っ…!」
……いや、待てよ? なんとなく奴隷って言葉でイメージするのはマイナスな感じばかりな気がするけど、考えてみれば前世の時点で社会人なんて大概会社やら組織の奴隷だったのでは……? つまりむしろ職があるだけマシ……?
そうか、職業選択の自由なんてそもそも新しい概念だし、奴隷だって立派な職業に違いないな! そう考えると沸々と湧き上がってくるのはやる気。先日までの無職の穀潰しとは違う、プロ足らんとする意識。
そう考えれば目の前の御人は雇い先との仲介をしてくれる職安、ハロワの化身という事か。いや、衣食住完備で調教という名の職業訓練をしてくれるのはむしろ専門職学校と言えるかもしれない。
「理解したかっ…! 自らの境遇っ…! まずは食事っ…! 欲しければ言えっ…! わかりましたご主人様っ…!」
「はいわかりましたご主人様!」
「ぬっ…! 物分かりの良いっ…! 褒美っ…! 待っておれっ…!」
言われた通りに待っていると、出てきたのは野菜のスープと思しき、というか葉っぱの煮込み……? いや、穀物の類も入ってるのか? 粥? まあ正直食べられれば何でも。
「さぁ食えっ…! エルフにも食えるよう肉は無しっ…! 完璧な商品管理っ…!」
「ありがとうございますご主人様」
え、エルフって肉食べれないの? いやまあ森で食べてたのは木の実とか果物オンリーだったけど。なんだろう、アレルギー的な何かなんだろうか? 取り敢えず木製のスプーンで粥を食べる事にする。
「ぬっ…! 返事っ…! 食器の持ち方っ…! 見える教養っ…! 大当たりっ…! ぐふふっ…!」
ぶつぶつと言いながら部屋を出て行く奴隷商人。どうも考えてる事が漏れるのは素なのかもしれないと、そう思いながら粥を食べるのであった。空腹にあったかい粥は沁みた。




